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PMHFの誤解 (10) |
故障分類フローでの検証 (続)
前稿で規格の故障分類フローの箱(p)まで見たので、その続きを確認します。
Fraction of faults that the safety mechanism prevents from directly violating the safety goal?
安全機構が安全目標に直接違反することを防いだフォルトの割合?
とあります。ここに来たフォールトはVSGを起こします。ここから右と下の枝の違いはSMがそれを防いだかどうか(ゼロイチではなく割合)です。
VSGを防げない部分の割合を故障率$\lambda_\text{FMi,PVSG}$にかけて下の箱(r)、(s)へ移ります。これが残存フォールト$\lambda_\text{FMi,RF}$の箱(s)です。ということで、直接侵害する故障のうち、安全機構でカバーされない部分は残存フォールトだという結論です。マルチプルポイントフォールトではありません。
被引用論文の調査
ここで、「研究成果報告書」の引用元論文であるPMHF式の誤り論文$\dagger$を再度確認したところ、そこにも同じ図526.1の表が有り、全てMPFと分類されていました。そのため元論文$\dagger$から表を引き写したための誤りと判明しました。当該箇所を引用すれば、
Note that each fundamental building block in our exemplary safety microprocessor is protected with SM. This causes every hardware failure mode is classified as MPF. As the result, the summation of the single-point fault and the residual fault is zero.
各基本構成要素はSMで保護されている。 このため、すべてのハードウェア故障モードがMPFに分類される。その結果、一点故障と残留故障の和はゼロになる。
とあり、結論として元論文$\dagger$の2個目の誤りがそのまま引き継がれたようです。まとめれば、元論文$\dagger$には
- PMHF式のDPF項を過剰に見積もる(故障率が2乗されていない)誤り
- 故障分類において残存フォールトを全てマルチプルポイントフォールトと勘違いする誤り
の二重の誤りが存在しており、それが「研究成果報告書」をカスケード故障させたということになります。元の誤りは罪深く、その引用だけでも4~5本ほどあり、さらに今後孫引きされることを考えると、増殖する害虫を見るようで憂慮するばかりです。
$\dagger$Y. Chang, L. Huang, H. Liu, C. Yang and C. Chiu, "Assessing automotive functional safety microprocessor with ISO 26262 hardware requirements," Technical Papers of 2014 International Symposium on VLSI Design, Automation and Test, Hsinchu, 2014, pp. 1-4, doi: 10.1109/VLSI-DAT.2014.6834876.
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