Posts Tagged with "PMHF"

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posted by sakurai on February 20, 2020 #205

次は前回紹介した論文も参照している論文$\dagger$です。本稿ではこれを参照論文といいます。 参照論文の対象は冗長構成のEPSですが、まず一般的な完全冗長サブシステムで議論します。

図%%.1
図205.1 完全冗長サブシステム

参照論文もPMHF式を使用していません。その代わりに定量FTAのそれぞれの基事象において確率が時間変化する、つまり確率過程であることをマルコフチェインを組み合わせて解いています。図205.2に参照論文の概念図を示します。これは論文中には無く、弊社が作成したものですが、前述の言葉で説明したものを図化したものです。

図%%.2
図205.2 論文の概念図

マルコフチェインを用いる考え方は概ね正しいものの、実はマルコフチェインを用いてPMHFを求めたものが、規格のPMHF式であり(ブログ記事#102~109を参照)、PMHF式に従えばこの定期検査修理を含む確率過程を織り込んだものとなっているため、再度基事象を確率過程として捉える必要はありません。

上で概ねと書いた部分ですが、本来マルコフチェインは修理を考慮する必要があります。SM1 (1st order SM)が先に故障する場合、SM2 (2nd order SM)により定期検査を受け、故障が検出された場合は直ちにゼロ時間で修理されるのが、ISO 26262の考え方です。ということは'1'の状態から'00'状態に戻る場合が存在します。


$\dagger$ https://www.researchgate.net/publication/323450274_A_mixed_model_to_evaluate_random_hardware_failures_of_whole-redundancy_system_in_ISO_26262_based_on_fault_tree_analysis_and_Markov_chain


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posted by sakurai on February 14, 2020 #204

書き換えたFTの評価

図202.1に対して図203.1の書き換えを適用したものが図204.1のFTです。このFTに対してカットセット分析を実施し、TOP事象の確率を求めます。

図%%.1
図204.1 弊社提案のEBDサブシステムのFT(ワーストケース)

同様にツールを用いてMCSを求めると、MC数は42個に増加します。しかし前述のように、これには3個以上のエレメント故障が含まれるためツールで削除します。すると、表204.1のように24個のMCが得られ、TOP事象の確率は$4.35\times 10^{-5}$、PMHFは8.70[FIT]となります。表204.1中のC_DC_OL_MONは、1からオンラインモニタのDCを引いた定数であるため、これはエレメント故障数にカウントされません(青字で定数を表示)

表204.1 図204.1のFTのMCS
表%%.1

このように、PMHF式を尊重せず、LFを見逃しDPFのみとすることで、2.7倍も故障確率を甘く(低く)見る事になります。保守的に(高く)見積もるのであれば安全側なのでOKですが、不稼働確率の過小評価は危険側のため、良くありません。

再度整理すると、正しい考え方は、

  1. E1及びE2の2つのエレメントにより構成される冗長系は、マルコフ連鎖で表される。
  2. E1、E2それぞれのエレメントは修理可能(つまり不信頼度$F(t)$ではなく、不稼働度$Q(t)$となる)
  3. PMHF式はこれらを考慮し、系の車両寿命における平均不稼働確率Q(T)を表したものであり、 PMHF式に基づきFault Treeを構成する

ですが、参照論文はこのうち、2., 3.が満足されていません。1.は当然なので、ほとんどが間違いということになります。

RAMS 2021において、PMHF式に基づくFTA構築法の論文発表が終了したため、本記事を開示します。


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posted by sakurai on February 13, 2020 #203

保守的なPMHF式

さらに、参照論文では不信頼度 $$F(t)=1-e^{-\lambda t}$$ を用いた非修理系として扱っていますが、これはISO 26262の考え方と合いません。規格では主機能と安全機構のDPFまで考慮する必要があり、安全機構は修理可能として扱います。そのため2nd order SMが必要であり、周期的な検出(検出周期=$\tau$)と修理(検出カバレッジ=$K_\text{SM,MPF}$)が前提となります。修理系において不信頼度$F(t)$は不稼働度$Q(t)$となり、

$$Q(t)=(1-K_\text{SM,MPF})F(t)+K_\text{SM,MPF}F(t\bmod\tau)\\ =(1-K_\text{SM,MPF})(1-e^{-\lambda t})+K_\text{SM,MPF}(1-e^{-\lambda(t\bmod\tau)})$$ これからPMHFを求めると、

$$M_\text{PMHF}=(1-K_\text{IF,RF})\lambda_\text{IF}+K_\text{IF,RF}\lambda_\text{IF}\lambda_\text{SM}[(1-K_\text{SM,MPF})T_\text{lifetime}+K_\text{SM,MPF}\tau]$$

ここでワーストケースを考え、2nd order SMが無い(カバレージがゼロ、$K_\text{SM,MPF}=0$として評価します。これは保守的な評価です。すると、上式のPMHFは、

$$M_\text{PMHF}=(1-K_\text{IF,RF})\lambda_\text{IF}+K_\text{IF,RF}\lambda_\text{IF}\lambda_\text{SM}T_\text{lifetime}\\ =\lambda_\text{IF}[(1-K_\text{IF,RF})+K_\text{IF,RF}\lambda_\text{SM}T_\text{lifetime}]$$ 従って、基本的にFTはこの評価式を実装することになります。

FTの書き換え

参照論文ではLFを考慮せずに、単純にDPFとしていましたが、上記のようにLFを考慮したほうが正確です。これを確率式で表せば、

$$(\lambda_\text{IF}T_\text{lifetime})(\lambda_\text{SM}T_\text{lifetime})\to(\lambda_\text{IF}T_\text{lifetime})[(1-K_\text{IF,RF})+K_\text{IF,RF}(\lambda_\text{SM}T_\text{lifetime})]$$

となり、図203.1のFTの書き換えのように構成します。図の左は参照論文のFTであり、右は変更後のFTです。

図%%.1

図203.1 DPFの書き換え(LFを追加)

FTAツールは確率で取り扱い、ミッション時間の計算は自動的に行われるため、明示的に$T_\text{lifetime}$を掛ける必要はありません。

RAMS 2021において、PMHF式に基づくFTA構築法の論文発表が終了したため、本記事を開示します。


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posted by sakurai on February 12, 2020 #202

参照論文の問題点

参照論文では、EBDノードを含めた全体について、定量的にFault Treeを用いたMCS(Minimal Cut Set)分析を行っており、問題は2つあります。

  • ISO 26262規格のPMHF式を参照していない
  • On-lineモニタのカバレッジが参照されていない。

この2つは関連する問題です。具体的に表202.1のとおり数値を入れてみてみます。On-lineモニタは参照論文に数値が無かったため、SMとして低めの数値を入れました。

表202.1
Subsystem Component Failure Rate [1/h]
EBD Node Brake ECU $3.3\times 10^{-7}$
Electronics Brake Module (EBM) $4.2\times 10^{-7}$
On-line monitor for EBM $1.1\times 10^{-7}$

誤ったFTA

この数値に基づき、参照論文のEBDサブシステムのFTをツール(SAPHIRE)により構成すれば、図202.1のようになります。

図%%.1
図202.1 参照論文のEBDサブシステムのFT

誤ったMCS

図202.1は論文のFTですが、このFTに対してカットセット分析を実施し、EBDサブシステムの故障確率を求めます。ツールを用いてMCSを求めると、表202.2のように24個の積項(Minimal Cut)が得られ、EBDサブシステムの故障確率は$1.63\times 10^{-5}$となります。参照論文ではミッション時間を5,000[H]としているため、"PMHF"(本当は車両故障確率の時間平均)は3.26[FIT]となります。

表202.2 EBDサブシステムのFTのMCS
表%%.2

ISO 26262では3つ以上のエレメント故障は安全故障としています。これは(規格には明確に書かれていませんが)確率が非常に低くなるためです。従って、3つ以上の故障を枝刈り(slice)すれば、表202.3のMCSとなります。積項数は6個に減少するものの、故障確率も"PMHF"も変わりません。

表202.3 枝刈りをしたMCS
表%%.3
便宜上、時間平均VSG確率を"PMHF"としましたが、本来PMHFと呼ぶためにはPMHF式を尊重しなければなりません。以上のように、本論文の手法では"PMHF"が非常に低く計算されます。その理由はon-lineモニタのカバレージをほぼ100%としているためです。

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posted by sakurai on February 11, 2020 #201

ISO 26262のFTA関連の2つの論文を紹介します。

最初に紹介するのは"ISO 26262 ASIL-Oriented Hardware Design Framework for Safety-Critical Automotive Systems"という論文$\dagger$で、 PMHFターゲットに対してシステムをFTAを用いて分析し、弱い部分を定量的に抽出し、そこにSMを追加し、最終的にPMHF目標を満たす設計手法を提案するという、大変興味深いものです。ただ、残念ながらこの論文にはランダムハードウェア故障の確率の評価値(いわゆるPMHF)について問題があるため、それを取り上げます。

この論文(以下参照論文と言う)は以下のところから取得できます。

この論文ではAEB(autonomous emergency braking system)を題材としています。以下にAEBシステムのFT(Fault Tree)を示します。

図%%.1
図201.1 AEBシステム

AEBはかなり大規模なシステムであるため、FTの一部を抜き出します。図201.2がその一部で、これにEBDサブシステムと名付けます。

図%%.2
図201.2 AEBシステムの一部(EBDサブシステム)

EBDサブシステムは図201.2のように、EBDノード4冗長で構成されます。参照論文では図201.3のように、EBDノード1チャネルのEBM(Electronic Brake Module)に対してOn-line Monitorを付加してPMHFを下げたと主張しています。

図%%.3
図201.3 EBDノード1チャネル

$\dagger$Chen, Yung-Yuan & Lu, Kuen-Long. (2019). ISO 26262 ASIL-Oriented Hardware Design Framework for Safety-Critical Automotive Systems. 10.1109/ICCVE45908.2019.8965235.


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posted by sakurai on February 5, 2020 #109

1st EditionのPMHF式

以下に1st EditionのPMHF第1式及び第3式を示します。第1式はIFによりSPFもしくはDPFが発生する場合のみを数え上げた式であり、第3式はそれに加えてSM1によるDPFも加えた式です。従って、全ての場合を考えるならば第3式を使うのが正しいと考えます。

図%%.1
図109.1 1st EditionのPMHF第1式

図%%.2
図109.2 1st EditionのPMHF第3式

1st EditionにおいてはIFがアンリペアラブル、SM1がリペアラブルという前提での計算に基づいていると考えらえます。その理由は、この前提で、前稿のCTMCから平均PUDを求めると、正確に上2式と一致するためです。

2nd EditionのPMHF式

以下に2nd EditionのPMHF式を示します。

図%%.3
図109.3 2nd EditionのPMHF式

ISO 26262の2nd EditionのPMHF式は、1st Editionとpattern3、4が異なっており、対称性からみて前提が追加されていると考えます。2nd Editionでは1st Editionの前提(pattern 1, 2)に加えて、その反対の状態(pattern 3, 4)つまりIFがリペアラブル、SM1がアンリペアラブルの場合の両側についてPMHFを求めていると推測します。ただし、$T_{\mathrm{lifetime}}$項と$T_{\mathrm{service}}$項がなぜ2倍異なるのかの理由は判明していません。追記:2年後に判明したのでこの記事に記載しました。

しかしながら、弊社ではこの前提は誤りではないかと思います。初期状態、つまりフォールトが起きていない状態においては、IF、SM1の両方ともがリペアラブルが正しく、上記の仮定においては故障確率を過大に見積もりすぎています。

例えば、SM1がフォールトし、そのフォールトがSM2により検出され、検出周期の最後でリペアされる場合(pattern 2)を考えます。規格ではこの場合は最初にSM1がフォールトしてしまうと、最終的にはIFのフォールトによりDPFとなる場合のみがカウントされます。なぜなら、どちらかがリペアラブルだと他方はアンリペアラブルだからです。つまりこの場合、SM1がリペアラブルの場合は自動的にIFはアンリペアラブルという前提です。

ところが、実際にはSM1がリペアされた場合は初期状態と同じ状態に戻るため、次にIFがフォールトし、SM1により検出されリペアされる場合(pattern 4)もありえます。典型的な例は、SM1がフォールトしリペアされ、次にIFがフォールトしリペアされるように、交互にリペアされる場合です。この場合はDPFが起きないにも関わらず、2nd EditionではSM1がフォールトから始まると、SM1はリペアラブルに固定されます。そしてIFはアンリペアラブルに固定されます。

従って、実際にはDPFは起きませんが、IFのフォールトでDPFとカウントされ、結論として過大にフォールト確率を見積もっています。

もしかすると、LAT2にいる状態ではSM1がフォールトしているので、IFはリペアされない(IFはアンリペアラブル)と考えたのではないでしょうか。ところが、IFのリペアラビリティはSM1ではなく、SM2にのみ依存し、かつSM2は故障しないため、IFはリペアラブルです。従って、本稿のほうが正しいと考えます。

RAMS 2020においてPMHF式の論文発表が終了したため、本記事を開示します。


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posted by sakurai on October 28, 2019 #174
  • 箱(v)ではMPFの検出率を聞いています。これも条件付き確率$\Pr\{\text{fault detected}\ |\ \text{fault occured}\}$ではありません。故障率や故障数に依らない、アーキテクチャで決まった定数です。
  • 検出された部分(detected)は下左に移動し、箱(w)で検出率$K_{FMCi,MPF}$を掛けられ$\lambda_{FMCi,MPF,det}$と名付けられます。次に下に移動し、箱(x)でMPF detected故障率として分類されます。$\dagger$ $$ \lambda_{FMi,MPF,det}=K_{FMCi,MPF}\lambda_{FMi,MPF}\tag{w, x} $$

  • 一方、検出されない部分(not detected)は下に移動し、箱(y)で不検出率$1-K_{FMCi,MPF}$を掛けられ、$\lambda_{FMCi,MPF,pl}$と名付けられます。 $$ \lambda_{FMi,MPF,pl}=(1-K_{FMCi,MPF})\lambda_{FMi,MPF}\tag{y} $$

  • 次の箱(z)では、ドライバーに認識される率を聞いています。認識率を$F_{FMC,per}$とします。

図%%.1
図174.1 Part 10故障分類フローチャート
  • ドライバーに認識される場合は下に行き、箱(aa)により認識率$F_{FMC,per}$を掛けられ、その下の箱(ab)でMPF, perceived故障率として分類されます。 $$ \lambda_{FMi,MPF,p}=F_{FMC,per}\lambda_{FMi,MPF,pl}\tag{aa, ab} $$

  • ドライバーに認識されない場合は右下に行き、箱(ac)において、不認識率$1-F_{FMC,per}$を掛けられ、その下の箱(ad)でMPF, latent故障率として分類されます。 $$ \lambda_{FMi,MPF,l}=(1-F_{FMC,per})\lambda_{FMi,MPF,pl}\tag{ac, ad} $$

以上で全ての箱の説明が終了であり、以上による分類された故障率を用いて、SPFM、LFM、PMHFを計算することが可能です。

$\dagger$このMPF,detectedフォールトについてですが、1st Editionでは、MPF detectedフォールトがリペアされるのか、されないのか、レイテントなのか言及されていません。数学的な検証の結果、これはリペアされずLFになることが判明しています。一方、2nd Editionでは規格中にリペアされることが初めて言及されました(pattern 3)。これも数学的な検証の結果LFになることが判りました。このMPF detectedは、1st Edition、2nd Edition共LFになることが判明しているにも関わらず、LFMに含まれていないのは規格の矛盾と考えられます。


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posted by sakurai on October 25, 2019 #173

ニュースリリースでも明らかにしたように、このブログで研究してきたPMHFの一般式が、RAMS 2020に採択されました。ブログにおいて機能安全の知識は前提として良いので、注釈を取り除き、逆にブログとの関連の注釈☆をつけて再掲します。リリース文を茶色、注釈を青色で表示します。

なお、RAMS 2020に投稿中だったため、最新の研究#103~108を非開示としていましたが、今回採択が決定したので、RAMS 2020終了後(2020年2月頃)に公開予定です。


図%%.1

ISO 26262機能安全コンサルティングを提供するFSマイクロ株式会社(本社:名古屋市)代表取締役社長 桜井 厚の論文が、2019年10月19日、IEEE Reliability Society主催の国際学会である第66回RAMS(RAMS 2020)に採択されました。RAMS 2020は、2020年1月27日から30日まで、アメリカ・カリフォルニア州パームスプリングスのマリオット・ルネッサンスにて開催予定です。(☆1月30日最終日の12:15~14:15に開催されるコロキアムセッションにて発表します。)

図%%.2

論文の題名は「Generic Equations for a Probabilistic Metric for Random Hardware Failures According to ISO 26262」です。邦題は「ISO 26262に準拠したランダムハードウェア故障の確率的メトリクスの一般式」であり、ランダムハードウェア故障の確率的メトリクス(PMHF)を正確に評価することを可能にするものです。(☆上記にもあるように、本ブログでは#103~108で書きましたが、暫定非公開中です。⇒RAMS 2020が終了したので、当該記事を公開に変更しました。)

2011年に車載電子機器における機能安全の国際規格であるISO 26262の初版が、また、2018年には改訂版が発効されました。この規格改訂版においてはPMHF式が変更されていますが、PMHF値の数学的な定義や、エレメントの前提条件が明確ではありませんでした。(☆エレメントの前提条件とは具体的には修理可能性のことです。規格初版と規格改定版で、この修理可能性の前提を変えていると推測します。) 本論文ではこれらの点を明確にし、さらに規格に準拠した周期的な検査が行われるエレメントの不稼働確率式を初めて明らかにしました。 (☆不稼働確率については前記事に記載しています。)

これに基づき、一般的なサブシステムに関するPMHF式を新たに導出しました。本論文によりPMHF値を正確に評価できるため、広範な車載ECUにおいて、適正な安全設計を実施することが可能となります。また、緊急操作許容時間間隔(EOTTI)に関する過剰な設計制約を軽減できるため、自動運転システムに代表される耐故障システムにおいて、設計工期の短縮や製品コストの低減が可能となります。 (☆EOTTIの31倍の過剰見積もりについては前記事に記載しています。)

商号      FSマイクロ株式会社
代表者     桜井 厚
設立年月日   2013年8月21日
資本金     3,200万円
事業内容    ISO 26262車載電子機器の機能安全のコンサルティング及びセミナー
本店所在地   〒460-0011
        愛知県名古屋市中区大須4-1-57
電話      052-263-3099
メールアドレス info@fs-micro.com
URL      http://fs-micro.com


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2nd EditionのPMHF方程式

posted by sakurai on July 17, 2019 #130

2nd EditionのPMHF方程式は前稿のように、

図109.3
図109.3 2nd Editionの規格式

となっており、Pattern 2及び4に関して、0.5がどこにいったかが謎でした。

ところが、2018年にヨーロッパで実施された機能安全ワークショップでのインテルの資料(恐らくDr. Riccard Marianiの資料)に

図%%.1
図130.1 Intelによる2nd Editionの規格式

という式が出ており、無くなったことが謎だった0.5が戻っています。どちらかと言えば、こちらのほうが(少しだけ)正しい式です。

結論としては両者とも誤っているのには違いないのですが、謎の部分が無くなったことで、規格式の誤りが明確になりました。誤りの原因は、初期状態において、IFまたはSMのいずれかがアンリペアラブルと固定している点です。実際にこの条件で計算すると、図130.1の式と一致します。

本来は初期状態においてIF、SMの両方ともリペアラブルとしなければなりません。つまり、図109.3の2nd Editionの規格式の誤りは以下の2か所あると思われます。

  • パターン2, 4で0.5が消えている件
  • こちらのほうが重大ですが、$\img[-1.35em]{/images/withinseminar.png}$

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posted by sakurai on July 9, 2019 #126

さて、前稿平均PUD計算は簡易的に、冗長システムの確率の1/2として求めましたが、厳密には、

例えば全ての部品を二重化しておき、片方が壊れてももう片方がそれを引き継ぐことができる

という、スタンバイシステムについて平均PUD計算する必要があります。常に両方が稼働する冗長(2重化)と異なり、主系がフォールトしたときに初めて従系が稼働するものです。

IF、SM1からなるサブシステムがあり、IF、SM1の両方ともアンリペアラブルだとします。それぞれの故障率は、$\lambda_\text{IF}$及び$\lambda_\text{SM}$とします。上記のように、IFもSM1も$t=0$から同時に動作している冗長系ではなく、時刻$t$において主系であるIFがダウンし、即座にスタンバイ系であるSM1が引き続いて動作するものとします。

すると、車両寿命$T_\text{lifetime}$における稼働度(Availability)は、IFが$T_\text{lifetime}$までにダウンしないか、あるいは、途中の時刻$t$でダウンしたとしても、そこからSM1が$T_\text{lifetime}$までダウンせずに稼働する確率なので、

$$ A_\text{subsystem}(T_\text{lifetime})=\Pr\{\text{IF not failed at }T_\text{lifetime}\}\\ +\int_0^{T_\text{lifetime}}\Pr\{\text{IF fails in }(t + dt]\cap\text{IF not failed at }t\cap\text{SM not failed in }(T_\text{lifetime}-t]\}\\ =R_\text{IF}(T_\text{lifetime})+\int_0^{T_\text{lifetime}}R_\text{SM}(T_\text{lifetime}-t)F_\text{IF}(t)dt\\ =R_\text{IF}(T_\text{lifetime})+\int_0^{T_\text{lifetime}}e^{-\lambda_\text{SM}(T_\text{lifetime}-t)}\lambda_\text{IF}e^{-\lambda_\text{IF}t}dt\\ =R_\text{IF}(T_\text{lifetime})+\lambda_\text{IF}e^{-\lambda_\text{SM}T_\text{lifetime}}\int_0^{T_\text{lifetime}}e^{-(\lambda_\text{IF}-\lambda_\text{SM})t} dt\\ =R_\text{IF}(T_\text{lifetime})+\lambda_\text{IF}e^{-\lambda_\text{SM}T_\text{lifetime}}\left[\frac{e^{-(\lambda_\text{IF}-\lambda_\text{SM})t}}{-(\lambda_\text{IF}-\lambda_\text{SM})}\right]_0^{T_\text{lifetime}}\\ =R_\text{IF}(T_\text{lifetime})+\lambda_\text{IF}e^{-\lambda_\text{SM}T_\text{lifetime}}\left[\frac{1-e^{-(\lambda_\text{IF}-\lambda_\text{SM})T_\text{lifetime}}}{\lambda_\text{IF}-\lambda_\text{SM}}\right]\\ =R_\text{IF}(T_\text{lifetime})+\frac{\lambda_\text{IF}}{\lambda_\text{IF}-\lambda_\text{SM}}(e^{-\lambda_\text{SM}T_\text{lifetime}}-e^{-\lambda_\text{IF}T_\text{lifetime}})\\ =\img[-1.35em]{/images/withinseminar.png}, \text{ただし、}\lambda_\text{IF}\neq\lambda_\text{SM} \tag{126.1} $$

平均PUDを求めるには不稼働度(Unavailability)の時間平均が知りたいので、$\lambda t\ll 1$の前提で$R(t)=e^{-\lambda t}\approx1-\lambda t+\frac{1}{2}\lambda^2 t^2$と、2次項までMaclaurin展開し、平均PUDを求めると、 $$ \require{cancel} \overline{PUD}=\frac{1}{T_\text{lifetime}}Q_\text{subsystem}(T_\text{lifetime})=\frac{1}{T_\text{lifetime}}\left[1-A_\text{subsystem}(T_\text{lifetime})\right]\\ \approx\frac{1}{\bcancel{T_\text{lifetime}}}\left[\bcancel{1}-(\bcancel{1}-\lambda_\text{IF}\bcancel{T_\text{lifetime}}+\frac{1}{2}{\lambda_\text{IF}}^2 {T_\text{lifetime}}^\bcancel{2})\right]\\ -\frac{1}{\bcancel{T_\text{lifetime}}}\frac{\lambda_\text{IF}}{\lambda_\text{IF}-\lambda_\text{SM}}\left[ (\bcancel{1}-\lambda_\text{SM}\bcancel{T_\text{lifetime}}+\frac{1}{2}{\lambda_\text{SM}}^2 {T_\text{lifetime}}^\bcancel{2})\\ -(\bcancel{1}-\lambda_\text{IF}\bcancel{T_\text{lifetime}}+\frac{1}{2}{\lambda_\text{IF}}^2 {T_\text{lifetime}}^\bcancel{2})\right]\\ =(\lambda_\text{IF}-\frac{1}{2}{\lambda_\text{IF}}^2 T_\text{lifetime})-\frac{\lambda_\text{IF}}{\bcancel{\lambda_\text{IF}-\lambda_\text{SM}}}\left[(\bcancel{\lambda_\text{IF}-\lambda_\text{SM}})-\frac{1}{2}T_\text{lifetime}(\bcancel{\lambda_\text{IF}-\lambda_\text{SM}})(\lambda_\text{IF}+\lambda_\text{SM})\right]\\ =(\bcancel{\lambda_\text{IF}}-\bcancel{\frac{1}{2}{\lambda_\text{IF}}^2 T_\text{lifetime}})-\lambda_\text{IF}\left[\bcancel{1}-\frac{1}{2}T_\text{lifetime}(\bcancel{\lambda_\text{IF}}+\lambda_\text{SM})\right]\\ =\img[-1.35em]{/images/withinseminar.png} \tag{126.2} $$ 以上から、前稿の2重化での簡易計算と完全一致します。


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