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FM-7 Z80カードの調査 (3) |
引き続き、Z80コネクタへの信号を解説します。また、Z80CPUの高速化に伴い、Z80⇒6809切り替え時にDRAMのRASプリチャージタイム不足が判明したため、その対策も取っています。
EB
EBはZ80のMREQに相当する信号のため、前稿でのライト信号(=$\text{R/}\overline{\text{W}}$, M5 5pin)とCPUの$\overline{\text{RD}}$の負論理ORを取り、EBとしています。信号名は6809のE信号のバッファしたもの(E Buffered)から来ています。
QB
QBは立ち上がりはアドレス有効を示す信号です。また、6809の場合はQBの立下りでデータ確定しますが、Z80は$\overline{\text{WR}}$の立ち下がりでデータ確定します。そのため$\overline{\text{WR}}$の反転をQBとして使用する場合、その考慮が本体DRAM側で必要となります。その理由からFM-7メインボードのDRAMの回路図では、Z80と6809でQBの論理を反転させています。信号名は6809のQ信号のバッファしたもの(Q Buffered)から来ています。
RWB
RWBは、前述のライト信号を後縁を広げてRWBとしています。またデータバスバッファのDIRも後縁を広げて制御しています。この理由は図268.3でも示されているように、ライトサイクル時にZ80からのデータの切れが悪く、MREQがネゲートされていてもまだ出ているように見えるためです。信号名は6809のRW信号のバッファしたもの(RW Buffered)から来ています。
Z80W
しばしば負論理信号と誤解されますが、この信号は正論理の”Z80 wait”の意味であり、すなわち正論理の6809動作中を示す信号です。つまり$\text{6809/}\overline{\text{Z80}}$を表します。waitをバーと読み替えれば理解が容易です。
DRAM RASプリチャージタイム不足
基本的には上記の回路で動作しますが、一点、Z80から6809に戻る時に問題があります。それはZ80のEBにより\$FD05に0をライトすると$\text{G/}\overline{\text{H}}$が1となり、すぐに6809からQが出力されます。そのため、RASのプリチャージタイム$\text{t}_\text{RP}$が不足となり、結果としてDRAM化けが起こります。これを解決するために、Z80から\$FD05にライトする場合には、D0を0とし、EB、QBを出力せずに、6809側のEでライトし、CPUを切り替えるようにしています。
システムバスのEB及びQBが出力されないため、DRAMへのRASが出力されません。従って、RASプリチャージタイム不足が起きず、DRAMデータ化けが防止できます。
本来であれば、このようなトリッキーなことをせずZ80カードがやっているように、6809側で切り替え信号を遅延させてバスアクセスを行えば良いはずですが、時期的に本体側の回路変更ができなかったのかもしれません。
I/O掲載のZ80カード
アーカイブサイトに1985年9月号の月刊I/Oが保存されていました。その中に「FM-7/New7/77 IC9個でできる! Z80カードの製作」という記事がありました。IC9個は簡易回路とのことで、動作が不安定のようです。一方、コンパチ回路は基本的に富士通純正回路のコピーであり、ゲートを組み替えているだけに見受けられます。従って回路は正しく動作するはずですが、記事中に2点誤りがあります。
- Z80Wが負論理となっている⇒Z80Wは正論理です。記事中では負論理のバーがついていますが、Z80Wは正論理の”Z80 wait”の意味であり、正論理の6809動作中を示す信号です。上記のように$\text{6809/}\overline{\text{Z80}}$を表します。筆者はこの$\overline{\text{Z80}}$を$\overline{\text{Z80W}}$と誤認したのかもしれません。ただしこれは表記上だけの問題であり、回路への実害はありません。
- Z80カード側ではCPU(6809)のHALTと誤認する恐れがある⇒BA/BSだけで判断するとDMA(リフレッシュ)の場合と誤認するため、6809が動作中でないことを表すZ80Wとの論理をとっており、誤認しません。そもそも6809がHALT中にはDMAはかかりません。これも回路解釈の誤りだけで、回路への実害はありません。