Article #457

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posted by sakurai on February 10, 2022 #457

パイプラインウエイト

パイプラインの設計も佳境となるのがパイプラインハザードであり、それを実行するのがパイプラインウエイト制御です。本来ウエイトさせるべきタイミングでウエイトされないと、「パイプラインステージが滑る」バグとなります。

パイプラインステージ制御には原則があり、パイプラインステージは増殖してはいけません。パイプラインステージを止める場合は、その出力の更新を止めることでサイクルを繰り返す制御を行い、かつ、後段には無効信号を流す必要があります。

つまり、パイプラインステージ制御信号にはValid信号が必要です。一方パイプラインデータ信号にはValid信号は不要です。パイプラインで無効データが流れても、最後の<WB>で書き込まなければ問題ないためです。

メモリアクセスウエイト

次にロードストア命令の<MA>でのウエイトの場合を示します。

通常のパイプライン図を457.1に示します。命令の実行順に、縦に命令を1, 2, ..., 6と並べています。横軸は時間軸で、箱の中にステージ名が書かれています。命令処理を命令流すなわち、命令ストリームあるいはパイプラインストリームと呼ぶこともあります。

図%%.1
図457.1 パイプライン図

図457.1は例えば命令1のメモリアクセスステージ<MA>でメモリウエイトが2サイクル入った場合の例です。命令1の<MA>にウエイトが入ると、後続命令を直ちに止める必要があるため、ウエイト信号は即時に上ステージに伝える(下向き矢印)ように制御します。

図457.1をパイプラインステージ順に並べ替えたものが図457.2です。図457.1と同様に横軸は時間軸です。箱の中には命令の順番の番号が入っています。こちらのほうが有利なのは、図457.1では省略されているパイプラインバブルが見えることです。バブルは薄いグレーで示しています。初期の無効状態は濃いグレーで示しています。

図%%.2
図457.2 パイプライン図

パイプラインウエイトは上段に向かって即時(同一サイクル内)に流す(上向き矢印)だけでなく、下段に向かってバブルを発生します(右下斜め矢印)。下段へは即時ではなくパイプラインに沿って流します。バブルとは、具体的にはパイプラインのValid信号をインバリデート(無効, false)にすることです。

例えば1の命令が<MA>でウエイトする場合(5クロック目)、パイプラインを下段方向に止めるのではなく、下段は止めずにその代わり無効信号を流します。これは重要なパイプライン制御のテクニックであり、下段も止めてしまうと、誤ったインターロック(お互いに止めあうこと)が発生することがあります。

余談ですが、20?年前に課内でパイプライン制御を説明したとき、先輩のTさんと後輩のK君は「全部止めたらいいんじゃないか」と言いましたが、上記の理由からそれは誤っています。

実装は<MA>で起動するFSMにより実装します。例えばデータキャッシュをFSMで構成すると、キャッシュヒット時は1サイクルでデータが返りますが、キャッシュミス時は複数サイクルのFSMによりデータがフェッチされます。


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