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確率論 (2) |
測度
次は測度です。
可測空間$(S,\mathfrak{B})$に対し、$\mathfrak{B}$上で定義された集合関数$\mu$(あるいは写像$\mu:\mathfrak{B}\rightarrow\mathbb{R}$)が次の2条件を満たすとき、$\mu$を可測空間$(S,\mathfrak{B})$上の測度と呼ぶ。
- 任意の$E\in\mathfrak{B}$に対し、 $$\mu(\varnothing)=0, 0\le\mu(E)\le \infty$$
- $E_n\in\mathfrak{B} (n=1,2,...)$において、$j\ne k$ならば$E_j\cap E_k=\varnothing$であるとき、 $$ \mu(\bigcup_{n=1}^{\infty}E_n)=\sum_{n=1}^{\infty}\mu(E_n) $$ また、$(S,\mathfrak{B},\mu)$を測度空間と呼ぶ。
これらの公理から、測度の有限加法性、単調性、劣加法性、上方連続性、下方連続性を導くことができます。測度が加法性を持つことは、測度がモノの長さや面積に対する抽象化であることを意味しています。
確率
確率論は測度論を基礎としており、いよいよ確率の定義です。
以下の条件を満たす測度空間$(\Omega,\mathcal{F},P)$を確率空間と呼び、その$P$を確率(測度)と呼ぶ。
$$P(\Omega)=1$$
つまり、確率という、分かったようで分からない概念は、長さや面積と同様、測度の一種だったのです。この$\mathcal{F}$上の確率測度$P$は、写像$P:\mathcal{F}\rightarrow[0, 1]$と同じことです。事象を0から1までの数値にマッピングするものです。
さらに、確率空間$(\Omega,\mathcal{F},P)$において、集合$\Omega$は標本空間(または全事象)で、$\Omega$の元$\omega_n$を根元事象と呼びます。従って、 $$ \omega_n\in\Omega $$ また、$\mathcal{F}$の元$E_n$を事象と呼びます。従って、 $$ E_n\in\mathcal{F} $$
具体例
標本空間を$\Omega$として、$\img[-0.2em]{/images/d1s.png}$から$\img[-0.2em]{/images/d3s.png}$までの目のあるサイコロを表す集合を考えます。目が6までないのは、全てを書き表すと数が多くなるため、単に目の組み合わせの数を減らしたいためです。この$\img[-0.2em]{/images/d1s.png}$から$\img[-0.2em]{/images/d3s.png}$までの目はこれ以上分割できない事象であるため、根元事象$\omega\in\Omega$と呼びます。つまり、 $$ \Omega=\{\omega_n;n=1,2,3\}=\{\omega_1, \omega_2, \omega_3\}=\{\img[-0.2em]{/images/d1s.png}, \img[-0.2em]{/images/d2s.png}, \img[-0.2em]{/images/d3s.png}\} $$ この集合の取り出し方法(目の出方、事象)$E_n$の集合が事象$\mathcal{F}$となります。例えば、サイコロを非常にたくさん振った時の目の出方を考えます。一つ一つの目を区別する測り方としますが、この測り方により事象が変わってきます。目の出方の組み合わせは最大$2^3=8$通りあります。つまり、 $$ E_n (n=1,2,...8)\in\mathcal{F} $$ 例えば$E=\{\img[-0.2em]{/images/d1s.png}, \img[-0.2em]{/images/d2s.png}\}$は、出た目が$\img[-0.2em]{/images/d1s.png}$または$\img[-0.2em]{/images/d2s.png}$と考えます。
そして、8個の元全てに対して$[0,1]$の値を写像する関数$P$を考え、これを確率測度とします。
同じくJupyter Notebookで試してみると、
Ω=FiniteSet(1, 2, 3) Ω
{1,2,3}
generate_sigma_algebra(Ω,FiniteSet({1},{2},{3}))
{∅,{1},{2},{3},{1,2},{1,3},{2,3},{1,2,3}}
この$\{\{1\},\{2\},\{3\}\}$は、標本空間$\Omega$に対して、目の一つずつを見分けるという、識別の仕方を示しています。同じ出目であっても、識別の仕方で確率は変わってきます。
Ω.powerset()
{∅,{1},{2},{3},{1,2},{1,3},{2,3},{1,2,3}}
生成された事象集合$\mathcal{F}$は$\Omega$のべき集合$2^\Omega$となっています。
ここで確率$P$の具体例を見てみます。公理から、 $$ P(\varnothing)=0\\ P(\{\img[-0.2em]{/images/d1s.png}, \img[-0.2em]{/images/d2s.png}, \img[-0.2em]{/images/d3s.png}\})=1 $$ 全ての根元事象の確率が等しいと仮定すれば、 $$ P(\{\img[-0.2em]{/images/d1s.png}\})=P(\{\img[-0.2em]{/images/d2s.png}\})=P(\{\img[-0.2em]{/images/d3s.png}\})=\frac{1}{3} $$ となります。上記$\sigma$加法族が示すように、目の出方の残りは、 $$ P(\{\img[-0.2em]{/images/d1s.png}, \img[-0.2em]{/images/d2s.png}\})=P(\{\img[-0.2em]{/images/d2s.png}, \img[-0.2em]{/images/d3s.png}\})=P(\{\img[-0.2em]{/images/d1s.png}, \img[-0.2em]{/images/d3s.png}\})=\frac{2}{3} $$ となります。
事象のべき集合$2^\Omega$は、確率が定義できる可測空間の中で最大のものであり、もっと小さいものも定義できます。以下の集合が最小の事象集合です。 $$ \mathcal{F}=\{\varnothing, \Omega\} $$ これは事象の識別の仕方を前とは変えたものです。目を全く区別せず、目が出るか出ないかのみに着目した$\sigma$加法族です。それぞれの事象の確率はいうまでもなく0と1です。
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