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PUA関連論文Famfulik2020 |
PUAに関する論文が複数出ているので、その内容を確認します。
J. Famfulik, M. Richtar et al, "Application of hardware reliability calculation procedures according to ISO 26262 standard," Qual. Rel. Eng. Int. 2020, pp. 1-15, doi: 10.1002/qre.2625
以降翻訳はDeepLによるものです。まずアブストラクトを示します。
自動車産業における機能安全評価のための規格ISO 26262(2018年版)第2版では、ランダムハードウェア故障の確率的メトリック(PMHF)を使用したハードウェア評価が要求されている。この規格では、フォールトツリー解析(FTA)の活用を強く推奨しているが、具体的な計算例は示されていない。そこで、本稿では、電子システムのさまざまなハードウェア・アーキテクチャに対する数式の導出と説明を含む計算手順について説明する。記述されている数式は、多重故障の影響やelf-testの影響を考慮しているが、数式は比較的単純である。この単純さにより、ハードウェア設計の頻繁な変更が予想されるハードウェア開発の初期段階で使用することができる。したがって、ケーススタディを添付したこの論文は、科学者だけでなく、自動車産業における重要な安全関連電子システムの開発者を対象としている。
PMHFの数学的な定義を平均的な車両寿命間の不信頼度の時間平均とした論文の(3)式は
$$ P_\text{MHF}=\frac{F_\text{AVG}}{t} $$ と書かれています。改善点としては細かいことを言えば、PMHFの表記は規格Part 10に従えば$P_\text{MHF}$ではなく$M_\text{PMHF}$です。またPMHFは車両寿命間の時間平均故障確率であるため、分母は$t$ではなく、$T_\text{lifetime}$(論文中では大文字の$T$)です。
従って論文の(3)式は正しくは $$ M_\text{PMHF}=\frac{F_\text{AVG}}{T} $$
とすべきです。ここで問題は$F_\text{AVG}$は不信頼度の平均です。ところがこれはおかしく、$T$で割っていることが車両寿命間の時間平均を表すので、分子は積分値であるべきです。そのため筆者の平均値の認識には改善点があると言うべきです。これは以下の式にも認めることができます。論文の(5)式は
$$ F(t)=\lambda t $$ これは不信頼度の式で、非修理系においては正しい式です。ところが問題は次の$F_\text{AVG}$で、論文の(6)式は
$$ F_\text{AVG}=\frac{1}{t}\int_0^t F(t)dt $$ つまり、(6)式においてF(t)を平均化した後さらに(3)式において$T$で割るという2重に平均を取ることを行っています。
本来は、我々の記法に従えば、 $$ M_\text{PMHF}=Q_\text{AVG}=\frac{Q(T)}{T} =\frac{1}{T}\int_0^T q(t)dt $$ とするのが正しい方法です。ここで$Q(t)$はPUA, $q(t)$はPUDです。
以降では本論文がPMHFをどのように導出するかを見ていきます。
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