Posts Tagged with "average PUD"

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PMHF規格第2式の導出

posted by sakurai on October 3, 2018 #64

次に、定期検査時間による項が、車両寿命に関する項よりも十分小さく無視できるとした場合、つまり、$\lambda_{SM,DPF,lat}T_{lifetime}\gg\lambda_{SM,DPF,det}\tau_{SM}$の場合は、(63.1)は $$ M_{PMHF,M}\approx\lambda_{M,RF}+\frac{1}{2}\lambda_{M,DPF}\lambda_{SM,DPF,lat}T_{lifetime}\tag{64.1} $$ となり、PMHF規格第2式の

図%%.1
図64.1 Part10 8.3.3 PMHF規格 第2式
正確に一致します。

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posted by sakurai on September 30, 2018 #63

主機能フォールトによるVSGの場合のPMHF計算

前稿で目的の微小不稼働確率が求められたので、主機能フォールトに関するPMHFこと時間平均PUDを計算します。(61.5)(62.3)を適用し、(60.6)及び(60.8)を適用すれば、PMHFの式は、 $$ M_{PMHF,M}=\overline{\varphi_{M}}\approx(1-K_{M,FMC,RF})\lambda_M\\ +\frac{1}{2}K_{M,FMC,RF}\lambda_M\lambda_{SM}[(1-K_{SM,FMC,MPF})T_{lifetime}+K_{SM,FMC,MPF}\tau_{SM}]\\ =\lambda_{M,RF}+\frac{1}{2}\lambda_{M,DPF}(\lambda_{SM,DPF,lat}T_{lifetime}+\lambda_{SM,DPF,det}\tau_{SM})\tag{63.1} $$ となり、これはPart10 8.3.3PMHF規格第1式の

図%%.1
図63.1 Part10 8.3.3 PMHF規格 第1式

正確に一致します。ただし、条件に「安全機構に続いて指令ブロックの故障が引き起こされる可能性を考慮した」とあり、「SMのフォールトの後に主機能がフォールトする場合」と読めますが、以前PMHFの意味でも述べたように、(訳文ではなく)原文の誤りと思われます。その理由は、SMがフォールトしている場合は主機能フォールト抑止ができず、従って$\lambda_{RF}$とはならないからです。残余故障率が存在するためには、SMが稼働している必要があります。さらに、この場合、probabilityの訳語としては可能性よりも数学用語である確率のほうが適当です。

正しくは前稿までに見たように、OPR→SPF(安全機構のフォールトが無い状態で主機能フォールトの場合)及びLAT2→DPF(規格の条件どおり、安全機構に続く主機能のフォールトの場合)の2条件の和となります。つまり規格第1式は、安全機構のフォールトの有無を問わない、主機能フォールトによるVSG確率を意味しています。

順番については表で表した方が分かりやすいため、以下に4つのケースを示します。

表63.1 主機能と安全機構のフォールト順番
第1のフォールト 第2のフォールト VSG
Case 1 M - 〇(SPF/RF)
Case 2 M SM 〇(DPF)
Case 3 SM - ×
Case 4 SM M 〇(DPF)

規格第1式の条件である、「SMのフォールトの後に主機能がフォールトする場合」はCase 4のみを意味していますが、実際には数式は、主機能フォールトによるVSG確率、つまりCase 1とCase 4の場合の両方を意味しています。直観的にも理解されるように、 $$M_{PMHF,M}=\lambda_{M,RF}+\frac{1}{2}\lambda_{M,DPF}(\lambda_{SM,DPF,lat}T_{lifetime}+\lambda_{SM,DPF,det}\tau_{SM})\tag{63.1再掲}$$ の第1項がCase 1を、$\frac{1}{2}$以降の第2項がCase 4を表しています。


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posted by sakurai on September 23, 2018 #62

主機能M及び安全機構SMのペアについて、マルコフ状態遷移図を書いていきます。 まず、Mはアンリペアラブルであることを前提とし、SMはリペアラブルであることを前提とします。 しかし、MがフォールトしてもSMがそれをVSG(安全目標侵害)抑止している場合には、次のSMのフォールトは直ちにSG侵害となるため、一旦Mがフォールトとなった時点でSMはアンリペアラブルとなります。

まず、時刻$t$において、$\lbrace \mathrm{OPR:\ M\ up\ at\ }t\cap \mathrm{SM\ up\ at\ }t\rbrace$, $\lbrace \mathrm{SPF:\ M\ down\ at\ }t\cap\mathrm{VSG\ of\ M\ not\ preventable}\cap\mathrm{SM\ up\ at\ }t\rbrace$, $\lbrace \mathrm{LAT1:\ M\ down\ at\ }t\cap\mathrm{VSG\ of\ M\ preventable}\cap\mathrm{SM\ up\ at\ }t\rbrace$, $\lbrace \mathrm{LAT2:\ M\ up\ at\ }t\cap\mathrm{SM\ down\ at\ }t\rbrace$, $\lbrace \mathrm{DPF:\ M\ down\ at\ }t\cap\mathrm{SM\ down\ at\ }t\rbrace$,の5状態があり、$t$から$t+dt$までの微小時間$dt$の間に遷移する微小確率PUDを求めます。

図のほうがわかりやすいので、以下にマルコフ状態遷移図を示します。

図%%.1
図62.1 M/SMモデルのマルコフ状態遷移図

マルコフ状態遷移図でのOPR→SPF

図より微小不稼働確率をPUDで表すと、 $$ q_{M,SPF}(t)dt=\Pr\{\mathrm{OPR\ at\ }t\cap\mathrm{M\ down\ in\ }(t, t+dt]\cap\mathrm{VSG\ of\ M\ not\ preventable}\} \\ =\Pr\{\mathrm{M\ up\ at\ }t\cap\text{SM up at }t\cap\mathrm{M\ down\ in\ }(t, t+dt]\cap\mathrm{VSG\ of\ M\ not\ preventable}\} \\ =\Pr\{\mathrm{VSG\ of\ M\ not\ preventable}\}\Pr\{\mathrm{M\ fails\ in}(t, t+dt]\ |\ \mathrm{M\ up\ at\ }t\}\Pr\{\mathrm{M\ up\ at\ }t\}\Pr\{\text{SM up at }t\}\\ =(1-K_{M,FMC,RF})A_{SM}(t)R_{M}(t)\lambda_{M}dt=(1-K_{M,FMC,RF})A_{SM}(t)f_{M}(t)dt\tag{62.1} $$

マルコフ状態遷移図でのLAT2→DPF

図より微小不稼働確率をPUDで表すと、 $$ q_{M,DPF}(t)dt=\Pr\{\mathrm{LAT2\ at\ }t\cap\mathrm{M\ down\ in\ }(t, t+dt]\}\\ =\Pr\{\mathrm{SM\ down\ at\ }t\cap\mathrm{M\ up\ at\ }t\cap\mathrm{M\ down\ in\ }(t, t+dt]\}\\ =\Pr\{\mathrm{SM\ down\ at\ }t\rbrace\Pr\{\mathrm{M\ fails\ in}(t, t+dt]\ |\ \mathrm{M\ up\ at\ }t\}\Pr\{\mathrm{M\ up\ at\ }t\}\\ =Q_{SM}(t)R_{M}(t)\lambda_{M}dt=Q_{SM}(t)f_{M}(t)dt\tag{62.2} $$

主機能フォールトによるVSG

以上から(62.1)と(62.2)を加えれば、MによりSPFもしくはDPFとなる場合の微小遷移確率が求められ、 $$ q_{M}(t)dt=q_{M,SPF}(t)dt+q_{M,DPF}(t)dt=\left[1-K_{M,FMC,RF}A_{SM}(t)\right]f_{M}(t)dt\\ =\img[-1.35em]{/images/withinseminar.png} ただしu\equiv t\bmod\tau_{SM}\tag{62.3}$$ となります。


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posted by sakurai on September 18, 2018 #61

PUD(Point Unavailablity Density)の定義からご紹介します。とはいえ、これは弊社の造語であり本ブログと論文だけで通用するものです。このPUDは不稼働密度とでも訳すべきものであり、以下に定義を示します。

PUD:

PUD、すなわち不稼働密度$q_{item}(t)$は、前々回ご紹介したポイントアンナベイラビリティ(PUA)の時間微分で、以下の微小不稼働確率を$dt$で割ったものです。$q_{item}(t)$の式にすると$\lim_{dt \to 0}$が出てくるため、形式的に両辺に$dt$をかけ微小不稼働確率としています。 $$q_{item}(t)dt\equiv(\frac{dQ_{item}(t)}{dt})dt=\img[-1.35em]{/images/withinseminar.png}\tag{61.1}$$

PMHFは、修理系アイテムの車両寿命間のダウン確率の時間平均であることから、ここで示すアイテムの平均PUDと考えられます。このことは規格Part5には以下のように書かれています。

図%%.1
図61.1 Part5でのPMHFの意味

「アイテムの作動寿命間の毎時平均確率」とは舌足らずであり、何の確率かが書かれていません。その前に「ランダムハードウェア故障」とあるため文脈から故障確率であると読み取れますが、修理系の場合は厳密には故障確率ではなく、故障したものが修理される事象を含めたダウン確率です。

従って、PMHFを求めるにはまず微小不稼働確率に着目して確率微分方程式を立て、それを0から車両寿命$T_{lifetime}$まで積分し、$T_{lifetime}$で割って平均PUDを算出する流れで求めます。


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