Posts Issued in January, 2022

Detectabilityの違い (2)

posted by sakurai on January 31, 2022 #449

ここまでRAMS 2020論文と2022論文をレビューしてきて、ポイントは1st SMと2nd SMのdetectabilityの違いで結果が変わることがわかります。それを以降でまとめます。

RAMS 2020論文

以下の表はRAMS 2020論文において、IFのfaultがSMにより検出されるかどうかを示しています。なお、1st SMのfaultは常にdetectableです。その時のDCは$K_\text{SM,MPF}$。

表449.1 RAMS 2020のDetectabilityの表
IF non-detectable (IFU) Partialy detectable (IFR)
1st SM IF non-detectable ($K_\text{IF,det}=0$)
2nd SM IF non-detectable ($K_\text{IF,MPF}=0$) IF detectable ($K_\text{IF,MPF}>0$)
PMHF equ. RAMS 2020 $(1-K_\text{IF,RF})\lambda_\text{IF}+2K_\text{IF,RF}\alpha$
(19), (221.9), (447.2)
$(1-K_\text{IF,RF})\lambda_\text{IF}+2K_\text{IF,RF}\beta$
(22), (222.9), (447.1)

$K_\text{IF,det}=0$(かつ$K_\text{IF,RF}=1$)のみなので、冗長時のみを考えておりあまり良くありません。$K_\text{IF,det}=1$も考える必要があります。

RAMS 2022論文

さらにRAMS 2022では$K_\text{IF,det}=1$を検討しました。特にMPF detectedを従来のLFと同一視するのではなく、SFとしました。そのためPMHF結果式も変わってきます。

ここで、1st SMがIF detectableであれば、そのDC(カバレージ)は$K_\text{IF,RF}$であり、一般に2nd SMまでは設置しないと思われます。逆に言えば2nd SMが必要なのは、1st SMのDCがゼロの時、つまりIF non-detectable ($K_\text{IF,det}=0)$であり、すなわち1st SMが主機能代替機能を持ついわゆる冗長の場合となります。

表449.2 Detectabilityの表($K_\text{IF,det}=1$を追加)
IF non-detectable (IFU) Partialy detectable (IFR) Fully detectable
1st SM IF non-detectable ($K_\text{IF,det}=0$) IF detectable ($K_\text{IF,det}=1$)
2nd SM IF non-detectable ($K_\text{IF,MPF}=0$) IF detectable ($K_\text{IF,MPF}>0$) -

次に1st SMがIF non-detectable ($K_\text{IF,MPF}=0$)であれば、2nd SMはIFフォールトのレイテント防止のため、なにがしかのDC(検出率、カバレージ)を持つと考えられます。上記表はそのDCがゼロの場合はIFUモデル、ゼロでない場合はIFRモデルとしましたが、そのDCを$K_\text{IF,MPF}$で表し、ゼロの場合と非ゼロの場合をまとめ、かつRAMS 2020及び2022のPMHF式を追加すれば、以下の表となります。

表449.3 DetectabilityとPMHF式の表
Partialy detectable (IFU/IFR) Fully detectable
1st SM IF non-detectable ($K_\text{IF,det}=0$) IF detectable ($K_\text{IF,det}=1$)
2nd SM Partialy detectable ($K_\text{IF,MPF}>=0$) -
PMHF equ. RAMS 2020 $(1-K_\text{IF,RF})\lambda_\text{IF}+2K_\text{IF,RF}\beta$ $(1-K_\text{IF,RF})\lambda_\text{IF}+\color{red}{2}K_\text{IF,RF}\alpha$
PMHF equ. RAMS 2022 $(1-K_\text{IF,RF})\lambda_\text{IF}+K_\text{IF,RF}\alpha$

  • RAMS 2020では$K_\text{IF,det}=0$のみを検討したため、$K_\text{IF,det}=1$は薄墨色としています。
  • 1st SMがfully detectable ($K_\text{IF,det}=1$)において、RAMS 2022のPMHF値のDPF部分が$\frac{1}{2}$になっているのは、RAMS 2022においてMPF detectedの定義を変え、レイテントではなく完全にリペアラブルとしたためです。SMがレイテントになる部分はそのままですが、IFがレイテントになる部分が全て修理されるとしたため、半分になっています。

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Detectabilityの違い

posted by sakurai on January 26, 2022 #448

$K_\text{IF,det}$の意味

ここで、$K_\text{IF,det}$の意味を考えてみます。

  • $K_\text{IF,det}=0$の時
    1st SMがIFのフォールトをVSGから$K_\text{IF,RF}$分だけpreventしているにも関わらず、1st SMの機能はIFのフォールトを検出しない場合。すなわち、1st SMはIF代替機能を持つはずであり、これは冗長構成と呼ばれる。冗長の場合は$K_\text{IF,RF}=1$となる。従って、$K_\text{IF,det}=0$かつ$K_\text{IF,RF}=1$。
    規格1st editionではこの場合は考慮されていなかったが、2nd editionで考慮されることになった。

  • $K_\text{IF,det}=1$の時
    1st SMがIFのフォールトをVSGから$K_\text{IF,RF}$分だけpreventしており、1st SMの機能はIFのフォールトを検出する場合。その検出率は$K_\text{IF,RF}$であり、すなわち、1st SMはIF代替機能を持たない。
    1st SMがフォールト検出機能を持つため、IFの2nd SMは不要($K_\text{IF,MPF}=0$)。一方、1st SMに対しては2nd SMが必要。これは規格の構造図、すなわち「1st SMがSM1であり2nd SMがSM2である図」に一致する。


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posted by sakurai on January 12, 2022 #447

RAMS 2020

次にRAMS 2020でのPMHF式を示します。これは規格1st editionのIFUモデルをIFRモデルに拡張したものでした。ただし、表368.1で示せば、SM1 undetectableのみを扱います。従って、RAMS 2022で言う$K_\text{IF,det}=0$の時の式となります。

$$ \begin{eqnarray} \require{cancel} M_\text{PMHF,RAMS2020}&=&M_\text{PMHF,IFR}\\ &=&M_\text{PMHF,RAMS 2022}\lvert_{K_\text{IF,det}=0}\\ &=&(1-K_\text{IF,RF})\lambda_\text{IF}+2K_\mathrm{IF,RF}\beta \end{eqnarray}\tag{447.1} $$ ただし、 $$ \begin{cases} \begin{eqnarray} \alpha&:=&\frac{1}{2}\lambda_{\mathrm{IF}}\lambda_{\mathrm{SM}}[(1-K_{\mathrm{SM,MPF}})T_\text{lifetime}+K_{\mathrm{SM,MPF}}\tau],\\ \beta&:=&\frac{1}{2}\lambda_{\mathrm{IF}}\lambda_{\mathrm{SM}}[(1-K_{\mathrm{MPF}})T_\text{lifetime}+K_{\mathrm{MPF}}\tau],\\ K_{\mathrm{MPF}}&:=&K_{\mathrm{IF,MPF}}+K_{\mathrm{SM,MPF}}-K_{\mathrm{IF,MPF}}K_{\mathrm{SM,MPF}} \end{eqnarray} \end{cases} $$ これは以前の式(222.9)と一致します。

一方、規格1st editionの式はIFUモデルであり、(447.1)において、$K_{\mathrm{IF,MPF}}=0$とおけば、$K_{\mathrm{MPF}}=K_\mathrm{SM,MPF}$であるから、$\beta=\alpha$となり、

$$ \begin{eqnarray} \require{cancel} M_\text{PMHF,1st edition}&=&M_\text{PMHF,IFU}\\ &=&M_\text{PMHF,RAMS 2022}\lvert_{K_\text{IF,det}=0,K_\text{IF,MPF}=0}\\ &=&(1-K_\text{IF,RF})\lambda_\text{IF}+2K_\mathrm{IF,RF}\alpha\\ \end{eqnarray}\tag{447.2} $$ となります。これは2020論文(19)ですが、規格1st editionの第3の式に相当し、(221.9)と同一です。

RAMS 2020では$K_\text{IF,det}=0$の時しか検討しませんでしたが、RAMS 2022のベースである表375.1及びそれに基づくPMHF計算を用いて、$K_\text{IF,det}=1$の時も併せた式を示せば、 $$ \bbox[#ccffff,2pt]{M_\text{PMHF,RAMS2020}=(1-K_\text{IF,RF})\lambda_\text{IF}+ \color{red}{2}K_\text{IF,RF}K_\text{IF,det}\alpha+2K_\text{IF,RF}(1-K_\text{IF,det})\beta}\\ \tag{447.3} $$ となります。RAMS 2022との相違は(447.3)の係数2の違いとなります。


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RAMS 2020とRAMS 2022の違い

posted by sakurai on January 10, 2022 #446

さて、RAMS 2022にRAMS 2020で発表したPMHF式を修正した式を投稿し採択されましたが、ここで両方の式をまとめておきます。便宜上RAMS 2022の式はより広い範囲をカバーするため、RAMS 2022の式から先に説明します。

RAMS 2022

RAMS 2022では、後述のRAMS 2020の式を拡張しました。具体的にはISPCE 2017で筆者が導入した$K_\text{IF,det}$を再び導入したものです。$K_\text{IF,det}$の意味は、1st SMのIFに対する機能であるVSG抑止能力に対する検出能力の比であり、以下のように条件付き確率で表される係数です。

$$ K_\text{IF,det}=\Pr\{\text{IF detected}\ |\ \text{IF prevented}\} $$

しかしながらこの条件付き確率はSMのアーキテクチャにより一意に決定され、 $$ K_\text{IF,det}= \begin{cases} \begin{eqnarray} &0&\ \ \text{if subsystem is redundant}\\ &1&\ \ \text{if subsystem is nonredundant} \end{eqnarray} \end{cases} $$ のように2値をとります。

この$K_\text{IF,det}$及び、$K_\text{IF,RF}$, $K_\text{IF,MPF}$を加えたIFに関するKパラメータ及び、$K_\text{SM,MPF}$のSMに関するKパラメータによりフォールトを分類し、以前示した表368.1を導出しています。

そして、$K_\text{IF,det}=1$の場合にMPF detectedをレイテントフォールト扱いとしないとして確率微分方程式を立て、それを解いています。その結果を示せば、 $$ \require{color} \bbox[#ccffff,2pt]{M_\text{PMHF,RAMS2022}=(1-K_\text{IF,RF})\lambda_\text{IF}+K_\text{IF,RF}K_\text{IF,det}\alpha+2K_\text{IF,RF}(1-K_\text{IF,det})\beta\\ } \tag{446.1} $$ ただし、 $$ \begin{cases} \begin{eqnarray} \alpha&:=&\frac{1}{2}\lambda_{\mathrm{IF}}\lambda_{\mathrm{SM}}[(1-K_{\mathrm{SM,MPF}})T_\text{lifetime}+K_{\mathrm{SM,MPF}}\tau],\\ \beta&:=&\frac{1}{2}\lambda_{\mathrm{IF}}\lambda_{\mathrm{SM}}[(1-K_{\mathrm{MPF}})T_\text{lifetime}+K_{\mathrm{MPF}}\tau],\\ K_{\mathrm{MPF}}&:=&K_{\mathrm{IF,MPF}}+K_{\mathrm{SM,MPF}}-K_{\mathrm{IF,MPF}}K_{\mathrm{SM,MPF}} \end{eqnarray} \end{cases} $$

これにおいて、まずnon redundantの場合である$K_\text{IF,det}=1$とすれば、

$$ \begin{eqnarray} M_\text{PMHF,NRD}&=&M_\text{PMHF,RAMS 2022}\lvert_{K_\text{IF,det}=1}\\ &=&(1-K_\text{IF,RF})\lambda_\text{IF}+K_\text{IF,RF}\alpha \end{eqnarray}\tag{446.2} $$ これは(374.1)と同一です。

他方、redundantの場合である、$K_\text{IF,det}=0$かつ$K_\text{IF,RF}=1$とすれば、 $$ \begin{eqnarray} M_\text{PMHF,RD}&=&M_\text{PMHF,RAMS 2022}\lvert_{K_\text{IF,det}=0,K_\text{IF,RF}=1}\\ &=&2\beta \end{eqnarray}\tag{446.3} $$ これは(374.2)と同一です。

また、IFRモデルでは、 $$ \begin{eqnarray} M_\text{PMHF,IFR}&=&M_\text{PMHF,RAMS 2022}\lvert_{K_\text{IF,det}=0}\\ &=&(1-K_\text{IF,RF})\lambda_\text{IF}+2K_\text{IF,RF}\beta\\ \end{eqnarray}\tag{446.4} $$ これは2020論文(22)、(108.2)及び(222.9)と同一です。

さらにIFUモデルでは、 $$ \begin{eqnarray} M_\text{PMHF,IFU}&=&M_\text{PMHF,RAMS 2022}\lvert_{K_\text{IF,det}=0,K_\text{IF,MPF}=0}\\ &=&(1-K_\text{IF,RF})\lambda_\text{IF}+2K_\text{IF,RF}\alpha \end{eqnarray}\tag{446.5} $$ これは2020論文(19)、(221.9)と同一です。


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