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PMHFの誤解 (2) |
TIのプレゼン資料においてPMHFの誤解の続きです。
本資料では他の例でも全て計算が誤っていました。一貫してPMHF=RF+MPF-Lとしています。
図521.1左の計算は $$ \lambda_\text{RF}+\lambda_\text{MPF,lat}=11+10=21 [FIT] $$ 図521.1右の計算は $$ \lambda_\text{RF}+\lambda_\text{MPF,lat}=1.5+20=21.5 [FIT] $$ のようにそのまま加算を行っていますが、これは誤りです。
これは前述のようにPMHF式の誤り論文$\dagger$(図326.1)から来たものと推測します。このように一か所の"欠陥"が複数に伝播し"カスケード故障"を起こしているところを見ると、システマティックフォールトに対して"安全機構"が働いていないようです。言うまでも無く"安全機構"はこの場合、自分の頭で考えることであり、論文を鵜呑みにすることではありません。
これが誤りである理由を定性的に説明します。
- 故障率に車両寿命をかけると、車両寿命間に故障する故障確率になります。
- 故障確率から考えると、SPF及びRFは一点の部品欠陥で車両の故障につながるため、この項はOKです。
- ところが、MPF-Lはレイテントフォールトなので、一点のフォールトが起きても直ちに車両の故障とはなりません。つまりMPF-Lを過大に評価していることになります。
- 本来はレイテントフォールトは別のフォールトとの組み合わせにより車両故障、つまり安全目標違反となるため、確率としてはもう一つ別の故障率が必要となります。
- 本来はこの項は桁違いに小さくなるはずです。
過去記事でも同じことを指摘しています。
LFは単一ではVSGを引き起こさないため、アイテムのVSG確率としては、他のフォールトとのDPFとして計算しなければなりません
以上から、単一点(シングルポイント)及び残余(レシデュアル)の故障率と、レイテントフォールトの故障率を単純に加えることは誤りです。