Posts Tagged with "FPGA"

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posted by sakurai on June 4, 2020 #270

QSPIフラッシュへの書き込み

通常ではVivadoからPROGRAM AND DEBUG⇒Open Hardware Manager⇒Open Target⇒Auto Connectとし、Program DeviceによりJTAG経由でFPGAにビットストリームを焼きこみます。しかしながらこれだと電源断によりFPGAのSRAM内容が消えてしまいます。また、FPGAプログラミング用のPCが常に必要です。オンボードFlashにデータを焼きこめばPCを持ち運ぶ必要がなく、電源onでアプリケーションが立ち上がるため、Flashのプログラミングを行います。

binファイルの作成

最初にFlashへ書き込むデータファイルであるbinファイルを用意します。これは、Tools⇒Setting(歯車マーク)⇒Project Settings⇒Bitstream画面で行います。この画面を開くと複数のチェックボックスが表示されます。その中の、-bin_file*のチェックボックスにチェックします。

図%%.1
図270.1 bin_fileにチェック

これを行ってから、通常どおりPROGRAM AND DEBUG⇒Generate Bitstreamを実施するとWrite Bitstreamが完了しますが、同時にbinファイルが生成されています。場所はbitファイルと同じところで'プロジェクト/プロジェクト.runs/impl_1/'です。

binファイルの焼きこみ

binファイルができたら、Add Configuration Memoryにより、Add Configuration Memory Device画面が開きます。Flashデバイスの選択が可能なので、この中で"s25fl128sxxxxx0"を選択します。Search窓にs25fl128を入力すれば、候補が3つ現れますがその真ん中です。

図%%.2
図270.2 FLASHデバイスの選択
選択したらOKをクリックします。するとプログラミングが始まり、30秒程でプログラミングが完了します。

実行

リファレンスマニュアルにはJP1でプログラミングモードが決まるとあります。JP1の位置がどちらでもJTAGからは書き込めるとのことです。初期状態はJP1はショートで、SPI-FLASHのモードとなっており、そのまま電源のOFF⇒ONでSpace Invadersが立ち上がりました。

図%%.3
図270.3 JTAG接続なしにSpace Invadersが動作

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posted by sakurai on June 3, 2020 #269

Arty A7-35ボードの購入

DigilentからArty A7-35ボード(魚拓)を購入しました。このボードはUltra96と比べて本体が約半額と安いだけでなく、(弊社開発の)PMOD変換ボードも不要なので、最も安くSpace Invadersを動かすことができます。

必要な周辺

Space Invadersを動作させるには、Artyボードの他に必要なものは以下のとおりです。

Arty A7-35ボードへの移植

除算器を引き算に変換

FPGAの世代や遅延、容量は違うものの、基本的には同様に動作するはずです。ところが、一部動作がおかしかったので修正しました。まず、除算器にバグがあるようなので引き算方式に修正しました。スコアを表示する箇所において、各桁表示のため1000、100、10で割る場合がありますが、1000で割った商を誤ることがあるようです。除算をやめ、引けなくなるまで1000、100、10を引く方式に変更したところ、回路規模も小さくなり正常に動作するようになりました。

FSM clockを1/10に変更

ゲームFSMクロックを10MHzで設計し、96.4%がウェイトだと判明したので、FSMクロックを1MHzに落としました。自機増加音が無視されることがあるので、クロックを落としたのですが、原因は異なっていました(後述)。

60Hzクロックの生成

この修正により、FSMの待ち時間が影響を受けます。1tick=60HzのタイミングをとるのにFSMクロック数を数えていましたが、FSMクロックの周波数が変わるため、外部から60Hzを入力するように修正します。60Hzクロックは、上記FSMクロックである1MHzクロックをバイナリカウンタで\$411B回カウントすることで生成します。さらにFSM内での60Hzクロックとの同期は以下のように行います。countはtick(=16.67msec)の何倍待たせるかを示す引数です。

         repeat(pack(extend(count))) seq
            await(tick == 0);
            await(tick == 1);
         endseq

60Hzクロックの"L"を待ち、もし"L"であれば次に"H"を待つようにします。これにより60Hzの立ち上がりに同期して動作することになります。

このように変更した結果、FSMの処理時間は10倍の約5msecに増加し、60Hzの周期16.67msecの約30%になりました。図269.2の黄線が60Hzクロック、青線がそれによる実行(Hでウエイト中、Lで実行中)を示します。

図%%.8
図269.8 青線が"H"でウェイト中

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posted by sakurai on May 12, 2020 #255

過去ブログの、BSVによるスペースインベーダーの再設計の記事#234~#239, #254をまとめてQiitaに投稿しました。さらに考察を加えています。

BSV (Bluespec SystemVerilog)によるスペースインベーダーの再設計

過去ブログ記事でUltra96ボードを用いた、VerilogHDLによるSpace Invadersゲームの作成を投稿しましたが、その続きです。

図%%.1
図255.1 Qiitaの投稿記事

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BSVの設計トライアル (21)

posted by sakurai on May 11, 2020 #254

ゲームFSMのアルゴリズム

トライアルの結果、BSVによるゲームFSMが完成しました。過去記事のステートベースのサウンドステートマシンと異なり、ステート分解をしていないため、rule文を一切使用していません。全てbsc(Bluespec Compiler)の、StmtFSMライブラリにステート管理を任せました。

基本的にはCで記述するようにゲームが記述できることが分かりました。例えば、弾の移動及び衝突判定、衝突処理(爆発マーク)、爆発マーク消去等のアルゴリズムを考えると、自弾、敵弾共にアルゴリズムは共通で、疑似コードで書けば、

    if (弾爆発タイマ >= 1) {   // 弾爆発中
        弾爆発タイマ++;
        if (弾爆発タイマ == MAX) {
            弾削除;            // 論理的な消去
            弾爆発マーク消去;   // 物理的な消去
            弾爆発タイマ停止;
        }
    } else {
        if (弾が出ていない and 弾生成条件) {
            弾生成処理;
            弾発射音;     // 自弾のみ
        }
        if (弾存在) {
            衝突判定;
            if (対象物) {  // 自弾の場合はインベーダ及びUFO、敵弾の場合は自機
                弾削除;          // 論理的な消去
                対象物ステート <= 爆発;
                対象物爆発タイマ <= 0;
            } else if (上下ハズレ || ベース || 弾) { // 弾:自弾の場合は敵弾、敵弾の場合は自弾
                弾マーク消去;
                弾爆発マーク;
                弾爆発タイマ <= 1;
            } else {        // 衝突していない場合
                弾を進める;
            }
        }
    }

一方、対象物は、

    if (対象物ステート == 爆発) {
        if (対象物爆発タイマ==0) {
            対象物爆発タイマ <= 1;
            対象物爆発音;
            対象物爆発マーク;
        } else {
            対象物爆発タイマ++;
            if (対象物爆発タイマ == MAX) {
               対象物削除;          // 論理的な消去
               対象物爆発マーク消去; // 物理的な消去
            }
        }
    }

のようになりますが、StmtFSMを使うと、このようなシーケンスをクロック毎のステートに分解しなくて記述できます。

インベーダのタイミング

某所で質問があったので、タイミングについて解説します。基本の1 tickは1/60秒で、その中で、インベーダ1匹、敵弾全弾、自機、自弾、UFO、スコア等の処理を行います。以下は実際のBSVのメインループのコードです。

     while (game_flag) seq // メインループ
        for (noy <= 0; noy < `Inv_TateS; noy <= noy + 1) seq  // インベーダの行処理
           for (nox <= 0; nox < `Inv_YokoS; nox <= nox + 1) seq // インベーダの列処理
              if (inv_s[nox][noy]) seq // インベーダが生きてれば
                 ivader;      // インベーダ処理
                 gun;         // 自機処理
                 bullet;      // 自弾処理
                 for (idx <= 0; idx < extend(max); idx <= idx + 1) seq
                    invBullet(idx);  // 敵弾全弾処理
                 endseq
                 ufo;         // UFO処理
                 scores;      // スコア表示
                 endJudge;    // 終了判定
                 counter <= counter + 1;  // tickカウンタ++
                 wait_timer;  // インナーループを1/60secにするウエイト
              endseq
           endseq
        endseq
     endseq
     gameOver;  // ゲームオーバー表示

1tick=1/60secの間に、インベーダ1匹(2ピクセル移動)の処理に対して、自機(1ピクセル移動)、敵弾(1ピクセル移動)、自弾(4ピクセル移動)の処理が行われます。インベーダは初期に55匹存在するので、1/55倍のスピードで始まりますが、最終的に1倍のスピードになります。従って、インベーダを倒すたびにインベーダ全体は速くなり、一方その他の速度は変わらないわけです。

FPGAでの実装では1 tick内にインベーダ全体を移動することは可能ですし、そのような実装も見ますが、ゲーム性が変わってしまいます。具体的には、インベーダ全体の速度が次第に速くならなかったり、後ろのインベーダを撃つことができなくなります。

例えば、インベーダゲームのレインボーは、後ろのインベーダを撃つことにより出現します。インベーダは残りが一匹になると左へは2ピクセルずつ右には3ピクセルずつ移動します。下2段のインベーダは、左右2ピクセルまでの移動では跡が残らない図形になっていますが、3ピクセルだと跡が消えずに残ります。もちろん今回の実装でもレインボーを体験できます。

ゲームFSMの完成

図254.1は、BSVで再設計したゲームFSMにより動作する、インベーダーゲームの動画です。過去記事に書いたように、サウンドが4ch同時発声と高品質になりました。

図%%.1
図254.1 ゲームFSMの完成

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BSVの設計トライアル (20)

posted by sakurai on May 4, 2020 #253

実行結果

次は、ファンクションの中にシーケンスを組み込み、ゲームFSMの設計トライアルを行います。 シーケンスを人手で分解することは、なるべくしたくありません。ファンクションでシーケンスが定義できれば、インベーダ動作、自機動作等のファンクションを作成し、順番にそれらを呼び出せば良いはずです。

import StmtFSM::*;

interface TestFSM_ifc;
   method Action inp(UInt#(8) inx);
endinterface

(* synthesize *)
module mkTestFSM(TestFSM_ifc);

Reg#(UInt#(8)) i <- mkRegU;
Reg#(UInt#(8)) x <- mkRegU;

function Stmt test1;
   return (seq
      $display("%3d 1-1", $time);
      delay(5);
      $display("%3d 1-2", $time);
   endseq);
endfunction

function Stmt test2(UInt#(8) xx);
   return (seq
      $display("%3d 2-1", $time);
      for (i <= 0; i < xx; i <= i + 1)
         $display("%3d 2-loop-%1d", $time, i);
      $display("%3d 2-2", $time);
   endseq);
endfunction

   Stmt main =
   seq
      $display("%3d fsm1.start", $time);
      test1;
      $display("%3d fsm2.start", $time);
      test2(x);
   endseq;

   mkAutoFSM(main);

   method Action inp(UInt#(8) inx);
     x <= inx;
   endmethod

endmodule: mkTestFSM

このためのテストベンチを示します。あえてモジュール外部からループ回数を入れているのは、ループ回数がダイナミックに(実行時に)決定できるかを確認するためです。ファンクションのループを8回呼び出してみます。

import StmtFSM::*;
import TestFSM::*;

(* synthesize, always_ready, always_enabled *)
module mkTb (Empty);
  TestFSM_ifc test <- mkTestFSM();
  Reg#(UInt#(8)) count <- mkReg(8);

   Stmt main =
      seq
         test.inp(count);
         repeat(40) noAction;
      endseq;

      mkAutoFSM(main);
  
endmodule

実行結果を示します。test1の次にtest2が呼び出され、ループが8回回ったことを示しています。

 20 fsm1.start
 30 1-1
 90 1-2
100 fsm2.start
110 2-1
130 2-loop-0
150 2-loop-1
170 2-loop-2
190 2-loop-3
210 2-loop-4
230 2-loop-5
250 2-loop-6
270 2-loop-7
290 2-2

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BSVの設計トライアル (19)

posted by sakurai on May 1, 2020 #252

実行結果

以下に実行結果を示します。

senderFSM    20 FSM started
receiverFSM  20 receiver FSM started
senderFSM    30 Enq 10
senderFSM    40 Enq 20
receiverFSM     40 FIFO popped data 10
senderFSM    50 Enq 30
receiverFSM  70 FIFO popped data 20
receiverFSM  100 FIFO popped data 30

10nsずつ見ていきます。最初の10nsはリセット期間なので、20nsからFSM動作を開始します。

senderFSM    20 FSM started
receiverFSM  20 receiver FSM started

同時にセンダーFSMとレシーバーFSMが動作を開始しました。

senderFSM    30 Enq 10

センダーFSMがデータ10をエンキューしました。FIFOには1段のデータがあるはずです。

senderFSM    40 Enq 20
receiverFSM  40 FIFO popped data 10

レシーバーFSMが10をデキューすると同時にセンダーFSMがデータ20をエンキューしました。FIFOには差し引き1段のデータがあるはずです。

senderFSM    50 Enq 30

センダーFSMのレイテンシは1サイクル10nsなので次々に(FIFO FULLにならない限り)エンキューします。これが最後のデータです。FIFOには2段のデータがあるはずです。

receiverFSM  70 FIFO popped data 20

レシーバーFSMのレイテンシは3サイクル30nsなので、70nsにならないと次データの20がデキューできません。FIFOには1段のデータがあるはずです。

receiverFSM  100 FIFO popped data 30

レイテンシである3サイクル後にレシーバーFSMがデキューしました。FIFOには0段のデータがあるはずです。つまりFIFOは空になったはずです。

波形で見たほうが判りやすいです。エンキュー動作(オレンジの信号)はFIFOがフルでない限り1サイクルで行われるのに対してデキュー動作(ブルーの信号)は3サイクル毎に実行されています。

図%%.1
図252.1 センダーFSMとレシーバーFSM

以上はデータを3つエンキューした場合ですが、ここで4つ目をエンキューすると動作が異なります。図252.2に示すように、3つまではレイテンシ1でエンキューできていましたが、3つめでFIFO FULLとなり、その後はレシーバーFSMのレイテンシが見えてきます。つまりエンキュー動作もレイテンシが3となります。

図%%.2
図252.2 センダーFSMとレシーバーFSM
図252.1でもFIFOがFULLになっているのですが、その時にエンキューが無いのでレシーバー側のレイテンシが見えませんでした。図252.2ではFIFOがFULL状態でエンキューしようとして待たされています。FIFOは2段だということが分かります。

実は、FIFO段数もコントロール可能であり、任意の段数のFIFOを作成するにはmkSizedFIFOFを使用します。

      FIFOF#(Bit#(8)) fifo <- mkSizedFIFOF(2);

mkSizedFIFOFの引数サイズを2とすると、上記と同じ動作を行います。サイズを1にすると、デキューするまでエンキューが待たされる、図252.3のような動作となります。

図%%.3
図252.3  FIFOが1段の場合の動作
bscは良くできていて、FIFOフルの場合等、FIFO がデータを受け取れない場合には自動的にエンキュー動作が抑止されます。普通ならFULLで無い条件でエンキュー動作を行う記述を書かなければいけませんが、その必要がありません。これは自動ハンドシェーク機能と呼ばれます。

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BSVの設計トライアル (18)

posted by sakurai on April 30, 2020 #251

StmtFSM

前稿ではBSVにより、ステートベースのFSMを設計しました。ステートベースとは、シーケンスを人手でステートに分解し、一つ一つのステートに対してルールを書くもので、基本的にはverilogと同程度の工数がかかります。一方、BSVにはステートマシンを効率的に設計できる、StmtFSMというライブラリが存在します。

検証用FSM

このライブラリの検証用のために検証用FSMを作成します。検証用FSMは2つのコンカレントなFSMを持ち、一方のSenderFSMがFIFOにデータを詰め(エンキュー)、他方のReceiverFSMがFIFOからデータを取り出す(デキュー)ものとします。コンカレントであり、エンキューとデキューは同時に起こります。

図%%.1
図251.1 センダーFSMとレシーバーFSM
FSMはそれぞれ別に書き、その内部ではステートメントはシーケンシャルに実行されます。このシーケンシャルの動きはBSCにより管理され、隠れた(設計者から見えない)ステートが割り付けられます。以下にBSVのコードを示します。
package Tb;
import StmtFSM::*;
import FIFOF::*;

(* synthesize *)
module mkTb (Empty);
   FIFOF#(Bit#(8)) fifo <- mkFIFOF;

   Stmt sender =
      seq
         $display("senderFSM  %4d FSM started", $time);
         action
            $display("senderFSM  %4d Enq 10", $time);
            fifo.enq(10);
         endaction
         action
            $display("senderFSM  %4d Enq 20", $time);
            fifo.enq(20);
         endaction
         action
            $display("senderFSM  %4d Enq 30", $time);
            fifo.enq(30);
         endaction
         repeat (8) noAction;
      endseq;
      FSM senderFSM <- mkFSM(sender);

      Stmt receiver =
         seq
            $display("receiverFSM %4d receiver FSM started", $time);
            while(True) seq
               action
                  $display("receiverFSM %4d FIFO popped data", $time, fifo.first());
                  fifo.deq();
               endaction
               repeat (2) noAction;
            endseq
         endseq;
         FSM receiverFSM <- mkFSM(receiver);

      rule startit;
         senderFSM.start();
         receiverFSM.start();
      endrule

      rule finish (senderFSM.done() && !receiverFSM.done());
         $finish;
      endrule
   endmodule
endpackage

コードに示すように、エンキューはレイテンシ1で実行され、デキューはレイテンシ3で実行されます。各々のFSMは、エンキューデータ、デキューデータをそれぞれ表示します。


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BSVの設計トライアル (17)

posted by sakurai on April 29, 2020 #250

レジスタ配列によるリターンスタック

前稿のリターンスタックrsはベクター配列で構成しましたが、最初に戻りレジスタ配列を試してみます。当初から配列で試したところ、うまく行っていませんでしたが、成功したのでその方法を記述します。まずリターンスタックrsを配列宣言します。

       // return stack
       Reg#(State_t) rs[3];

次に、リターンスタックrsを3段レジスタによりインスタンシエートします。これが無かったため、今まで動作しませんでした。ちなみにverilogでは宣言しただけで使用できますが、BSVでは宣言し、次にインスタンシエートが必要です。

       for (int i = 0; i < 3; i = i + 1)
          rs[i] <- mkRegU;

マクロ命令定義はベクター配列と同じ配列によるアクセス法を用います。

`define call(SUB)        `_pushNext; state <= State_t {func:SUB, step:S0}
`define _pushNext        rs[sp] <= State_t {func:state.func, step:nextStep()}; sp <= sp + 1
`define return           state <= rs[sp-1]; sp <= sp - 1
`define next             state.step <= nextStep()

説明は表248.1と同一です。これを用いて、前稿の検証FSMを実行してみます。

$ bsc -sim -u TestFSM4.bsv
checking package dependencies
compiling TestFSM3.bsv
code generation for mkTestFSM starts
Elaborated module file created: mkTestFSM.ba
All packages are up to date.
$ bsc -sim -e mkTestFSM -o mkTestFSM
Bluesim object created: mkTestFSM.{h,o}
Bluesim object created: model_mkTestFSM.{h,o}
Simulation shared library created: mkTestFSM.so
Simulation executable created: mkTestFSM
$ ./mkTestFSM -m 15 -V dump.vcd | tee result
L1 S0
L1 S1
 L2 S0
 L2 S1
 L2 S2
  L3 S0
  L3 S1
   L4 S0
   L4 S1
  L3 S2
 L2 S3
 L2 S4
L1 S2
L1 S2
$

正しく実行することが検証できました。波形を図250.1に示します。内部信号を見ると、ベクター配列と同様、rs_0, rs_1, rs_2という3個のレジスタインスタンスが生成されています。

図%%.1
図250.1 検証用FSMのBsim波形(レジスタ配列使用)

合成結果

Vivadoによる合成結果は21 LUTのサイズでした。レジスタ配列とベクター配列は同様のサイズであったため、今後は最も素直なこの方式を採用します。

ソフトウェアの場合は高速なレジスタと低速なメモリがあるため、リターンレジスタ等の実装が必要ですが、FSMではよほどのことが無い限り全てレジスタなので、リターンレジスタを使用しない、この実装を基本的に使用していきます。


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BSVの設計トライアル (16)

posted by sakurai on April 28, 2020 #249

ベクター配列によるリターンスタック

前稿までのリターンスタックrsはレジスタファイルで構成しましたが、別法のベクター配列を試してみます。 まずベクターをインポートします。

import Vector::*;

次に、リターンスタックrsを3段インスタンシエートします。

   // return stack
   Vector#(3, Reg#(State_t)) rs <- replicateM(mkRegU);

さらにマクロ命令定義を書き換えます。ベクター配列はrs[sp]として扱えるので、直感的に分かりやすいです。

`define call(SUB)          `_pushNext; state <= State_t {func:SUB, step:S0}
`define _pushNext          rs[sp] <= State_t {func:state.func, step:nextStep()}; sp <= sp + 1
`define return             state <= rs[sp-1]; sp <= sp - 1
`define next               state.step <= nextStep()

説明は表248.1と同一です。これを用いて、前稿の検証FSMを実行してみます。

$ bsc -sim -u TestFSM3.bsv
checking package dependencies
compiling TestFSM3.bsv
code generation for mkTestFSM starts
Elaborated module file created: mkTestFSM.ba
All packages are up to date.
$ bsc -sim -e mkTestFSM -o mkTestFSM
Bluesim object created: mkTestFSM.{h,o}
Bluesim object created: model_mkTestFSM.{h,o}
Simulation shared library created: mkTestFSM.so
Simulation executable created: mkTestFSM
$ ./mkTestFSM -m 15 -V dump.vcd | tee result
L1 S0
L1 S1
 L2 S0
 L2 S1
 L2 S2
  L3 S0
  L3 S1
   L4 S0
   L4 S1
  L3 S2
 L2 S3
 L2 S4
L1 S2
L1 S2
$

正しく実行することが検証できました。波形を図249.1に示します。内部信号を見ると、rs_0, rs_1, rs_2という3個のレジスタインスタンスが生成されています。これが3段のリターンスタックを構成しています。

図%%.1
図249.1 検証用FSMのBsim波形(ベクター配列使用)

合成結果

Vivadoによる合成結果は21 LUTのサイズでした。レジスタファイルよりもベクター配列のほうが、わずかに小さくなることが分かりました。レジスタファイルは下位モジュールのレジスタファイルをインスタンスする必要がありますが、ベクター配列は上記のようにレジスタが展開されるだけです。従って、インタフェースが簡略化されるため、小さくなると考えられます。


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BSVの設計トライアル (15)

posted by sakurai on April 27, 2020 #248

マクロ命令定義

以上の議論から再定義したマクロ命令のコードです。

`define call(SUB)           `_pushNext; state <= State_t {func:SUB, step:S0}
`define _pushNext           rs.upd(sp, State_t {func:state.func, step:nextStep()}); sp <= sp + 1
`define pushCall(FUNC,SUB)  _pushFunc(FUNC); state <= State_t {func:SUB, step:S0}
`define _pushFunc(FUNC)     rs.upd(sp, State_t {func:FUNC, step:S0}); sp <= sp + 1
`define nextFunc            state <= State_t {func:nextFunc(), step:S0}
`define return              state <= rs.sub(sp-1); sp <= sp - 1
`define next                state.step <= nextStep()

今回、アプリ(インベーダサウンドFSM)の必要上pushCallを定義しています。これは、call命令の一般化であり、次ステートではなく任意のファンクションに戻るコールを実装するものです。以上のマクロ命令の説明を表248.1に示します。

表248.1 マクロ命令の説明
マクロ命令名 説明
call(SUB) サブルーチンコールです。次ステートをプッシュして、サブルーチンSUBをコールします。
_pushNext callに使用されており、次のステートをプッシュする内部マクロ命令です。nextStep()関数を使用しています。ユーザは陽に使う必要は無いため、先頭にアンダースコアを付けています。
pushCall(FUNC,SUB) サブルーチンコールです。戻り先ファンクションFUNCをプッシュして、サブルーチンSUBをコールします。戻り先は指定されたファンクションFUNCの先頭S0となります。
_pushFunc(FUNC) pushCallに使用されており、戻り先ファンクションFUNCをプッシュする内部マクロ命令です。ユーザは陽に使う必要は無いため、先頭にアンダースコアを付けています。
nextFunc 次のファンクションに進めるためのマクロ命令です。nextFunc()関数を使用しています。
return 呼び出し元(の次のステート)に戻るためのマクロ命令です。
next 次のステートに進めるためのマクロ命令です。nextStep()関数を使用しています。

合成結果

Vivadoによる合成結果は22 LUTのサイズでした。


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