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PMHF式の導出別法 (2) |
4. 確率計算
排他事象の和が求められたので、式(987.6)は次のように確率式になおすことができます。 $$ \Pr\{\text{VSG}\}=\Pr\{\text{VSG.RF}\}+\Pr\{\text{VSG.DPF'}\}\\ =\Pr\{\overline{\text{IF}}\cap\overline{\text{DC}}\}+\Pr\{\overline{\text{IF}}\cap\overline{\text{SM}}\cap\text{DC}\}\tag{988.1} $$ ちなみに、2017年論文のPMHF式はこの排他事象が考慮されておらずダブルカウントしています。一方で2020年論文のPMHF式は正確です。
4.1 RFの確率計算
ここで、 $$ \Pr\{\overline{\text{IF}}\}=\int_0^{T_\text{lifetime}}f_\text{IF}(t)dt=F_\text{IF}(T_\text{lifetime})=1-e^{-\lambda_\text{IF}T_\text{lifetime}}\approx\lambda_{\text{IF}}T_{\text{lifetime}}\tag{988.2} $$ であることから、(988.1)式第1項のVSG.RFの確率は、
$$ \Pr\{\text{VSG.RF}\}=\Pr\{\overline{\text{IF}}\cap\overline{\text{DC}}\} \approx(1-\text{DC})\lambda_\text{IF}T_\text{lifetime}\tag{988.3} $$ ただし、$f(t)$はPDF (Probability Density Function)、$F(t)$はCDF (Cumulative Distribution Function)です。
4.2 DPFの確率計算
同様に(987.1)のVSG.DPF確率を計算します。 $$ \Pr\{\text{VSG.DPF’}\}\equiv\Pr\{\overline{\text{IF}}\cap\overline{\text{SM}}\cap\text{DC}\}\tag{988.4} $$
ここで問題はIFとSMの故障が同時には起きないので、IFが先に故障するか、SMが先に故障するかのいずれかとなります。これは論理式では表せないので、新たに時制論理$\ \vec{\cap}\ $を導入します。例えば、IFが故障し、かつその後SMが故障する事象は以下のように表せます。$T_\text{IF}$及び$T_\text{SM}$はむ故障運転時間を表す確率変数です。 $$ \{\overline{\text{IF}}\ \vec{\cap}\ \overline{\text{SM}}\}\equiv\{\overline{\text{IF}}\cap\overline{\text{SM}}\cap(T_\text{IF}\lt T_\text{SM})\}\tag{988.5} $$
これを用いれば、式(988.4)は、(988.6)のようにIFが先に故障する場合とSMが先に故障する場合の排他事象を合わせた確率なので、それぞれの確率の和として表せます。両方が同時に故障する確率は、数学的には「ほぼ確実に(a.s.)0」です。 $$ (988.4)=\Pr\{(\overline{\text{IF}}\ \vec{\cap}\ \overline{\text{SM}}\cap\text{DC})\sqcup(\overline{\text{SM}}\ \vec{\cap}\ \overline{\text{IF}}\cap\text{DC})\}\\ =\Pr\{\overline{\text{IF}}\ \vec{\cap}\ \overline{\text{SM}}\cap\text{DC}\}+\Pr\{\overline{\text{SM}}\ \vec{\cap}\ \overline{\text{IF}}\cap\text{DC}\}\tag{988.6} $$ ただし、$\sqcup$は互いに素な和を示す。
(988.6)式第1項のIFが先に故障する場合と、第2項のSMが先に故障する場合の2パターンを順番に計算していきます。