Posts Tagged with "failure rate"

既に発行済みのブログであっても適宜修正・追加することがあります。
Even in the already published blog, we may modify and add appropriately.
posted by sakurai on November 12, 2018

例えば非対称冗長構成サブシステムにPMHFの値は2つあるのでしょうか。

まず非対称冗長構成サブシステムを説明します。ヘッドライト回路において、マイコンとトランジスタスイッチの両方からヘッドライトを点灯する機能があるとします。両者ともコンビネーションスイッチ情報を読み込み、点灯するものとします。さて、この場合、どちらが主機能でどちらが安全機構でしょうか?

図70.1
図70.1 非対称冗長システム例

この場合は冗長構成であるため、両方とも主機能となります。両方ともヘッドライト点灯という主目的をはたしているからです。一方で両方とも安全機構です。他方がフォールトしたときに、ライト消灯という、システムとしての機能喪失を抑止するためです。すると、PMHFの計算において困難が生じます。PMHF規格第1式は主機能、安全機構に関して非対称であるためです。マイコンのほうが故障率が一桁大きいので、どちらを主機能とするかでPMHFに2つの値があるよう思えます。

1st Editionに沿って説明します。2つのエレメント主機能(M)、安全機構(SM)から構成されるサブシステムのPMHFは、MのフォールトによるVSGを考えるとPMHF規格第1式となります。一方でSMのフォールトによるVSGの場合を加え合わせればPMHF規格第3式となります。従って、非対称冗長構成サブシステムがあるとき、片方のみを考えてPMHF規格第1式を適用するからPMHFが2つあると誤解を生じてしまうわけです。M, SM双方によるDPFを考えるためには、本来はPMHF規格第3式を使用するべきです。PMHF規格第3式はPMHF規格第2式の近似でもあったので、その元になる(65.3)式を再掲すれば、

$$M_{PMHF}\approx\lambda_{M,RF}+\lambda_{M,DPF}(\lambda_{SM,DPF,lat}T_{lifetime}+\lambda_{SM,DPF,det}\tau_{SM})\tag{65.3} $$

おや?M, SMに関して対称となっていませんね。これを含めると2つの問題が存在しているようです。

  1. PMHF規格第1式のみでサブシステムのPMHFを評価する
  2. 冗長構成を表すPMHF規格式は、M, SMに対して非対称

PMHF規格第3式を用いることで1.は解決しますが、2.が解決されません。

2nd Editionでは、1st EditionのPMHF規格第3式の「順番によらない場合」(=主機能によるVSG及びSM1によるVSGの両方)について初めから考慮されているので、1st Editionのような誤解は生じないと思います。つまり1.は解決されていますし、2.も表面的にはM, SM対称となっているので解決されているように見えます。

1.の問題に関して言えば、どちらかを主機能と勝手に見るのは、設計意図ではあるものの、モノは設計意図どおり故障しません。従ってサブシステムが車両寿命間にダウンする確率の時間平均であるPMHFが2種類あるはずがありません。

2.の問題に関して言えば、PMHF規格式は1st Edition, 2nd Edition共、冗長構成を正しく考慮できていないため、PMHF規格式の適用には問題があります。1st Editionに関しては、これは論文で取り上げた問題ですが、PMHF規格第3式は主機能と安全機構に関して対称となっていません。本来は対称となるはずです。2nd Editionで表面上は対称となりましたが、既述のとおりある問題が残っています。つまり問題は3つあったのでした。


左矢前のブログ 次のブログ右矢

posted by sakurai on November 5, 2018

デュアルポイントフェイリャ

次にDPFについて、弊社が考える式とどこが相違しているかを見ていきます。

まず、SMがVSGとならない場合のパターン1式は特定条件(※1)でのみ合っています。この条件は1st Edition規格第1式とも同じです。次にパターン2は特定条件(※1)において前述のように2倍だけ異なっています。この2倍の理由は不明です。
※1 $K_{IF,lat}=0\cap K_{SM1,det}=1$の場合。これを言い換えると、IFはVSGの可能性があるが修理不可能、かつ、SM1はVSGの可能性無しで修理可能。

さらにパターン3、4式は特定条件(※2)でのみ合っています。単にパターン1, 2をひっくり返した(IFとSM1を入れ替えた)式のように見えます。
※2 $K_{SM1,lat}=0\cap K_{IF,det}=1$の場合。これを言い換えると、SM1はVSGの可能性があるが修理不可能、かつ、IFはVSGの可能性無しで修理可能。

これは以下の条件からくるものと推測します。以下は2nd Edition Part10 8.3.2.3 Table 2の引用です。

表69.1
First fault:SM1⇒Second fault:IF First fault:IF⇒Second fault:SM1
Cannot notify the driver Pattern 1 Pattern 3
Can notify the driver Pattern 2 Pattern 4

つまり、Pattern1及び2はIFフォールトによるVSGであり、SM1は修理系、IFは非修理系を仮定しています。 一方、Pattern3及び4はSM1フォールトによるVSGであり、Pattern1及び2のIF/SM1を入れ替えたものとなっているところから推測すればIFは修理系、SM1は非修理系を仮定しています。

いずれも最初のフォールトが起きるエレメントは、upしたりdownしたりを繰り返しても良いのですが(=修理可能という意味)、2番目にフォールトが起きるエレメントは本来同様のはずが、2番目にdownすることしか許されていません。これは非修理系を意味します。つまり後からフォールトするエレメントの定義を誤っています。このことは言葉の定義だけで理解されるものではなく、その仮定から導出された1st Editionの式の意味まで考えて初めて理解されることです。

いずれにしろ、この前提はIFもSM1も$t=0$において修理系という一般的なサブシステムに対して、強い制約をかけることになるだけでなくPMHFの過小評価につながります。従って、この式を受け入れることはできません。

弊社が考えるPMHFの一般式

IFとSM1が$t=0$において修理系という条件で、マルコフ状態遷移図を書き、確率微分方程式を立て積分してADRを算出した式において、Edition 1の方法で上界を求めた式は、 $$ M_{PMHF}=\lambda_{IF,RF}+\lambda_{SM1,RF}+\left[\img[-1.35em]{/images/withinseminar.png}\right]\tag{69.1} $$ となります。

規格の式(図68.1)は、特殊状況のみを数え上げた、※1または※2のみで成立する式です。


左矢前のブログ 次のブログ右矢

2nd EditionにおけるPMHF式

posted by sakurai on October 29, 2018

ISO 26262 2nd Edition

今年春発行と予定されていた2nd EditionはFDISの状況となっていますが、正式発行が遅れているようです。FDISは最終的な規格から語句のレベルしか修正されないとのことで、FDISで検討すればほぼ問題無いと考えられます。

さて、PMHFの部分はだいぶ変更されています。公式が変わっただけでなく、SMが安全目標侵害するケースまで想定されています。元々弊社では一般的なサブシステムを検討対象としており、両方のエレメントが安全目標侵害する場合を対象としていましたので、好都合です。

図68.1のパターン1と2はいずれもSM1が先にフォールトし、次にIF(Intended Function)がフォールトするケースです。そのうち、パターン1はフォールトが検出されない場合、パターン2はフォールトが検出される場合です。一方、パターン3と4はいずれもその逆順にフォールトするケースです。そのうちパターン3はフォールトが検出されない場合、パターン4はフォールトが検出される場合です。

図68.1
図68.1 2nd Edition, Part10-8.3.2.4 PMHF規格 第1式

実はパターン1と2あるいは3と4は特に分ける必要はありません。弊社の式に従えば不稼働率の関数$Q(t)$(59.8)で自然に表されるからです。一方、パターン1と3、2と4はフォールト順序なので、マルコフ状態遷移図に基づく検討が必要です。

重要 1st Editionでは主機能が非修理系であるという前提から、ケース分類で確率を求めても良かったのですが、2nd Editionも同様な方法でPMHF式を求めているようです。主機能も安全機構も非修理系では全く成り立たないので、2nd Editionになって対称的に扱うのであれば両方とも修理系にせざるを得ません。そうすると、主機能であってもVSGとならないフォールト(MPフォールト)を起した後、2nd SMにより検出される部分は修理されることになります。すると、本ケース分けには当てはまらなくなります。例えば、主機能がMPフォールトし、2nd SMにより検出され修理される。次にSM1がMPフォールトし、検出され修理される。これが繰り返されることは十分あり得ますが、規格のケース分類だとこの場合は、Pattern3+Parttern4に相当します。これはマルコフ状態遷移図を書いて初めて理解されることなので、ISO 26262のPMHF理解のためにはマルコフ状態遷移図は必須です。

シングルポイントフェイリャ

ここで、$\lambda_{SPF}, \lambda_{RF}$は定義が書かれていませんので、IFによるものか、SM1によるものも含むのかが定かではありません。それ以外にもパターン1と2ではパターン2のほうにだけ2倍の係数がかかっていますが、その理由は定かではありません。

図68.2
図68.2 2nd Edition, Part10-8.3.2.4 PMHF規格説明

このように、SM1のPVSG、つまりSM1の安全目標侵害の可能性があると、ECCの例まで挙げて言っているので、おそらく$\lambda_{RF}$は以下のようになると考えられます。これは、2エレメントがどちらも主機能、SMとなるような一般モデル式で考えると良いはずです。

$$ \lambda_{RF}=\lambda_{IF,RF}+\lambda_{SM1,RF}=(1-K_{FMC,SM1,RF})\cdot \lambda_{IF}+(1-K_{FMC,SM2,RF})\cdot \lambda_{SM1}\tag{68.1} $$


左矢前のブログ 次のブログ右矢

posted by sakurai on October 21, 2018

upやdownを数式で書いてみます。

ランダムプロセス$\eta_s$において、確率変数$X$を無故障稼働時間とします。$\mathcal{M}$を稼働状態のサブ集合とし、$\mathcal{P}$を不稼働状態のサブ集合とすれば、$X=\inf\lbrace s:\eta_{s}\in\mathcal{P}\rbrace$と示すことができます。 non-repairable elementの故障率$\lambda(t)$は、 $$\lambda(t)=\lim_{dt\to 0}\frac{\Pr\lbrace X\le t+dt\ |\ t\lt X\rbrace}{dt}$$ より形式的に、 $$\lambda(t)dt=\Pr\lbrace X\le t+dt\ |\ t\lt X\rbrace=\frac{\Pr\lbrace t\lt X\le t+dt\rbrace}{\Pr\lbrace t\lt X\rbrace}=\frac{f(t)}{R(t)}dt$$ repairable elementのダウン$\rho(t)$率は、 $$\rho(t)=\lambda_V(t)=\lim_{dt\to 0}\frac{\Pr\lbrace \eta_{t+dt}\in\mathcal{P}\ |\ \eta_t\in\mathcal{M}\rbrace}{dt}$$ より形式的に、 $$\rho(t)dt=\Pr\lbrace \eta_{t+dt}\in\mathcal{P}\ |\ \eta_t\in\mathcal{M}\rbrace=\frac{\Pr\lbrace \eta_{t}\in\mathcal{M}\cap\eta_{t+dt}\in\mathcal{P}\rbrace}{\Pr\lbrace\eta_{t}\in\mathcal{M}\rbrace}=\frac{q(t)}{A(t)}dt$$ となります。


左矢前のブログ 次のブログ右矢

posted by sakurai on October 16, 2018

ISO/TR 12489:2013(E)において、信頼性用語の定義がまとめてあるため、それを記載します。ただし、弊社の考えを交えており、そのまま引用しているわけではありません。

☆信頼度(Reliability)

$R_{item}(t)\equiv\Pr\lbrace\mathrm{item\ not\ fail\ in\ }(0, t]\rbrace=\Pr\lbrace\mathrm{item\ up\ at\ }t\rbrace$
非修理系システムで、時刻$t$までに一度も故障していない確率。非修理系なので、一度でも故障すると、故障しっぱなしになるため、一度も故障していない確率になります。

☆不信頼度(Unreliability)

$F_{item}(t)\equiv\Pr\lbrace\mathrm{item\ failed\ in\ }(0, t]\rbrace=\Pr\lbrace\mathrm{item\ down\ at\ }t\rbrace$
非修理系システムで、時刻$t$までに故障した確率。非修理系なので、一度でも故障すると、故障しっぱなしになるため、時刻が0からtまでに故障したことがある確率になります。

☆故障密度(Probability Density)

$f_{item}(t)dt\equiv\Pr\lbrace\mathrm{item\ failed\ in\ }(t, t+dt]\rbrace=(\frac{dF_{item}(t)}{dt})dt$
非修理系システムで、時刻$t$から$t+dt$までに故障する確率。PDF。

☆故障率(Failure Rate)

$\lambda_{item}(t)dt\equiv\Pr\lbrace\mathrm{item\ failed\ in\ }(t, t+dt]\ |\ \mathrm{item\ up\ at\ }t\rbrace=\frac{f_{item}(t)}{R_{item}(t)}dt$
非修理系システムで、時刻$t$で稼働している条件において時刻$t$から$t+dt$までに故障する確率。ISO 26262の場合は定数として良い。

☆稼働度(Availability)

$A_{item}(t)\equiv\Pr\lbrace\mathrm{item\ up\ at\ }t\rbrace$
修理系システムで、時刻$t$で稼働している確率。Point Availablity。

☆不稼働度(Unavailability)

$Q_{item}(t)\equiv\Pr\lbrace\mathrm{item\ down\ at\ }t\rbrace$
修理系システムで、時刻$t$で不稼働な確率。

☆不稼働密度(Unavailability Density)

$q_{item}(t)dt\equiv\Pr\lbrace\mathrm{item\ down\ in\ }(t, t+dt]\rbrace=(\frac{dQ_{item}(t)}{dt})dt$
修理系システムで、時刻$t$から$t+dt$までに不稼働になる確率。Point Unavailability Density (PUD)。failure frequency (故障頻度), unconditional failure intensity (UFI; 無条件故障強度)。

☆ダウン率(Down Rate)

$\rho_{item}(t)dt\equiv\Pr\lbrace\mathrm{item\ down\ in\ }(t, t+dt]\ |\ \mathrm{item\ up\ at\ }t\rbrace=\frac{q_{item}(t)}{A_{item}(t)}dt$
修理系システムで、時刻$t$で稼働している条件において時刻$t$から$t+dt$までに不稼働になる確率。conditional failure intensity (条件付き故障強度), Vesely failure rate (Veselyの故障率)。

☆PFH(Probability of Failure per Hour)

注意:Probablity of Failure per Hourは古い定義で現在はaverage failure frequency (平均故障頻度), average unconditional failure intensity (平均無条件故障強度)。PMHFも同様の定義。average unavailability density (平均不稼働密度; AUD)
$PFH\equiv\overline{q_{item}}=\frac{1}{T}\int_0^T q_{item}(t)dt=\frac{1}{T}Q_{item}(T)=\frac{1}{T}\Pr\lbrace\mathrm{item\ down\ at\ }T\rbrace, ただしTは車両寿命$

☆平均ダウン率(Average Down Rate, ADR)

$ADR\equiv\overline{\rho_{item}}$の存在を仮定し、$\rho_{item}(t)A_{item}(t)=q_{item}(t)$の両辺を$0$から$T$まで積分すれば、 $\int_0^T\overline{\rho_{item}}A_{item}(t)dt=\int_0^T q_{item}(t)dt$。ここで、$\int_0^T A(t)dt\approx T$を用いれば、 $ADR=\overline{\rho_{item}}\approx\frac{1}{T}\int_0^T q_{item}(t)dt=\frac{1}{T}Q_{item}(T)=\frac{1}{T}\Pr\lbrace\mathrm{item\ down\ at\ }T\rbrace=PFH$


左矢前のブログ 次のブログ右矢

PMHF規格第3式の導出

posted by sakurai on October 7, 2018

安全機構故障によるVSGの場合のPMHF計算

DPFにはもう1パターンが存在します。それがMの故障が抑止されているが、SM故障が引き続いて起こる場合です。この状態がレイテントになるのかならないのかが曖昧です。具体的には次に示すようにPMHFではレイテントとなると考えられますが、一方でLFMではこの状態は計算に入っていません。

マルコフ状態遷移図でのPRV→DPF

PMHF規格第3式では、

図65.1
図65.1 Part10 8.3.3 PMHF規格 第3式

のように「故障の次数がはっきりしない場合」と訳していますが、orderを次数としたのは誤りで、これは順番と訳すべきです。なぜなら、PMHF規格第1式は主機能とSMのフォールトの順番を条件としているためです。また、irrelevantにはっきりしない場合という訳は無く、無関係な場合と訳すべきです。

それでは「故障の順番が無関係な場合」とはどういうことでしょうか?実は前項で求めたのが、最初の故障はどうあれ、主機能Mの故障によるVSG確率でした。従って、故障の順番が無関係とは、両方の条件の場合だと考えると、次に必要なのは安全機構SMのフォールトによるVSG確率です。とはいえSMの単一フォールトでVSGとはならないので、SMフォールトのDPF確率のみを考えます。

従って、SMによるVSG(DPF)の微小故障確率PUDは、 $$q_{SM,DPF}(t)dt=\img[-1.35em]{/images/withinseminar.png}\tag{65.1}$$ と求められ、ADRを計算すれば、 $$\overline{\rho_{SM,DPF}}\approx\frac{1}{2}K_{M,FMC,RF}\lambda_M\lambda_{SM}\left[(1-K_{SM,FMC,MPF})T_{lifetime}+K_{SM,FMC,MPF}\tau_{SM}\right]\tag{65.2}$$ となるため、(63.1)と加え合わせれば、順番によらない式(というか、MまたはSMによりVSGとなる確率式) $$M_{PMHF}\approx(1-K_{M,FMC,RF})\lambda_M\\ +K_{M,FMC,RF}\lambda_M\lambda_{SM}\left[(1-K_{SM,FMC,MPF})T_{lifetime}+K_{SM,FMC,MPF}\tau_{SM}\right]\\ =\lambda_{M,RF}+\lambda_{M,DPF}(\lambda_{SM,DPF,lat}T_{lifetime}+\lambda_{SM,DPF,det}\tau_{SM})\tag{65.3} $$ が求められます。

前稿と同様、車両寿命の項と比べて暴露時間による項が十分小さく無視できる場合、つまり$\lambda_{SM,DPF,lat}T_{lifetime}\gg\lambda_{SM,DPF,det}\tau_{SM}$の場合、(65.3)は $$M_{PMHF}\approx\lambda_{M,RF}+\lambda_{M,DPF}\lambda_{SM,DPF,lat}T_{lifetime}\tag{65.4} $$ となり、PMHF規格第3式の

図65.2
図65.2 Part10 8.3.3 PMHF規格 第3式

正確に一致します。

左矢前のブログ 次のブログ右矢

PMHF規格第2式の導出

posted by sakurai on October 3, 2018

次に、暴露時間による項が、車両寿命に関する項よりも十分小さく無視できるとした場合、つまり、$\lambda_{SM,DPF,lat}T_{lifetime}\gg\lambda_{SM,DPF,det}\tau_{SM}$の場合は、(63.1)は $$ M_{PMHF,M}\approx\lambda_{M,RF}+\frac{1}{2}\lambda_{M,DPF}\lambda_{SM,DPF,lat}T_{lifetime}\tag{64.1} $$ となり、PMHF規格第2式の

図64.1
図64.1 Part10 8.3.3 PMHF規格 第2式

正確に一致します。

左矢前のブログ 次のブログ右矢

posted by sakurai on September 30, 2018

主機能故障によるVSGの場合のPMHF計算

前稿で目的のPUDが求められたので、主機能故障に関するPMHFことADRを計算します。(61.5)(62.3)を適用し、(60.6)及び(60.8)を適用すれば、PMHFの式は、 $$ M_{PMHF,M}=\overline{\rho_{M}}\approx(1-K_{M,FMC,RF})\lambda_M\\ +\frac{1}{2}K_{M,FMC,RF}\lambda_M\lambda_{SM}[(1-K_{SM,FMC,MPF})T_{lifetime}+K_{SM,FMC,MPF}\tau_{SM}]\\ =\lambda_{M,RF}+\frac{1}{2}\lambda_{M,DPF}(\lambda_{SM,DPF,lat}T_{lifetime}+\lambda_{SM,DPF,det}\tau_{SM})\tag{63.1} $$ となり、これはPart10 8.3.3PMHF規格第1式の

図63.1
図63.1 Part10 8.3.3 PMHF規格 第1式

正確に一致します。ただし、条件に「安全機構に続いて指令ブロックの故障が引き起こされる可能性を考慮した」とあり、SMの故障の後に主機能故障と読めますが、以前PMHFの意味でも述べたように、原文の誤りと思われます。その理由は、SMが故障している場合は主機能故障抑止ができず、従って$\lambda_{RF}$とはならないからです。また、この場合、probabilityの訳語としては可能性よりも数学用語である確率のほうが適当です。

正しくは前項までに見たように、OPR→SPF(安全機構の故障が無い状態で主機能故障の場合)及びPRV→DPF(規格の条件どおり、安全機構に続く主機能の故障の場合)の2条件の和となります。つまり規格第1式は、安全機構の故障の有無を問わない、主機能故障によるVSG確率を意味しています。


左矢前のブログ 次のブログ右矢

posted by sakurai on September 23, 2018

主機能M及び安全機構SMのペアについて、マルコフ状態遷移図を書いていきます。 まず、Mはアンリペアラブルであることを前提とし、SMはリペアラブルであることを前提とします。 が、Mが故障を起こしてSMがそれをSG抑止している場合には、次のSMの故障は直ちにSG侵害となるため、一旦Mが故障となった時点でSMはアンリペアラブルとなります。

まず、時刻$t$において、$\lbrace \mathrm{OPR:\ M\ up\ at\ }t\cap \mathrm{SM\ up\ at\ }t\rbrace$, $\lbrace \mathrm{SPF:\ M\ down\ at\ }t\cap\mathrm{VSG\ of\ M\ not\ prevented}\cap\mathrm{SM\ up\ at\ }t\rbrace$, $\lbrace \mathrm{PRV:\ M\ down\ at\ }t\cap\mathrm{VSG\ of\ M\ prevented}\cap\mathrm{SM\ up\ at\ }t\rbrace$, $\lbrace \mathrm{LAT:\ M\ up\ at\ }t\cap\mathrm{SM\ down\ at\ }t\rbrace$, $\lbrace \mathrm{DPF:\ M\ down\ at\ }t\cap\mathrm{SM\ down\ at\ }t\rbrace$,の5状態があり、$t$から$t+dt$までの微小時間$dt$の間に遷移する微小確率PUDを求めます。

図のほうがわかりやすいので、以下にマルコフ状態遷移図を示します。

図62.1
図62.1 M/SMモデルのマルコフ状態遷移図

マルコフ状態遷移図でのOPR→SPF

図より微小確率PUDは、 $$q_{M,SPF}(t)dt=\img[-1.35em]{/images/withinseminar.png}\tag{62.1}$$

マルコフ状態遷移図でのLAT→DPF

図より微小確率PUDは、 $$q_{M,DPF}(t)dt=\img[-1.35em]{/images/withinseminar.png}\tag{62.2}$$

主機能故障によるVSG

以上から(62.1)と(62.2)を加えれば、MによりSPFもしくはDPFとなる場合のPUDが求められ、 $$ q_{M}(t)dt=q_{M,SPF}(t)dt+q_{M,DPF}(t)dt=\left[1-K_{M,FMC,RF}A_{SM}(t)\right]f_{M}(t)dt\\ =\img[-1.35em]{/images/withinseminar.png} \\ ただしu\equiv t\mod\tau_{SM}\tag{62.3}$$ となります。


左矢前のブログ 次のブログ右矢

posted by sakurai on September 18, 2018

平均ダウン率(ADR, Average Down Rate)の前に、PUD(Point Unavailablity Density)、ダウン率(Down Rate)の定義からご紹介します。とはいえ、これらは弊社の造語でありここだけで通用するものです。 PUDは、前々回ご紹介したポイントアンナベイラビリティの時間微分で、不稼働密度とでも訳すべきものであり、以下の式で定義されるものです。

PUD: $$q_{item}(t)dt\equiv(\frac{dQ_{item}(t)}{dt})dt=\img[-1.35em]{/images/withinseminar.png}\tag{61.1}$$ また、ポイントアベイラビリティの式

$$A_{item}(t)\equiv\Pr\lbrace \mathrm{(repairable)item\ up\ at\ }t\rbrace\tag{61.2}$$ 及び条件付き確率の式から、ダウン率が

Down Rate: $$\rho_{item}(t)dt\equiv\img[-1.35em]{/images/withinseminar.png}\tag{61.3}$$ と定義されます。修理が起きることから(修理系の)ダウン率は(非修理系の)故障率と異なり定数とはなりません。が、車両寿命間に変化する$\rho(t)$に対して定数である平均値$\overline{\rho_{item}}$が存在すれば、定義から

$$\int_0^{T_{lifetime}}\overline{\rho_{item}}\cdot A_{item}(t)dt=\int_0^{T_{lifetime}}q_{item}(t)dt=Q_{item}(T_{lifetime})\tag{61.4}$$

よって、$\int_0^{T_{lifetime}}A_{item}(t)dt\approx T_{lifetime}$であることを考慮すれば、ADRは、

ADR: $$\overline{\rho_{item}}\approx\img[-1.35em]{/images/withinseminar.png}\tag{61.5}$$

となります。PMHFは、修理系アイテムの車両寿命間のダウン確率の時間平均であることから、ここで示すアイテムのADRに他なりません。このことは規格Part5には以下のように書かれています。

図61.1
図61.1 Part5でのPMHFの意味

「アイテムの作動寿命間の毎時平均確率」とは良く読むと舌足らずです。何の確率かが書かれていません。その前に「ランダムハードウェア故障」とあるため文脈から故障確率であると読み取れますが、修理系の場合は厳密には故障確率ではなく、ダウン確率です。

従って、PMHFを求めるにはまずPUDに着目して確率微分方程式を立て、それを0から車両寿命$T_{lifetime}$まで積分し、$T_{lifetime}$で割ってADRを算出する流れで求めます。


左矢前のブログ 次のブログ右矢


ページ: