定期検査・修理説明図
以下は過去記事#347に掲載した図です。
図347.1 定期検査と時刻$t$の関係
ISO 26262の前提は定期検査・修理です。具体的には検査周期を$\tau$として、時刻$\tau_i=i\tau (i=1, 2, ..., n, n=\lfloor\frac{t}{\tau}\rfloor)$において検査・修理が行われます。
1. 定期修理
過去記事で分析したように、稼働度$A_\text{SM}(t)$の修理を含めた式に従えば、SMの不稼働度$Q_\text{SM}(t)$は、修理密度を$m(x)$として、(658.1)となります。
$$
\require{color}
\definecolor{pink}{rgb}{1.0,0.8,1.0}
\begin{eqnarray}
Q_\text{SM}(t)&=&F_\text{SM}(t)-\int_0^t m(x)\colorbox{pink}{$R_\text{SM}(t-x)$}dx\\
&=&F_\text{SM}(t)-KF_\text{SM}(\tau)\sum_{i=1}^n R_\text{SM}(t-i\tau)\\
&=&F_\text{SM}(t)-K(1-R_\text{SM}(\tau))\sum_{i=1}^n R_\text{SM}(t-i\tau)\\
&=&F_\text{SM}(t)-K\sum_{i=1}^n R_\text{SM}(t-i\tau)+K\sum_{i=1}^n R_\text{SM}(t-(i-1)\tau)\\
&=&F_\text{SM}(t)-KR_\text{SM}(t-n\tau)+KR_\text{SM}(t)\\
&=&\img[-1.35em]{/images/withinseminar.png}
\end{eqnarray}
\tag{658.1}
$$
ただし、$K$は各検査におけるフォールト検出率、$u:=t-n\tau$です。
(658.1)のピンクで示したように、例えば区間$[(i-1)i\tau, i\tau)$においてフォールトが発生し、その区間末で修理された場合、その後$t$までフォールトしないという前提の式となっています。これは、その後の区間$[(j-1)i\tau, j\tau), i<j$において再度フォールトする場合を含めると、次にその区間$[(j-1)i\tau, j\tau)$でのフォールトを考える場合にダブルカウントになるためです。
ここで(658.1)を書き直し以下の式を考えます。
$$
Q_\text{SM}(t)=F_\text{SM}(t)-K_\text{SM,MPF}\left[F_\text{SM}(t)-F_\text{SM}(u)\right]
\tag{658.2}
$$
不稼働度は基本的には不信頼度から$t$までに検出(=修理)された分、すなわち$K_\text{SM,MPF}$がかかる項を引きます。さらに修理分のうち、$u:=t-n\tau$の期間のフォールトを引き戻し、その部分は修理されないことを表しています。
2. 1回修理
一方、本来は定期検査・修理が原則なのですが、1回修理としての考え方は、次の事実を利用します。
最近の検査時刻による修理:
・ 検出可能フォールトの場合、$\tau_n$での検査時には、それまでの故障(もしあれば)が検出・修理されます。したがって、$\tau_n$以前の検査時刻での故障の有無は、時刻$t$における不稼働度に影響しません。
・ 検出不可フォールトの場合、修理は行われないため、修理回数は不稼働度に影響しません。
次回検査までの期間:
時刻$t$における不稼働度を考える際、$\tau_n$以降、次回の検査$\tau_{n+1}$までの期間に生じる故障が関連します。この期間内での故障の有無、および$\tau_n$での検出の可否が、時刻$t$における不稼働度に影響します。
従って、細々と修理するのとまとめて一遍に修理するのでは効果が同じです。不稼働度の求め方は2種類考案したので、それらを以下に示します。
2.1 検査可否と検査前後のフォールト確率
過去記事で分析したように、検査の可否により、事象を分類します。
- 検査可であるフォールトはどこで起きても、次の検査時点である$\tau_i$で全て修理されるため、$\tau_n$でも全て修理されています。従って$\tau_n$から$t$までのフォールトのみが問題となります。
- 検査不可であるフォールトは、2nd SMが無いことと等価であるため、全期間である$0$から$t$までのフォールトが問題となります。
これにより(658.3)が得られます。
$$
\begin{eqnarray}
Q_\text{SM}(t)&=&
\Pr\{
(\text{fault detected at }\tau_n\ \cap\ \text{SM receives a fault in }(\tau_n, t])
\ \cup\\
&&\ \ \ \ (\overline{\text{fault detected at }\tau_n} \cap \text{SM receives a fault in }(0, t])
\}\\
&=&\img[-1.35em]{/images/withinseminar.png}
\end{eqnarray}
\tag{658.3}
$$
2.2 検査検査前後のフォールト確率と検査可否の全ての組み合わせ
過去記事で分析したように、$\tau_n$での検出可否、$\tau_n$前と$\tau_n$後のフォールト生起有無の8通りの組み合わせを全て数え上げ、不稼働になる条件を洗い出します。
これにより(658.4)が得られます。
$$
\begin{eqnarray}
Q_\text{SM}(t)&=&\Pr\{(\text{fault detected at }\tau_n\ \cap\\
&&\ \ \ \ [\text{SM receives a fault in }(0, \tau_n]\cap\ \text{SM receives a fault in }(\tau_n, t]\ \cup\\
&&\ \ \ \ \overline{\text{SM receives a fault in }(0, \tau_n]}\cap\ \text{SM receives a fault in }(\tau_n, t]])\ \cup\\
&&(\overline{\text{fault detected at }\tau_n} \cap \\
&&\ \ \ \ [\text{SM receives a fault in }(0, \tau_n]\cap\ \text{SM receives a fault in }(\tau_n, t]\ \cup\\
&&\ \ \ \ \overline{\text{SM receives a fault in }(0, \tau_n]}\cap\ \text{SM receives a fault in }(\tau_n, t]\ \cup\\
&&\ \ \ \ \text{SM receives a fault in }(0, \tau_n]\cap\ \overline{\text{SM receives a fault in }(\tau_n, t]}])\}\\
&=&\img[-1.35em]{/images/withinseminar.png}
\end{eqnarray}
\tag{658.4}
$$
3. 不稼働度$Q(t)$のメリット
規格第2版ではPMHF式を導出する際に、2nd SMがドライバーへの通知可否により場合分けを行っています。ところがこの不稼働度は$\img[-0.9em]{/images/withinseminar.png}$
なお、本稿はRAMS 2025に投稿予定のため一部を秘匿しています。
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