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確率論 (11) |
今までは、スタティックな確率事象を議論してきましたが、いよいよ時間によって変化する確率事象、つまり確率過程について説明していきます。
確率過程
確率空間$(\Omega, \mathcal{F}, P)$、可測空間$(\mathcal{S}, \Sigma)$、全順序集合$T$が与えられ、時刻$t\in T$で添え字付けられる状態空間$\mathcal{S}$に値をとる確率過程$X_t$とは、 $$ X:\Omega\times T\to\mathcal{S} $$ であり、全ての$t\in T$に対して$X_t$が$\Omega$上の確率変数となるものをいう。
確率過程は時間的に変化する確率変数であり、「すべての$t\in T$に対して」というのは$\omega\in\Omega$を固定するという意味です。これはサンプルパスと言われます。一方で$t$を固定すれば、ある時刻の確率変数$X(\omega)$が得られます。従って、確率過程とは確率変数の時間変化に他なりません。
ただし、上の定義内の直積$\times$は、以下のような定義です。
$$ \Omega\times T=\{(\omega, t)\mid \omega\in\Omega\land t\in T\} $$
すなわち、2つの集合からひとつずつ取り出してペアとした集合です。
フィルトレーション
可測空間$(\Omega, \mathcal{F})$において、$t\in T$をパラメータとする$\mathcal{F}$の部分$\sigma$加法族の族$\{\mathcal{F}_t\mid t\in T\}$が$0\leq s\leq t\Longrightarrow\mathcal{F}_s\subseteq\mathcal{F}_t$を満たすとき、増大情報系(フィルトレーション)という。
適合
フィルトレーション$\{\mathcal{F}_t\}$が与えられた確率空間$(\Omega, \mathcal{F}, P)$上の確率過程$\{X_t(\omega)\}$が任意の$t\in T$に対して$X_t$が$\mathcal{F}_t$可測になるとき、フィルトレーション$\{\mathcal{F}_t\}$に適合するという。
従って、$X_t$が$\{\mathcal{F}_t\}$に適合している場合は、ある時刻での$X_t$が時刻$t$までに観測しうる情報で表せることを意味しています。これを因果的(causal)といい、そのような空間をフィルター付き確率空間$(\Omega, \mathcal{F}, P, \{\mathcal{F}_t\})$と呼びます。
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