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σ加法族と有限加法族

posted by sakurai on April 11, 2023 #594

σ加法族と有限加法族を調べています。有限加法族にたいして無限和まで制約を厳しくしたものがσ加法族なので、有限加法族のほうが広い概念です。すなわち、

  • σ加法族であれば有限加法族である。
  • 有限加法族であっても σ加法族とは限らない。

そのため、有限加法族であっても σ加法族ではない例があるはずです。そこで、次の記事を参考にしました。https://sorai-note.com/math/algebra-of-sets/

Q 有限加法族であるが、σ加法族で無い例をひとつ挙げよ。

$\mathbb{N}$の部分集合からなる集合族 $$ \mathcal{F}=\left\{S\subseteq\mathbb{N}\mid Sまたは\overline{S}は有限集合\right\} $$ は$\mathbb{N}$上の有限加法族であることを示す。

  1. 空集合を含む:
    空集合$\varnothing$は有限集合であるから$\varnothing\in\mathcal{F}$
  2. 補集合で閉じること:
    $A\in\mathcal{F}$とすると、$\mathcal{F}$の定義より、$A$または$\overline{A}$のどちらかが有限集合。
    (i) $A$が有限集合のとき
    $\quad\overline{\overline{A}}$が有限集合なので、$\overline{A}\in\mathcal{F}$
    (ii)$\overline{A}$が有限集合のとき
    $\quad\mathcal{F}$の定義より、$\overline{A}\in\mathcal{F}$
  3. 有限和で閉じること:
    $A, B\in\mathcal{F}$とする。$A$または$\overline{A}$のどちらかが有限集合であり、$B$または$\overline{B}$のどちらかが有限集合。
    (i) $A$も$B$も有限集合のとき
    $\quad A\cup B$が有限集合となるので、$A\cup B\in\mathcal{F}$である。
    (ii)$\overline{A}$または$\overline{B}$が有限集合のとき
    $\quad\overline{A}\cap\overline{B}$が有限集合、すなわち$\overline{A\cup B}$が有限集合なので、$A\cup B\in\mathcal{F}$である。

ここまでで$\mathcal{F}$は有限加法族であることが証明された。次に$\mathcal{F}$が加算和で閉じないことを示す。各$n\in\mathbb{N}$に対し、$A_n={2n}$とすると、これらは有限集合なので、$A_n\in\mathcal{F}$であるが、 $$ \bigcup_{n\in\mathbb{N}}A_n=\{2n\mid n\in\mathbb{N}\}=\{0, 2, 4, 6, ...\} $$ は無限集合であり、その補集合 $$ \overline{\bigcup_{n\in\mathbb{N}}A_n}=\{2n+1\mid n\in\mathbb{N}\}=\{1, 3, 5, 7, ...\} $$ も無限集合である。従って、$\bigcup_{n\in\mathbb{N}}A_n\notin\mathcal{F}$となる。


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posted by sakurai on January 26, 2023 #583

任意の集合$A$及び$B$について、以下の2つの等式が成立する。 $$ \overline{(A\cap B)}=\overline{A}\cup\overline{B}, 及び\overline{(A\cup B)}=\overline{A}\cap\overline{B} $$

証明: 記号$\lor$を論理和、$\land$を論理積とする。全体集合を$\Omega$として、$\forall x$に対して $$ x\in\overline{(A\cap B)}\Rightarrow x\in\Omega\setminus (A\cap B)\\ \Rightarrow x\in\{x\in\Omega\land x\notin (A\cap B)\}\\ \Rightarrow x\in\{(x\in\Omega\land x\notin A)\lor(x\in\Omega\land x\notin B)\}\\ \Rightarrow x\in(\{x\in\Omega\land x\notin A\}\cup\{x\in\Omega\land x\notin B)\})\\ \Rightarrow x\in\overline{A}\cup\overline{B} $$ よって、$\overline{(A\cap B)}\subset\overline{A}\cup\overline{B}$が成立する。同様に、$\forall x$に対して $$ x\in(\overline{A}\cup\overline{B}) \Rightarrow x\in(\{x\in\Omega\land x\notin A\}\cup\{x\in\Omega\land x\notin B)\})\\ \Rightarrow x\in\{(x\in\Omega\land x\notin A)\lor(x\in\Omega\land x\notin B)\}\\ \Rightarrow x\in\{x\in\Omega\land x\notin (A\cap B)\}\\ \Rightarrow x\in\Omega\setminus (A\cap B)\Rightarrow x\in\overline{(A\cap B)} $$ より、$\overline{A}\cup\overline{B}\Rightarrow\overline{(A\cap B)}$が成立する。以上より $$ \overline{(A\cap B)}=\overline{A}\cup\overline{B} $$


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背理法の証明例 (2)

posted by sakurai on January 18, 2023 #580

再び有名な証明問題です。「実数全体$\mathbb{R}$は非可算無限集合である」

  1. 区間$[0, 1)$の実数を加算有限集合と仮定する。
  2. 無限桁の2進数によりそれらの実数を表す。
  3. それらの実数を任意の順で並べる。
  4. n番目の数値の小数点以下の桁を0なら1、1なら0に変えていき、変えた数値を各桁に持つ新しい実数を1つ生成する。
  5. その新しい実数は表のいずれの実数ともn桁目が異なり、それゆえこの表には含まれないため、1.の仮定に反する。
  6. よって$[0, 1)$の実数は非可算無限集合である。

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背理法の証明例

posted by sakurai on January 10, 2023 #579

有名な「素数は無限個存在する」という定理の証明を背理法で行います。

  1. 「素数が有限個である」と仮定する。
  2. $P$を、有限個の中で最大の素数$\dagger 1$とする。
  3. $Q=P\ !+1$という数$Q$を考える。
  4. $Q$が素数である場合は、明らかに$Q\gt P$であり、2.に反するので、$Q$は合成数$\dagger 2$。
  5. $Q$が合成数である場合は、定義より$Q$を割り切る素数$R$が存在し、また$Q=P\ !+1$であることから、$Q$は$P$以下の全ての素数で割り切れないため、$R\gt P$であることになり、同じく2.に反す。
  6. 2.を仮定すると、必ず矛盾が起きるため2.は成立しない。よって、素数は無限個数あることが証明された。

$\dagger 1$: 素数の定義:自然数$X$が$X$自身と$1$で割り切れ(自明)、かつそれら以外の全ての自然数で割り切れない$X$を素数と呼ぶ。
$\dagger 2$: 合成数の定義:自然数$Y$が$Y$自身と$1$で割り切れ(自明)、かつそれら以外の$Y$を割り切る素数が存在するとき、$Y$を合成数と呼ぶ。


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確率論 (22)

posted by sakurai on February 10, 2020 #200

2項過程

時間間隔$[0, t]$において、$k$個の故障が起きる確率を考えます。まず離散時間の場合、単一の部品の故障確率を$p$、故障個数を表す確率変数を$X$とすれば、 $$\Pr\{X=k\}={}_n\mathrm{C}_k(1-p)^{n-k}p^k\ \ \ \ \ \ \ \text{for }k=1,2,...,n$$ 前回と同様に、単一の部品の故障率を$\lambda$、時間間隔$[0, t]$を$n$等分した一つの時間間隔を$\Delta t$とすれば、 $$p=\lambda\Delta t=\lambda\frac{t}{n}$$ よって、 $$\Pr\{X=k\}=\frac{n!}{(n-k)!k!}\left(1-\frac{\lambda t}{n}\right)^{n-k}\left(\frac{\lambda t}{n}\right)^k\ \ \ \ \ \ \ \text{for }k=1,2,...,n$$ 確率変数$X$は2項分布し、この確率変数は時間によって変化するため、$X(\omega)$と時刻$t$の直積をとった確率変数$X(\omega, t)$の集合$\{X(\omega, t)\}$を2項過程といいます。

ポアソン過程

前式において、$n\to\infty$の極限を取れば、 $$\Pr\{X=k\}=\lim_{n\to\infty}{}_n\mathrm{C}_k(1-p)^{n-k}p^k$$

$$=\lim_{n\to\infty}\frac{n!}{(n-k)!k!}\left(1-\frac{\lambda t}{n}\right)^{n-k}\left(\frac{\lambda t}{n}\right)^k$$

$$=\lim_{n\to\infty}\frac{n(n-1)...(n-k+1)}{n^k}\cdot\frac{1}{k!}\left(1-\frac{\lambda t}{n}\right)^{n-k}\left(\lambda t\right)^k\\ =\frac{(\lambda t)^k}{k!}e^{-\lambda t}$$ これをポアソン過程と呼びます。部品の故障は連続時間中に起こり、その確率は低いので、ポアソン過程として取り扱うことができます。


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確率論 (21)

posted by sakurai on January 24, 2020 #198

今回は「確率モデル入門」(朝倉書店)からポアソン過程の部分を引用します。

確率過程

連続時間$t(\ge 0$)において確率法則が確率変数$X(t)$で表されるとき、確率変数の集まり$\{X(t),t\ge 0\}$は連続時間確率過程と呼ばれる。また、$X(t)$の取る値の集合は状態空間と呼ばれ、本稿では状態空間は離散形のみを取り扱う。

以前のポストでも確率過程を取り扱いましたが、基礎確率空間$(\Omega, \mathcal{F}, P)$において、任意の時刻$t$を固定した確率変数$X(\omega)$が$\mathcal{F}$可測となっていることが確率過程の条件となります。

計数過程

数(整数)を数える確率過程$\{N(t), t\ge 0\}$を計数過程という。

我々は$N$個の部品の故障数を数えているので、計数過程です。

独立増分過程

確率過程$\{X(t), t\ge 0\}$において、任意の$t_1\lt t_2\lt ...\lt t_n$に対し、確率変数 $$X(t_1)-X(t_0), X(t_2)-X(t_1),...,X(t_n)-X(t_{n-1})$$ が独立ならば、この確率過程は独立増分を持つという。

2項過程幾何分布

離散時間計数過程$\{N(n), n=1, 2, ...\}$において、故障確率$p (0\le p\le 1)$の試行列を考える。$N(1)=0$として、時刻$n$における故障事象の累積回数を$N(n)$とするとき、この確率過程をパラメータ$p$の2項過程幾何分布という。

この2項過程幾何分布は離散時間計数過程ですが、これを連続過程に移したらどうなるかを見てみます。時刻$0$から$t$までの時間間隔を$n$分割すれば、微小離散時間$\Delta t$は、 $$\Delta t=\frac{t}{n}$$ となり、図で表せば図198.1のようになります。

図%%.1
図198.1 時刻$t$までに$\Delta t$が$n$回

また、区間内の故障回数($\approx$故障確率)$p$を故障率$\lambda$で表せば、故障率は単位時間あたりの故障回数なので、 $$p=\lambda\Delta t=\frac{\lambda t}{n}$$ 時刻$t$の$n$回目で初めて故障が起きる確率は、各試行は独立であるため事象のANDは確率の積で表すことができるので、2項過程幾何分布より $$\Pr\{\text{item not fail in }n-1\cap \text{item fail at }n\}\\ =\Pr\{\text{item not fail in }n-1\}\Pr\{\text{item fail at }n\}=(1-p)^{n-1}p$$ となります。

ポアソン過程指数分布

$[0, t]$間での連続的な変化を考え、2項過程幾何分布において$n\to\infty, \Delta t\to 0$の極限をとります。ところが時刻$t$で初めて故障が起きる確率を求めるため、これは$P(X=t)$を求める事に対応するので、連続確率過程では確率はほとんど確実に(a.s.)$0$になります。従って、瞬間ではなく微小時間間隔$dt\to 0$での故障確率を考え、確率密度関数を$f(t)$とすれば、 $$\Pr\{X\in dt\}=\Pr\{X\in [t-dt, t)\}=\lim_{n\to\infty}(1-p)^{n-1}p\\ =\lim_{n\to\infty}\left(1-\frac{\lambda t}{n}\right)^{n-1}\lambda dt=e^{-\lambda t}\cdot \lambda dt=f(t)dt$$ よって、 $$f(t)=\lambda e^{-\lambda t}$$

$f(t)$は確率密度関数もしくはpdf(Probability Density Function)です。

連続時間での最初の故障までの確率密度関数が求められたので、これを$0$から$t$まで積分すれば、区間$[0, t]$での最初の故障の累積分布関数が求められます。最初の故障が起きるまでの時間はFFOT(Failure Free Operating Time; 無故障運転時間)とほとんど確実に(a.s.)一致します。 $$\int_0^t\lambda e^{-\lambda x}dx=1-e^{\lambda t}$$

2項過程幾何分布の連続系はポアソン過程指数分布と呼ばれ、累積分布は指数分布となります。故障はまれにしか起きない連続的な計数過程であるので、ポアソン過程指数分布でモデル化を行います。


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確率論 (20)

posted by sakurai on January 9, 2020 #197

測度論に戻り、集合の包含関係を確認します。この記事は応用のための確率論から引用しています。

集合族$\mathfrak{I}$

長方形の面積を考えます。平面を集合と考えると、平面に属する点の集合は、$\mathbb{R}^2$で表されます。これを全体の集合$X(=\mathbb{R}^2)$とすると、長方形は$X$上の4点で定義されます。その全ての集合を$\mathfrak{I}$とすると、 $$\mathfrak{I}\subset X$$

図%%.1
図197.1 四角形

集合族$\mathcal{J}$

次に、$\mathfrak{I}$から有限個の長方形を取り出し和を取った図形全体の集合を$\mathcal{J}$とすると、明らかに $$\mathfrak{I}\subset\mathcal{J}\subset X$$

図%%.2
図197.2 有限個の四角形

オーバーラップしていますが、互いに背反(ノンオーバーラップ)な長方形を用いて等価変換できます。

図%%.3
図197.3 有限個の背反な四角形

集合族$\mathcal{T}$

一方、円や三角形等の図形は有限個の長方形では表せないため、高々加算個の背反な長方形$E_i$を用いて、 $$\sum_{i=1}^\infty E_i$$ で表される図形全体の集合を$\mathcal{T}$とすると、 $$\mathfrak{I}\subset\mathcal{J}\subset\mathcal{T}\subset X$$

図%%.4
図197.4 加算個の四角形

集合族$\mathfrak{B}_2$

次に$\sigma$代数$\mathcal{F}$を考え、以下の性質を持つものとします。

長方形は全て$\mathcal{F}$に含まれる。

$E\in\mathcal{F}$ならば$E^c=X-E\in\mathcal{F}$

$E_i\in\mathcal{F}\ (i=1,2,...)$ならば$\bigcup_{i=1}^\infty E_i\in\mathcal{F}$

この性質を持つ$\mathcal{F}$は、この性質から $$\mathcal{T}\subset\mathcal{F}$$ となります。この性質を持つ様々な$\mathcal{F}_{\alpha}$の共通部分を

$$\mathfrak{B_2}=\bigcap_\alpha\mathcal{F}_\alpha$$ とし、これをボレル集合族と呼びます。あきらかにこれは$\mathcal{F}$の集合族の中で最小の集合族です。

集合族$\mathfrak{M}_\mu$

ボレル集合族は$\sigma$加法族として加法性が成立しているため、使いやすいものの、ボレル集合族に含まれる集合$A\in\mathfrak{B_2}$に対して測度$\mu(A)=0$となる$A$の部分集合が必ずしも$\mathfrak{B_2}$に含まれないため、これを全て加え拡張した集合族を$\mathfrak{M}_\mu$とします。

これらの集合族の包含関係を図示すると、図197.1のようになります。

図%%.1
図197.1 集合の包含関係

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確率論 (19)

posted by sakurai on January 8, 2020 #196

べき集合

時々測度論(もしくはその前の集合論)に戻って解説します。集合$X$の全ての部分集合を考えます。この集合にはべき集合と名前がつけられており、$2^X$で表します。

まず、高々加算個の元$X_i\ (i=1,2,...)$を持つ集合$X$を以下のように表します。 $$X=\{x:x_i\ (i=1, 2, ...)\}$$

$X$の全ての部分集合は、$X$の元の一つ一つについて、作成する部分集合$A_j$に入れるか入れないかを、全ての組み合わせを考えることにより生成できます。そこで、全ての組み合わせの数と部分集合の個数は等しく、その個数は$2^{|X|}$となります。この入れる$(=1)$か入れない$(=0)$かを式で書くと、 $$ f_j(x_i)\ (i=1,2,...)= \begin{cases} 1 & (x_i\in A_j) \\ 0 & (x_i\notin A_j) \end{cases} s.t. j=1, 2, ..., 2^{|X|} $$ という写像の組により与えられます。写像の組を集合関数と置きなおせば、 $$ f_j(A_i)= \begin{cases} 1 & (i=j) \\ 0 & (i\neq j) \end{cases} $$ このように、生成する部分集合$A_j$と写像$f_j$は一対一対応しており、$j=1,2,...2^{|X|}$となります。

これだけだとイメージがわかないので例を挙げます。

$$X=\{1, 2, 3\}$$ として、べき集合$2^X$を考えると、 $$ \begin{cases} X & f_j(x_1) & f_j(x_2) & f_j(x_3) & A_j & A_j^c & j\\ \{1, 2, 3\} & 0 & 0 & 0 & \varnothing & \{1, 2, 3\} & 1\\ \{1, 2, 3\} & 1 & 0 & 0 & \{1\} & \{ 2, 3\} &2\\ \{1, 2, 3\} & 0 & 1 & 0 & \{2\} & \{1, 3\} &3\\ \{1, 2, 3\} & 0 & 0 & 1 & \{3\} & \{1, 2\} &4\\ \{1, 2, 3\} & 1 & 1 & 0 & \{1, 2\} & \{3\} &5\\ \{1, 2, 3\} & 1 & 0 & 1 & \{1, 3\} & \{2\} &6\\ \{1, 2, 3\} & 0 & 1 & 1 & \{ 2, 3\} & \{1\} &7\\ \{1, 2, 3\} & 1 & 1 & 1 & \{1, 2, 3\} & \varnothing &8\\ \end{cases} $$ から、部分集合$A_j$を全て含む集合となるので、 $$ 2^X=\{A_j:j=1,2,...,2^3\}=\{\varnothing, \{1\}, \{2\}, \{3\}, \{1, 2\}, \{1, 3\}, \{2, 3\}, \{1, 2, 3\}\} $$ と求められます。

集合関数$f_j$を全て書き並べると、以下のようになります。 $$ \begin{cases} f_1(A)= \begin{cases} 1\ (A=A_1=\varnothing)\\ 0\ (A\neq A_1=\varnothing) \end{cases}\\ f_2(A)= \begin{cases} 1\ (A=A_2=\{1\})\\ 0\ (A\neq A_2=\{1\}) \end{cases}\\ f_3(A)= \begin{cases} 1\ (A=A_3=\{2\})\\ 0\ (A\neq A_3=\{2\}) \end{cases}\\ f_4(A)= \begin{cases} 1\ (A=A_4=\{3\})\\ 0\ (A\neq A_4=\{3\}) \end{cases}\\ f_5(A)= \begin{cases} 1\ (A=A_5=\{1, 2\})\\ 0\ (A\neq A_5=\{1, 2\}) \end{cases}\\ f_6(A)= \begin{cases} 1\ (A=A_6=\{1, 3\})\\ 0\ (A\neq A_6=\{1, 3\}) \end{cases}\\ f_7(A)= \begin{cases} 1\ (A=A_7=\{2, 3\})\\ 0\ (A\neq A_7=\{2, 3\}) \end{cases}\\ f_8(A)= \begin{cases} 1\ (A=A_8=\{1, 2, 3\})\\ 0\ (A\neq A_8=\{1, 2, 3\}) \end{cases}\\ \end{cases} $$


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確率論 (18)

posted by sakurai on January 6, 2020 #195

前回までに標本はどのようにとっても構わないことが分かったので、個々の部品の順列事象ではなく、故障の組み合わせ事象を、根元事象ととります。 ここでいう順列事象は$N=2$のときに、 $$\omega_1=\img[-0.2em]{/images/up.png} \img[-0.2em]{/images/up.png}, \omega_2=\img[-0.2em]{/images/dn.png} \img[-0.2em]{/images/up.png}, \omega_3=\img[-0.2em]{/images/up.png} \img[-0.2em]{/images/dn.png}, \omega_4=\img[-0.2em]{/images/dn.png} \img[-0.2em]{/images/dn.png}$$

組み合わせ事象は、 $$e_0=\omega_1, e_1=\{\omega_2, \omega_3\}, e_2=\omega_4$$ のようなものです。

コインの裏表のように等確率であれば、順列事象を根元事象ととる根拠もありますが、故障の場合はそうではなく、むしろ組み合わせ事象での故障数について、時間的な関係が存在します。

図195.1に、確率空間$(\Omega, \sigma(\Omega), P)$を図示します。根元事象を$\omega_i$と置きなおして、標本空間は$N$個の部品の故障数により分けた集合$\Omega$とします。具体的に書くと、 $$\omega_0=\{\img[-0.2em]{/images/up.png},...,\img[-0.2em]{/images/up.png}\},...,\omega_N=\{\img[-0.2em]{/images/dn.png},...,\img[-0.2em]{/images/dn.png}\}$$

事象空間$\mathcal{F}$は標本空間から生成した$\sigma$代数です。$\mathcal{F}$の中には$\Omega$の$N$個の根元事象1個ずつから成る$N$個の集合も$\mathcal{F}$に含まれ、それぞれの確率$P(\omega_i)$が存在しますが、我々が知りたいのは事象の確率ではなく、確率過程なので、事象の確率は気にしません。

$N$個の部品が同時に故障する確率は$0$なので、必ず一つずつ故障することから、上記根元事象は状態事象とも考えられます。つまり初期状態は$\omega_0$であり、ある時間後に1個故障した時点で、状態は$\omega_1$に移ります。図の矢印は状態遷移を意味した矢印です。連続時間マルコフ遷移となります。これは状態遷移は、それまでの状態の経過によらず、今いる状態(=故障数)と時間のみに関係するためです。

図%%.1
図195.1 確率空間

一方こちらは重要で、標本空間$\Omega$からボレル集合$\mathbb{R}$への写像である確率変数$X$は、$\omega\in\Omega$の故障数という定義であり、図195.1のように写像を行います。ただし、確率$P$は標本空間からユークリッド空間$[0, 1]$への写像であり、測度$\mu$はボレル集合$\mathbb{R}$からユークリッド空間$[0, 1]$への写像ですが、故障の観点からはどちらにもあまり興味がありません。なぜなら、それらの確率は$t$の増大につれて、順番に$P(\omega_i)=0$のものが$P(\omega_i)=1$となっていくからです。

故障時刻を$t_i(i=0,1,2,...)$とすれば、$t_0=0$として、 $$ P(\omega_i)= \begin{cases} 1 & ( t_i\leq t\lt t_{i+1} ) \\ 0 & ( \text{otherwise} ) \end{cases} $$

むしろ興味のある確率としては不信頼度です。$N$が非常に大きい場合、全体を1とする測度、つまり確率測度としての不信頼度は、故障数をNで割ったものです。システムの状態としては、$t=0$において$\omega_0$、その後$\omega_1, \omega_2, ...$と順番に遷移するので、確率変数$X$で状態変数を写像した$X(\omega_i)$を$N$で割ったものが不信頼度$F_X(t)$となります。その意味は、部品が$N$個ある場合に、時刻$t$までにおいて不稼働になる確率を表します。 $$F_X(t)=\frac{X(\omega, t)}{N}, R_X(t)=1-F_X(t)$$ そして、前記事のように、不信頼度についての確率微分方程式が故障率$\lambda$をパラメータとする制約条件として存在します。


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確率論 (17)

posted by sakurai on December 26, 2019 #194

根元事象$\img[-0.2em]{/images/up.png}, \img[-0.2em]{/images/dn.png}$が、例えば$N$個のコインの表裏のように、現れる確率が独立に決まっていれば、$\Omega=\{\omega_1, ..., \omega_{2^N}\}$のような標本空間の取り方も合理的ですが、$N$個の部品が故障する場合は、稼働度に応じて瞬間の不稼働確率が定まるので、いっそのこと標本空間を$\acute{\Omega}=\{e_0,...e_N\}$としても良いわけです。確率変数$X$を$X:\Omega \to\acute{\Omega}$とし、確率変数$\acute{X}$を$\acute{X}:\acute{\Omega}\to\mathbb{R}$とすれば、

$N=2$、$M=N+1=3$のとき、数字を$e$の添え字とすれば、

generate_sigma_algebra(FiniteSet(0,1,2), FiniteSet({0},{1},{2}))

{∅,{0},{1},{2},{0,1},{0,2},{1,2},{0,1,2}}

要素数=8

$N=3$、$M=N+1=4$のとき、数字を$e$の添え字とすれば、

generate_sigma_algebra(FiniteSet(0,1,2,3), FiniteSet({0},{1},{2},{3}))

{∅,{0},{1},{2},{3},{0,1},{0,2},{0,3},{1,2},{1,3},{2,3},{0,1,2},{0,1,3},{0,2,3},{1,2,3},{0,1,2,3}}

要素数=16

$N=4$、$M=N+1=5$のとき、数字を$e$の添え字とすれば、

generate_sigma_algebra(FiniteSet(0,1,2,3,4), FiniteSet({0},{1},{2},{3},{4}))

{∅,{0},{1},{2},{3},{4},{0,1},{0,2},{0,3},{0,4},{1,2},{1,3},{1,4},{2,3},{2,4},{3,4},{0,1,2},{0,1,3},{0,1,4},{0,2,3},{0,2,4},{0,3,4},{1,2,3},{1,2,4},{1,3,4},{2,3,4},{0,1,2,3},{0,1,2,4},{0,1,3,4},{0,2,3,4},{1,2,3,4},{0,1,2,3,4}}

要素数=32

このように、確率空間を変えることにより、元々$N$個の部品の事象の数$2^N$に対する$\sigma$代数の要素数$2^{2^N}$に対して、事象の数$N+1$に対する$\sigma$代数の要素数$2^{N+1}$と激減させることができました。


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