Posts Tagged with "ISO 26262"

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posted by sakurai on June 26, 2019 #118

SPFMの分割

Part5 8.4.7にSPFMの分割例が新設されました。例えばアイテムがレメントA, B, Cから構成され、 $$ \lambda_{\mathrm{total}}=\lambda_{\mathrm{A}}+\lambda_{\mathrm{B}}+\lambda_{\mathrm{C}} $$ であり、それぞれのエレメントA, B, Cに対するSPFMの目標値を、$M_{\mathrm{SPFM,A}}$, $M_{\mathrm{SPFM,B}}$, $M_{\mathrm{SPFM,C}}$とするとき、 $$ \left[\frac{\lambda_{\mathrm{A}}}{\lambda_{\mathrm{total}}}M_{\mathrm{SPFM,A}}+ \frac{\lambda_{\mathrm{B}}}{\lambda_{\mathrm{total}}}M_{\mathrm{SPFM,B}}+ \frac{\lambda_{\mathrm{C}}}{\lambda_{\mathrm{total}}}M_{\mathrm{SPFM,C}}\right]\ge M_{\mathrm{SPFM,Itemtarget}}\tag{118.1} $$ となるような任意の$M_{\mathrm{SPFM,A}}$, $M_{\mathrm{SPFM,B}}$, $M_{\mathrm{SPFM,C}}$の目標値を許容する、とあります。これは、例えばASIL-Dであれば、$M_{\mathrm{SPFM,Itemtarget}}\ge99\%$であるとき、A, B, Cそれぞれのエレメントが99%以上無い場合でも、故障率の比(故障率密度が一定であれば面積比)により重みづけされたSPFMを計算し、結果が目標を満足していれば良いという意味です。

具体例で見てみます。故障率比率がそれぞれ $$ \frac{\lambda_{\mathrm{A}}}{\lambda_{\mathrm{total}}}=98\%, \frac{\lambda_{\mathrm{B}}}{\lambda_{\mathrm{total}}}=1\%, \frac{\lambda_{\mathrm{C}}}{\lambda_{\mathrm{total}}}=1\% $$ であるとき、(118.1)を満たす$M_{\mathrm{SPFM,A}}$, $M_{\mathrm{SPFM,B}}$, $M_{\mathrm{SPFM,C}}$の組み合わせはいろいろ考えられますが、例えば故障率比率の大きなエレメントAのSPFMが比較的大きい場合を考え、例えば以下のようであるとすれば、 $$ M_{\mathrm{SPFM,A}}=99.9\%, M_{\mathrm{SPFM,B}}=60.0\%, M_{\mathrm{SPFM,C}}=60.0\% $$ である場合、(118.1)左辺は、 $$ (118.1)=\img[-1.35em]{/images/withinseminar.png} $$ となり、アイテムターゲットのSPFMである99%以上を満足します。

別の値の例としては、 $$ M_{\mathrm{SPFM,A}}=99.99\%, M_{\mathrm{SPFM,B}}=51.0\%, M_{\mathrm{SPFM,C}}=51.0\% $$ である場合、(118.1)左辺は、 $$ (118.1)=\img[-1.35em]{/images/withinseminar.png} $$ となり、アイテムターゲットのSPFMである99%以上を満足します。

このような組み合わせは無数にありますが、上記のように$M_{\mathrm{SPFM,B}}=M_{\mathrm{SPFM,C}}$でありこれを横軸として、縦軸を$M_{\mathrm{SPFM,A}}$とすれば、解の領域は図118.1のグリーンの領域となります。

図%%.1
図118.1 分割された$M_{SPFM}$の解空間

同様にPart5 8.4.8に、LFMについても分割例が記述されました。それぞれのエレメントA, B, Cに対するLFMの目標値を、$M_{\mathrm{LFM,A}}$, $M_{\mathrm{LFM,B}}$, $M_{\mathrm{LFM,C}}$とするとき、 $$ \left[\frac{\lambda_{\mathrm{A}}}{\lambda_{\mathrm{total}}}M_{\mathrm{LFM,A}}+ \frac{\lambda_{\mathrm{B}}}{\lambda_{\mathrm{total}}}M_{\mathrm{LFM,B}}+ \frac{\lambda_{\mathrm{C}}}{\lambda_{\mathrm{total}}}M_{\mathrm{LFM,C}}\right]\ge M_{\mathrm{LFM,Itemtarget}}\tag{118.2} $$ となるような任意の$M_{\mathrm{LFM,A}}$, $M_{\mathrm{LFM,B}}$, $M_{\mathrm{LFM,C}}$の目標値を許容する、とあります。

$M_\mathrm{LFM}$の解空間は$M_\mathrm{SPFM}$と同様に導出することができます。


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posted by sakurai on June 25, 2019 #117

意図

Annex Hが新設された意図は、Part5 8.4.8でLFMの目標値の設定方法を3種あげていますが、その実例を示すものです。例えば8.4.8のa)は、「8.4.6に記述される"レイテントフォールトメトリック”の目標値を満足する」とありますが、Annex Hでは例を通じてその計算を行っています。

以下に1st SMの故障抑止能力(DC)が故障検出に基づくものと、故障抑止に基づくものの2パターンの例を挙げています。

第1例

故障検出に基づくフォールトは、検出されるからVSG抑止されるのであってその逆ではありません。ということは、抑止された分の検出割合は常に100%です。これは2nd SMとしての検出率が100%であることを意味し、図117.2でも示すように、グリーンで示した主機能のレイテントフォールトはゼロであることを意味します。 一方、SM(1st SM)のフォールトはSG侵害しないため、2nd SMの検出率により、検出から漏れた部分がレイテントフォールトとなります。

図%%.1
図117.1 フォールト検出に基づくSM

図%%.2
図117.2 フォールト検出に基づくSMを含むFMEDA

第2例

一方、SG侵害抑止に基づき、検出を行わない1st SMも存在し、その例を示しています。この場合、故障抑止はするものの、故障検出はゼロとなり、抑止されたものが全量レイテントフォールトとなります。 同じく、SM(1st SM)のフォールトはSG侵害しないため、2nd SMの検出率により、検出から漏れた部分がレイテントフォールトとなります。

図%%.3
図117.3 SG侵害抑止に基づくSM

図%%.4
図117.4 SG侵害抑止に基づくSMを含むFMEDA

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PMHFのバジェッティング

posted by sakurai on June 22, 2019 #116

Annex G

これも2nd Editionで新設されたAnnexですが、PMHFのバジェッティングについて記述されています。といっても従来からバジェッティングは現場では実施されていました。それと規格の意図するところは若干異なるようです。

従来のバジェッティング

まず1st Editionで実施されていたバジェッティングは、Part5 9.4.2.2 表6で規定される、PMHF目標値を分割するものでした。例えば、あるアイテムがASIL-Dの要求に基づき、アイテムにASIL-Dを割り当てます。ここで注意すべきは、エレメントには当初はASILは存在せず、あくまで要求の属性としてのASILが存在することです。エレメントには様々な安全目標によって、様々な要求が割り当てられますが、その中の最高レベルのASILにより、エレメントのASILが規定されます。

例えば、アイテムが3つのエレメントに分割され、それぞれ別のサプライヤによって開発される場合には、それぞれのサプライヤに対して、PMHF目標値を設定する必要があります。これを従来はバジェッティングと呼んでいました。アイテムで10FITの予算(バジェット)があり、それを配分するイメージとなります。例えば3つであれば、3.3FITずつ割り当てることができます。

図%%.1
図116.1 1st EditionのPMHFバジェッティング

2nd Editionのバジェッティング

規格でバジェットの単語が出てくるのはPart5 9.4.2.3の中です。9.4.2.3は上記の予算配分(分割)と言うよりも、多重割り当てと言ったほうがふさわしい節です。その理由は9.4.2.3は、上記のようにASIL-Dの目標をエレメントの数で分割するのではなく、比較的大きなシステム、例えばADASのように、物標認識システム、ブレーキ制御システム、エンジン制御システム等のように、それだけで従来はアイテムレベルであったシステムを複数組み合わせた場合のPMHFの考え方を表すものだからです。そしてその場合は、それぞれのシステムにASILを割り当て、10個までは組み合わせて良いと規定しています。例えばASIL-Dのシステムを10個までならぎりぎり目標が10倍となり10倍を超えませんが、10倍を超える目標値を設定することは許されていません。

図%%.2
図116.2 2nd EditionのPMHFバジェッティング

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posted by sakurai on June 20, 2019 #115

2nd Edition Annex F.3,4,5

次にF.3を見てみます。F.3は「評価対象のフォールト又は故障モードの選択基準の決定」となっています。本来はFMEDAのフォールトイベントの評価として全ての故障モードを評価すべきでしょうが、それだと数千件も評価しなければならないため、本節で故障モードの絞り込みを行うのだと思われます。

ちなみに、PMHFへの寄与率を厳密に考えると、PMHFのSPF部分とDPF部分がありますが、DPF部分は故障モードの組み合わせであるため、以下は全てPMHFの値(SPF+DPF)への、故障モードのSPF部分の寄与率と言う意味となります。

  1. SPFまたはRFに関して、DCが90%以下の全てのフォールト又は故障モード
  2. PMHFの寄与率が2%以上の全てのフォールト又は故障モード
  3. PMHFの寄与率が上位20位以内の全てのフォールト又は故障モード

この選択基準で絞り込むと、本例ではたまたま以下の値になります。

  1. 2件の故障モード⇒PMHFへの寄与率は95.68%
  2. 2件の故障モード(上記と同じ)⇒PMHFへの寄与率は95.68%
  3. 20件の故障モード⇒PMHFへの寄与率は99.89%

F.5では、これらは全てPMHFへの寄与率が95%以上であるから問題無しとしています。逆にそうであるなら、直接的に

  1. PMHFへの寄与率が95%を超えるまでの上位からの全てのフォールト又は故障モード

とするほうが自然ではないでしょうか。ちなみにこのような絞り込み条件を設定すると、2件の故障モード⇒PMHFへの寄与率は95.68%となり、上記1.及び2.と同様2件の故障モードを分析すれば良いことになります。以下に故障モードに関してPMHFへの寄与率が大きい順にリストします。

コンポーネント名 故障率
[FIT]
SR? 故障モード 分布[%] SM DC[%] λRF PMHFへの
寄与率[%]
PMHFへの
寄与率累積[%]
1 μC 100 Yes all 50 SM4 90 5.000 91.13 91.13
2 T61 5 Yes short 50 SM2 90 0.250 4.56 95.68

従って、分析方法をまとめれば、「 PMHFへの寄与率が95%を超えるまでの上位からの全てのフォールト又は故障モード」について絞り込みを実施し、それぞれに故障モードについて、安全方策がとられているかどうかを確認することになります。このときなぜ95%以上としたのかを問われたら、2nd Edition規格Annex F.3を参照したとなります。


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posted by sakurai on June 19, 2019 #114

2nd Edition Part 5 Annex F

2nd Editionで新設されたPart 5 Annex F のFMEDAシートを図114.1に示します。

図%%.1
図114.1 2nd Edition Part 5 Annex F FMEDA

前稿と比較して、右端の欄が2つ増えており、重要なのはDPF_detです。Annex Fの「F.2 PMHF評価を提供する安全分析」において、 $$ PMHF_{\mathrm{est}}=\lambda_{\mathrm{SPF}}+\lambda_{\mathrm{RF}}+\color{red}{\lambda_{\mathrm{DPF,det}}}\color{green}{\lambda_{\mathrm{DPF,lat}}}T_{\mathrm{lifetime}}\tag{114.1} $$ でPMHFを近似していると書かれています。$\lambda_{\mathrm{SPF}}$、$\lambda_{\mathrm{RF}}$はSPFMを求めるため、$\color{green}{\lambda_{\mathrm{DPF,lat}}}$もLFMを求めるために既に表にあるため、$\color{red}{\lambda_{\mathrm{DPF,det}}}$が新たに表に必要となります。

ただし、弊社では(114.1)には異論があります。正しいPMHF式は、1st Editionの3番目の一般式を示すと、 $$ M_{\mathrm{PMHF}}=\lambda_{\mathrm{RF}}+\lambda_{\mathrm{IF,DPF}}\lambda_{\mathrm{SM,lat}}T_{\mathrm{lifetime}}\tag{114.2} $$ です。これは、1st Editionで述べられているとおり故障順序によらない式であり、$\lambda_{\mathrm{SM,lat}}T_{\mathrm{lifetime}}\gg\lambda_{\mathrm{SM,det}}T_{\mathrm{service}}$かつ、IFがアンリペアラブル、SMがリペアラブルの場合に成り立つことは検証済みです。

(114.2)と(114.1)を比較すると、DPFの項の2つの故障率が異なっています。(114.1)では主機能と安全機構の値を合わせた故障率$\color{red}{\lambda_{\mathrm{DPF,det}}}$及び$\color{green}{\lambda_{\mathrm{DPF,lat}}}$を使用しています。双方をIFとSMの和に分解すれば、 $$ \color{red}{\lambda_{\mathrm{DPF,det}}} =\lambda_{\mathrm{IF,DPF,det}}+\lambda_{\mathrm{SM,DPF,det}}=K_{\mathrm{IF,RF}}\lambda_{\mathrm{IF}}K_{\mathrm{IF,MPF}}+\lambda_{\mathrm{SM}}K_{\mathrm{SM,MPF}} \tag{114.3} $$ であり、たまたま$K_{\mathrm{SM,MPF}}=0$、$K_{\mathrm{IF,MPF}}=1$であることから、(114.3)は $$ \color{red}{\lambda_{\mathrm{DPF,det}}}=K_{\mathrm{IF,RF}}\lambda_{\mathrm{IF}}=\lambda_{\mathrm{IF,DPF}}\tag{114.4} $$ となります。本来はPMHF式(114.2)を鑑みると、これは$\lambda_{\mathrm{IF,DPF}}$とするべきです。また、同様に$\color{green}{\lambda_{\mathrm{DPF,lat}}}$もIFとSMの部分に分解すれば、 $$ \color{green}{\lambda_{\mathrm{DPF,lat}}} =\lambda_{\mathrm{IF,DPF,lat}}+\lambda_{\mathrm{SM,DPF,lat}}=K_{\mathrm{IF,RF}}\lambda_{\mathrm{IF}}(1-K_{\mathrm{IF,MPF}})+\lambda_{\mathrm{SM}}(1-K_{\mathrm{SM,MPF}}) \tag{114.5} $$ ですが、たまたま前述の$K_{\mathrm{SM,MPF}}=0$、$K_{\mathrm{IF,MPF}}=1$の条件から(114.5)は $$ \color{green}{\lambda_{\mathrm{DPF,lat}}}=\lambda_{\mathrm{SM}}=\lambda_{\mathrm{SM,lat}}\tag{114.6} $$ となり、値は結果的に正しくなります。しかしながら、この条件が常に成り立つとは言えないのと、より正確な値を$T_{\mathrm{service}}$を用いて算出するためには、IFとSMの値を合わせないほうが良く、結論として(114.2)を用いるべきと考えます。


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posted by sakurai on June 18, 2019 #113

2nd Edition Part 5 Annex E

次に2nd Editionで新設されたAnnex F - PMHFの評価例について説明します。対象となる回路はAnnex EのFMEDAで解析した以下の回路です。

図%%.1
図113.1 2nd Edition Part 5 AnnexE 対象回路

それに基づくAnnex EのFMEDAシートの一部を示します。

図%%.2
図113.2 2nd Edition Part 5 Annex E FMEDA

これらは1st Editionの同じくAnnex Eに掲載されており、基本的に変わっていません。


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posted by sakurai on June 15, 2019 #112

1st Editionと2nd Editionとの変化点

本稿ではISO 26262:2011を1st Edition、ISO 26262:2018を2nd Editionと呼びます。さて、7年間の議論を経て発効された2nd Editionではどこがどう変わったのでしょうか?

本ブログではハードウェア領域においての変化点をご紹介していきます。ISO 26262においてのハードウェア領域は主にPart 5、Part 10、及びPart 11となります。

Part 5

本文中の細かいところも変更されていますが、一見して目に付くのがAnnexの章立てが変更されていることです。

  • 1st Edition Annex F (スケーリングファクタ)の廃止
  • 2nd Edition Annex F (PMHFの評価例)の追加
  • 2nd Edition Annex G (PMHFバジェッティング例)の追加
  • 2nd Edition Annex H(レイテントフォールト取扱い例)の追加

これらひとつひとつについて、「ISO 26262変化点セミナー」でご説明予定ですが、ブログでも簡単に解説していきたいと思います。

Annex F (スケーリングファクタ)の廃止

スケーリングファクタは異なる故障率データベースからの故障率を混ぜて使用する場合、土台を合わせないと正しく使用できないことから、それについての注意点を記述した章でした。ところが2nd Editionでは削除されています。元々、1st Editionでは9.2.4.7にのみスケーリングファクタが書かれており、そこからAnnex Fへ参照となっていたものです。この9.2.4.7はPMHF手法による、安全目標侵害確率の評価の最後の章となっています。つまり1st Editionでは、PMHFを正しく求める方法としてスケーリングファクタを導出し、故障率の土台を合わせて計算することを推奨していました。

一方2nd Editionでは、章が削除されたとはいえ、スケーリングの議論は8.4.3に新設されています。8.4は故障率を異なるデータソースから算出する話なので、スケーリングについて触れるにはちょうど良い場所です。さらに備考に、スケーリングを正しく行わない場合SPFM/LFMにも悪影響が及ぶとあり、スケーリング対象をPMHFのみからアーキテクチャメトリクスまで広げていることは妥当と考えます。

まとめると、独自の章としては削除されたものの、スケーリングは一層重要になります。


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Kパラメータは条件付き確率か (3)

posted by sakurai on May 12, 2019 #100

前稿(99.1)において、時刻$t$から$t+dt$において、IFのフォールトがVSG抑止される微小確率を求めると、 $$ \Pr\{\mathrm{IF\ prevented}\cap\mathrm{IF\ failed\ in\ }(t, t+dt]\cap\mathrm{IF\ not\ failed\ before\ }t\}\\ =\Pr\{\mathrm{IF\ prevented}\ |\ \mathrm{IF\ failed\ in\ }(t, t+dt]\cap\mathrm{IF\ not\ failed\ before\ }t\}\\ \cdot\Pr\{\mathrm{IF\ failed\ in\ }(t, t+dt]\ |\ \mathrm{IF\ not\ failed\ before\ }t\}\cdot\Pr\{\mathrm{IF\ not\ failed\ before\ }t\}\\ =K_{\mathrm{IF,FMC,RF}}\lambda_{\mathrm{IF}}R_{\mathrm{IF}}(t)dt \tag{100.1} $$ ただし、 $$ \Pr\{\mathrm{IF\ prevented}\ |\ \mathrm{IF\ failed\ at\ }t\cap\mathrm{IF\ not\ failed\ before\ }t\}=K_{\mathrm{IF,FMC,RF}},\\ \Pr\{\mathrm{IF\ failed\ in\ }(t, t+dt]\ |\ \mathrm{IF\ not\ failed\ before\ }t\}=\lambda_{\mathrm{IF}}dt,\\ \Pr\{\mathrm{IF\ not\ failed\ before\ }t\}=R_{\mathrm{IF}}(t) $$ となりましたが、「DCはSMのアーキテクチャにより決定される」ことを前提とし、フォールト発生とフォールト検出は独立な事象と考えれば、同じ確率式は、 $$ \Pr\{\mathrm{IF\ prevented}\cap\mathrm{IF\ failed\ in\ }(t, t+dt]\cap\mathrm{IF\ not\ failed\ before\ }t\}\\ =\Pr\{\mathrm{IF\ preventable}\}\cdot\Pr\{\mathrm{IF\ failed\ in\ }(t, t+dt]\ |\ \mathrm{IF\ not\ failed\ before\ }t\}\\ \cdot\Pr\{\mathrm{IF\ not\ failed\ before\ }t\}=K_{\mathrm{IF,FMC,RF}}\lambda_{\mathrm{IF}}R_{\mathrm{IF}}(t)dt \tag{100.2} $$ ここで、 $$ \Pr\{\mathrm{IF\ preventable}\}=K_{\mathrm{IF,FMC,RF}}, \\ \Pr\{\mathrm{IF\ failed\ in\ }(t, t+dt]\ |\ \mathrm{IF\ not\ failed\ before\ }t\}=\lambda_{\mathrm{IF}}dt,\\ \Pr\{\mathrm{IF\ not\ failed\ before\ }t\}=R_{\mathrm{IF}}(t) $$ と求められます。従って、(100.1)の$\Pr\{\mathrm{IF\ prevented}\ |\ \mathrm{IF\ failed\ at\ }t\}$という確率的な$t$の関数を、(100.2)の$\Pr\{\mathrm{IF\ preventable}\}$という定数に置き換えることができます。

2nd SMの属性である$K_{\mathrm{FMC,MPF}}$についても同様の議論が成り立ち、Kパラメータは条件付き確率ではなく、アーキテクチャ的に決定している能力(定数)として扱います。結論として、

$$ K_{\mathrm{IF,FMC,RF}}:=\Pr\{\mathrm{IF\ preventable}\}\tag{100.3} $$ $$ K_{\mathrm{IF,FMC,MPF}}:=\Pr\{\mathrm{IF\ detectable}\}\tag{100.4} $$ $$ K_{\mathrm{SM,FMC,MPF}}:=\Pr\{\mathrm{SM\ detectable}\}\tag{100.5} $$


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Kパラメータは条件付き確率か (2)

posted by sakurai on May 10, 2019 #99

(98.1)の定義を用いれば、時刻$t$から$t+dt$において発生するIFのフォールトについて、VSG抑止される確率を求めると、条件付き確率のチェインルールを用いれば、 $$ \Pr\{\mathrm{IF\ prevented}\cap\mathrm{IF\ failed\ in\ }(t, t+dt]\cap\mathrm{IF\ not\ failed\ before\ }t\}\\ =\Pr\{\mathrm{IF\ prevented}\ |\ \mathrm{IF\ failed\ in\ }(t, t+dt]\cap\mathrm{IF\ not\ failed\ before\ }t\}\\ \cdot\Pr\{\mathrm{IF\ failed\ in\ }(t, t+dt]\ |\ \mathrm{IF\ not\ failed\ before\ }t\}\cdot\Pr\{\mathrm{IF\ not\ failed\ before\ }t\}\tag{99.1} $$ ここで、それぞれ $$ \Pr\{\mathrm{IF\ prevented}\ |\ \mathrm{IF\ failed\ in\ }(t, t+dt]\cap\mathrm{IF\ not\ failed\ before\ }t\}=K_{\mathrm{IF,FMC,RF}},\\ \Pr\{\mathrm{IF\ failed\ in\ }(t, t+dt]\ |\ \mathrm{IF\ not\ failed\ before\ }t\}=\lambda_{\mathrm{IF}}dt,\\ \Pr\{\mathrm{IF\ not\ failed\ before\ }t\}=R_{\mathrm{IF}}(t) \tag{99.2} $$ であるから、 $$ (99.1)=K_{\mathrm{IF,FMC,RF}}\lambda_{\mathrm{IF}}R_{\mathrm{IF}}(t)dt\tag{99.3} $$ と、IFに関する故障率や信頼度関数で表すことができます。

問題1
しかしながら、Kパラメータ($K_{\mathrm{FMC,MPF}}$及び$K_{\mathrm{FMC,RF}}$)が条件付き確率として一定だと矛盾が起きます。抑止条件が確率的に作用することにより、例えば1回目にはVSG抑止されたフォールトが、2回目にはVSG抑止されないことが起こりえます。あるいは1回目にはリペアされたフォールトが2回目にはリペアされないことが起こりえます。検出が確率的になされるからとはいえ、同じ故障が検出されたりされなかったりするのは、合理性がありません。

問題2
次に、例えば故障検出率$K_{\mathrm{FMC,MPF}}$について考えると、長時間が経ち故障検出を長く続ける場合を考えます。検出されるフォールトは全量リペアされるのに比べて、検出されないフォールトはどんどん溜まって行き、不信頼度は上昇し続けます。従って、新たにフォールトするうちの検出される部分の比率が高まりそうであるのに、条件付き確率として一定値であると感覚に反します。

フォールト検出のたびにサイコロで検出を決めているならそのようになりますが、一般的には診断カバレージ(Diagnostic Coverage; DC)はSMのアーキテクチャにより決定され、確率的には検出されないとここでは考えることにします。そうすれば、上記の問題点は解消されます。

図%%.1
図99.1 Q(t)のグラフ

問題1
確率的に一定ではなく、アーキテクチャ的に一定量を必ず検出できるとした場合のグラフです。これであれば、$\tau$毎に必ず検出分は修理され、問題はありません。

問題2
これに関しても、アーキテクチャ的に一定量を必ず検出できるとした場合、グラフから見られるように、不信頼度は時間と伴に上昇していきます。


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posted by sakurai on April 28, 2019 #98

PMHF式において、あるいはその前提となる故障分類フローにおいて、Kパラメータが2種存在します。 具体的には$K_{\mathrm{FMC,RF}}$と$K_{\mathrm{FMC,MPF}}$の2種類です。それぞれ、1st order SMのVSG抑止率及び2nd order SMのフォールト検出率を意味します。規格では定数のように書かれているので、それぞれ $$ K_{\text{FMC,RF}},\\ K_{\text{FMC,MPF}} $$ と記述できます。

ここで1st order SMとは、主機能IFのフォールトによるSG侵害を抑止する働きを持つSMであり、2nd order SMとは、(主機能やSM等の)エレメントのフォールトがレイテントフォールトとなることを阻止する働きを持つSMです。

さらに、Kパラメータは、主機能とSMにそれぞれ存在するため、IF-SM-2nd SMモデル全体では $$ K_{\mathrm{IF,FMC,RF}},\\ K_{\mathrm{IF,FMC,MPF}},\\ K_{\mathrm{SM,FMC,MPF}} $$ の3種類が存在します。一般的にはSMのフォールトはVSGとならないため、$K_{\mathrm{SM,FMC,RF}}$は存在しません。

さて、当初、例えばこの記事でもこのKパラメータは定数であり、かつ条件付き確率であると解釈していました。例えば、 $$ K_{\mathrm{IF,FMC,RF}}:=\Pr\{\mathrm{IF\ prevented}\ |\ \mathrm{IF\ failed}\},\tag{98.1}\\ K_{\mathrm{IF,FMC,MPF}}:=\Pr\{\mathrm{IF\ detected}\ |\ \mathrm{IF\ prevented}\},\\ K_{\mathrm{SM,FMC,MPF}}:=\Pr\{\mathrm{SM\ detected}\ |\ \mathrm{SM\ prevented}\}\\ $$ と定義されます。

ただし上記は若干省略して書かれており、詳細に書けば、$\Pr\{\mathrm{IF\ prevented}\ |\ \mathrm{IF\ failed} \}$は$\Pr\{\mathrm{VSG\ of\ IF\ is\ prevented}\ |\ \mathrm{IF\ is\ failed} \}$であり、$\Pr\{\mathrm{IF\ detected}\ |\ \mathrm{IF\ prevented}\}$は、$\Pr\{\mathrm{The\ fault\ of\ IF\ is\ detected}\ |\ \mathrm{VSG\ of\ IF\ is\ prevented}\}$となります。

ここで、規格に書かれていない2nd SMの修理率は100%であり、

$$K_\text{SM,FMC,rep}=\Pr\{\text{SM repaired}\ | \text{SM detected}\cap\text{SM failed}\}=1.0$$


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