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連続時間マルコフ連鎖とPMHF式の導出 |
米国ロチェスター大学の資料(そのキャッシュ)によれば、 ランダムプロセス$\eta_t$において、ステート空間を$i, j=0,1,2,...,\in\mathcal{E}$について、以下の式を満足する場合に、ランダムプロセス$\eta_t$は連続時間マルコフ連鎖(CTMC)となります。 $$ \Pr\{\eta_{(t+s)}\in j\ |\ \eta_t\in i, \eta_u\in x_u, u\lt t\}=\Pr\{\eta_{(t+s)}\in j\ |\ \eta_t\in i\} $$ 遷移する確率が、過去の時刻$u$での状態に依存せず、現在時刻$t$での状態にのみ依存することを表します。
CTMCである$\eta_t$において、ステートiからjへの瞬間遷移確率関数(Instantanous Transition Probability Function)$P_{ij}$の式は以下のようになります。ただし、元の式を「信頼性関係式の定義式の表現」で導入した記法に変更しています。 $$ P_{ij}(t):=\Pr\{\eta_{(t+dt)}\in\mathcal{j}\ |\ \eta_{t}\in\mathcal{i}\}=q_{ij}dt+o(dt)\tag{101.1} $$ $q_{ij}$は遷移率(Transition Rate)です。ランダムプロセス$\eta_t$において、確率変数$X$を無故障稼働時間とします。$\mathcal{M}$を稼働状態のサブセットとし、$\mathcal{P}$を不稼働状態のサブセットとすれば、$X=\inf\{t:\eta_{t}\in\mathcal{P}\}$と示すことができます。
稼働状態$\mathcal{M}$から不稼働状態$\mathcal{P}$への遷移を考えると、(101.1)は、 $$ P_\mathcal{MP}(t)=\Pr\{\eta_{(t+dt)}\in\mathcal{P}\ |\ \eta_{t}\in\mathcal{M}\}=q_\mathcal{MP}dt+o(dt)\tag{101.2} $$ となりますが、これと前記事の微小ダウン確率形式と比較し、 $$ \Pr\{\eta_{(t+dt)}\in\mathcal{P}\ |\ \eta_{t}\in\mathcal{M}\}=q_\mathcal{MP}dt+o(dt)=\varphi(t)dt\tag{101.3} $$ すなわち、単位時間あたりの稼働状態$\mathcal{M}$から不稼働状態$\mathcal{P}$への遷移率$q_\mathcal{MP}$は、$o(dt)\approx 0$の場合のダウン率$\varphi(t)$にほかなりません。
ここで、条件付き確率の式から(101.3)の両辺に状態確率$\Pr\{\eta_{t}\in\mathcal{M}\}$をかけるとPUDが求まります。PUDについて、$0$から$T_\text{lifetime}$まで$t$で積分し(101.2)を用いれば、 $$ \int_0^{T_\text{lifetime}}P_\mathcal{MP}(t)\Pr\{\eta_{t}\in\mathcal{M}\} =\int_0^{T_\text{lifetime}}\Pr\{\eta_{(t+dt)}\in\mathcal{P}\ |\ \eta_{t}\in\mathcal{M}\}\Pr\{\eta_{t}\in\mathcal{M}\}\\ =\int_0^{T_\text{lifetime}}\Pr\lbrace\eta_{(t+dt)}\in\mathcal{P}\cap \eta_{t}\in\mathcal{M}\rbrace=\int_0^{T_\text{lifetime}}q(t)dt =Q({T_\text{lifetime}})\tag{101.4} $$ 前記事の平均PUD式(66.13)に基づき(101.4)の両辺を$T_\text{lifetime}$で割り、SPFになる平均PUDを$\overline{q_{\mathrm{SPF}}}$で表せば、 $$ \overline{q_{\mathrm{SPF}}}=\frac{1}{T_\text{lifetime}}Q({T_\text{lifetime}})=\frac{1}{T_\text{lifetime}}\int_0^{T_\text{lifetime}}\Pr\{\eta_{(t+dt)}\in\mathcal{P}\ |\ \eta_{t}\in\mathcal{M}\}\Pr\{\eta_{t}\in\mathcal{M}\}\\ =\frac{1}{T_\text{lifetime}}\int_0^{T_\text{lifetime}}\Pr\{\eta_{(t+dt)}\in\mathcal{P}\cap\eta_{t}\in\mathcal{M}\} \tag{101.5} $$ これにより、CTMCを用いた平均PUDを求める基本式が求まりました。PMHFを求めるには、(101.5)式を駆使していきます。
RAMS 2020においてPMHF式の論文発表が終了したため、本記事を開示します。