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PMHF式関連論文Rogova2019 (2)

posted by sakurai on April 10, 2024 #773

不当な仮定1

正しく引用されたことは良かったのですが、本論文$\dagger$では弊社の式に対して新たに以下の(12)という仮定を加えており、残念なことにこれでは一般性を失う不要な仮定です。

$$ \lambda_{m,MPF}=\lambda_{sm,MPF}=\lambda_{MPF}=\lambda_{D}\tag{12} $$

この(12)の意味するところは"m"も"sm"も同じ故障率を持つこと、すなわち対称冗長を意味しており、これは特殊な場合に限られます。

反例を示すと、例えば過去記事の図70.1に示すヘッドライト装置の実例のように、

図70.1
図70.1 非対称冗長の例

メカスイッチからのON信号をメインのチャネルではマイコンで点灯し、バックアップチャネルではトランジスタで点灯するような非対称冗長には(12)は当てはまりません。以下のように"m"系の故障率のほうが"sm"系よりも巨大になるためです。 $$ \lambda_{m,MPF}\gg\lambda_{sm,MPF} $$ さらに言えば、このような非対称冗長は、特にASIL分解においては、規格ではむしろ推奨されています。マイコンに低いASILを割り当てておき、複雑なシステムの開発を容易にできる一方、壊れにくい単純なトランジスタで元の安全要求を保証できるためです。

不当な仮定2

さらに別の仮定の問題があります。弊社の式における2nd SMの検査周期である$\tau$について、$\tau=T_{lifetime}$と仮定してしまったことです。これは2nd SMが存在しないか、あるいはDCがゼロであることを意味します。これは誤った仮定です。

なぜそうしたかはその箇所には書かれていませんが、アンリペアラブルという仮定を置いているのが後からわかります。


$\dagger$E. Rogova, C. Nowak, M. Ramold, et al., "Comparison of Analytical Formulas of PFH and PMHF Calculation for M-out-of-N Redundancy Architecture," Europ. Safe. Reliab. Conf.,, pp.1-5, 2019


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