Posts Issued in January, 2023

posted by sakurai on January 26, 2023 #583

任意の集合$A$及び$B$について、以下の2つの等式が成立する。 $$ \overline{(A\cap B)}=\overline{A}\cup\overline{B}, 及び\overline{(A\cup B)}=\overline{A}\cap\overline{B} $$

証明: 記号$\lor$を論理和、$\land$を論理積とする。全体集合を$\Omega$として、$\forall x$に対して $$ x\in\overline{(A\cap B)}\Rightarrow x\in\Omega\setminus (A\cap B)\\ \Rightarrow x\in\{x\in\Omega\land x\notin (A\cap B)\}\\ \Rightarrow x\in\{(x\in\Omega\land x\notin A)\lor(x\in\Omega\land x\notin B)\}\\ \Rightarrow x\in(\{x\in\Omega\land x\notin A\}\cup\{x\in\Omega\land x\notin B)\})\\ \Rightarrow x\in\overline{A}\cup\overline{B} $$ よって、$\overline{(A\cap B)}\subset\overline{A}\cup\overline{B}$が成立する。同様に、$\forall x$に対して $$ x\in(\overline{A}\cup\overline{B}) \Rightarrow x\in(\{x\in\Omega\land x\notin A\}\cup\{x\in\Omega\land x\notin B)\})\\ \Rightarrow x\in\{(x\in\Omega\land x\notin A)\lor(x\in\Omega\land x\notin B)\}\\ \Rightarrow x\in\{x\in\Omega\land x\notin (A\cap B)\}\\ \Rightarrow x\in\Omega\setminus (A\cap B)\Rightarrow x\in\overline{(A\cap B)} $$ より、$\overline{A}\cup\overline{B}\Rightarrow\overline{(A\cap B)}$が成立する。以上より $$ \overline{(A\cap B)}=\overline{A}\cup\overline{B} $$


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RAMS 2023での論文発表

posted by sakurai on January 24, 2023 #582

RAMS 2023が予定どおり開催中ですが、その初日に当社代表が「Stochastic Constituents for the Probabilistic Metric of Random Hardware Failures (PMHF) in ISO 26262」というタイトルで論文発表を行いました。論文はプレスリリースにもあるように、RAMS 2020で発表した、以下の新PMHF式の傍証となる証明を論文にしたものです。

$$ M_\text{PMHF,IFR}\approx(1-K_\text{IF,RF})\lambda_\text{IF} +K_\text{IF,RF}\lambda_\text{IF}\lambda_\text{SM}\left[(1-K_\text{MPF})T_\text{lifetime}+K_\text{MPF}T_\text{service}\right],\\ \text{where }K_\text{MPF}:=K_\text{IF,MPF}+K_\text{SM,MPF}-K_\text{IF,MPF}K_\text{SM,MPF} $$

これは、ブログでは#484#491でご紹介した「確率コントリビューション」記事に関連するものです。確率コントリビューションをStochastic Constituentsと英訳しました。

発表は図582.2のように"Reliablity Modeling - 1"の2人目で、米国に入国できないためZoomを用いて行いました。時差のため日本時間の夜中の0:45からの開始でした。アプリの時間は日本時間となっています。

図%%.1
図582.1 セッション

以下のように質問を2件受けました。

1Q. 発表ではサブシステムはIFとSMの2つから構成されるサブシステムに対するものだが、他のアーキテクチャでは成立するのか?

1A. サブシステムの安全解析を行う際には、IFに対してそのSMが見えるまで中に入り込みます。従って、(SMが無い場合もあるかもしれませんが、その場合はDC=0とする)全ての場合でIFとSMから構成されると考えます。

2Q. 他の論文ではPMHFの算出にFault Treeを用いているものがある。この論文ではPMHFの算出はマルコフチェインだが、どのような違いがあるのか?

2A. マルコフチェインとフォールトツリーは競合するものではありません。実際に我々の2021年のRAMS論文ではマルコフチェインとフォールトツリーを組み合わせてPMHFを算出しています。ご興味があればRAMS 2021論文をご参照ください。


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posted by sakurai on January 20, 2023 #581

来週RAMS 2023が開催され、弊社からはReliablity Modeling - 1で発表を行います。今後開催予定の場所が判明したので、過去と合わせて掲載します。

表581.1 SMと時間制約表
Date Venue
Jan 28~31, 2019 Walt Disney Contemporary Resort, Orlando, Florida
Jan. 27~30, 2020 Renaissance Palm Springs Hotel, Palm Springs, California
May 24~27, 2021 Rosen Hotels & Resorts, Orlando, Florida
Jan. 24~27, 2022 Hilton El Conquistador Resort, Tucson, Arizona
Jan. 23~26, 2023 The Florida Hotel and Conference Center, Orlando, Florida
Jan. 22~25, 2024(予定) The Clyde Hotel, Albuquerque, New Mexico
Jan. 27~30, 2025(予定) Hilton Sandestin Beach Golf Resort & Spa, Miramar Beach, Florida
Jan. 26~29, 2026(予定) Planet Hollywood, Las Vegas, Nevada
Jan. 25~28, 2027(予定) Hilton Clearwater Beach Resort & Spa, St. Petersburg, Florida
Jan. 24~27, 2028(予定) The Rolyal Sonesta Houston Galleria, Houston, Texas


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背理法の証明例 (2)

posted by sakurai on January 18, 2023 #580

再び有名な証明問題です。「実数全体$\mathbb{R}$は非可算無限集合である」

  1. 区間$[0, 1)$の実数を加算有限集合と仮定する。
  2. 無限桁の2進数によりそれらの実数を表す。
  3. それらの実数を任意の順で並べる。
  4. n番目の数値の小数点以下の桁を0なら1、1なら0に変えていき、変えた数値を各桁に持つ新しい実数を1つ生成する。
  5. その新しい実数は表のいずれの実数ともn桁目が異なり、それゆえこの表には含まれないため、1.の仮定に反する。
  6. よって$[0, 1)$の実数は非可算無限集合である。

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背理法の証明例

posted by sakurai on January 10, 2023 #579

有名な「素数は無限個存在する」という定理の証明を背理法で行います。

  1. 「素数が有限個である」と仮定する。
  2. $P$を、有限個の中で最大の素数$\dagger 1$とする。
  3. $Q=P\ !+1$という数$Q$を考える。
  4. $Q$が素数である場合は、明らかに$Q\gt P$であり、2.に反するので、$Q$は合成数$\dagger 2$。
  5. $Q$が合成数である場合は、定義より$Q$を割り切る素数$R$が存在し、また$Q=P\ !+1$であることから、$Q$は$P$以下の全ての素数で割り切れないため、$R\gt P$であることになり、同じく2.に反す。
  6. 2.を仮定すると、必ず矛盾が起きるため2.は成立しない。よって、素数は無限個数あることが証明された。

$\dagger 1$: 素数の定義:自然数$X$が$X$自身と$1$で割り切れ(自明)、かつそれら以外の全ての自然数で割り切れない$X$を素数と呼ぶ。
$\dagger 2$: 合成数の定義:自然数$Y$が$Y$自身と$1$で割り切れ(自明)、かつそれら以外の$Y$を割り切る素数が存在するとき、$Y$を合成数と呼ぶ。


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安全機構の効果 (2)

posted by sakurai on January 9, 2023 #578

前稿の議論を含めた、SMとその守るべき制約を表578.1にまとめます。

表578.1 SMと時間制約表
SM名称 時間制約 説明 制約違反時
1st SM FTTI 1st SM (IFがVSGとなるのを抑止するためのSM)がIFのフォールトを検出し、アイテムを安全状態に遷移させるまでの許容(最大)時間間隔。
$\Rightarrow$大きいほうが設計が容易
1st SMが制約を守れない場合は1st SMとは主張できなくなり、そのDCは0となる。従って主機能のフォールトが起きた場合、1st SMが有ったとしてもVSGが発生する。
EOTTI 1st SMがFTTIを超えて安全を担保している場合、SMの構造によってはその担保時間に限界があるものがあるが、その制約(最小)時間間隔。
$\Rightarrow$小さいほうが設計が容易
FTTIは守っているため1st SMとしては働きVSGは回避されるが、動作の継続が不可能になり車両の有用性が失われる。
2nd SM MPFDI MPFを検出するための許容(最大)時間間隔。
$\Rightarrow$大きいほうが設計が容易
2nd SMが制約を守れない場合は2nd SMとは主張できなくなり、そのDCは0となる。従って、MPFは全てLFとなる。


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