Posts Issued in July, 2016

PMHF式の導出(2)

posted by sakurai on July 28, 2016

故障検出周期

検出時点での故障率を、以下のように安全機構により検出できる部分とできない部分に分解します。またそれぞれの場合の条件を以下に示します。

  1. 安全機構が周期$\tau_{SM}$で故障検出された際に検出できない故障率の部分は、なんど検出しても検出されないため、車両寿命の間中レイテントとなる。
  2. 安全機構が周期$\tau$で故障検出した際に検出できる故障率の部分は、$t=0$~$\tau_{SM}$まではレイテントとなる。その後$t=\tau_{SM}$においてゼロ時間で修理される。

次に車両寿命におけるそれぞれの頻度を考えると、

  1. $t=0$〜$T_{lifetime}$までの一回
  2. $\frac{T_{lifetime}}{\tau_{SM}}$回

従って、(15.1)は正確には、上記の2つの事象確率と頻度の積を加えあわせ、 \[ M_{PMHF,DPF,A\rightarrow B}=\frac{1}{T_{lifetime}}F_{DPF,A\rightarrow B}(T_{lifetime}) =\frac{1}{T_{lifetime}}[F_{DPF,l,A\rightarrow B}(T_{lifetime})+\frac{T_{lifetime}}{\tau_{SM}}F_{DPF,d,A\rightarrow B}(\tau_{SM})] \]\[ \approx\frac{1}{2}\lambda_B(\lambda_{A,DPF,l}T_{lifetime}+\lambda_{A,DPF,d}\tau_{SM})\tag{16.1} \]

となります。

(16.1)は、「レイテント状態のエレメントAの不信頼度」に「Bの故障率」をかけたものです。前者をグラフ化したものが図16.1です。$DC=0$、つまり定期的な故障検出によりエレメントの故障が検出されない場合は、(14.1)のとおりです。一方、エレメントの故障が検出される部分がある場合には、検出時点で修理されるため、その分の不信頼度はゼロとなり、故障が検出されない部分のみが累積していきます。

図16.1
図16.1 エレメントの不信頼度のグラフ

青のグラフがDC=0の場合、オレンジがDC=20%の場合、グレーがDC=40%の場合、黄色がDC=60%の場合、濃青がDC=80%の場合、緑がDC=100%の場合をそれぞれ表します。


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PMHF式の導出(1)

posted by sakurai on July 17, 2016

DPFの場合のPMHFの導出

エレメントAが先に故障し、引き続いてエレメントBが故障する場合のDPFのPMHFは「エレメントAが故障してレイテント状態になっている場合にエレメントBが故障する、車両寿命間のDPF確率の時間平均」であり、DPF(2)で求めたように、(14.6)を用いて \[ M_{PMHF,A\rightarrow B}=\frac{1}{T_{lifetime}}PoF_{A\rightarrow B,T_{lifetime}}=\frac{1}{T_{lifetime}}F_{A\rightarrow B}(T_{lifetime})\approx\frac{1}{2}\lambda_{A,DPF,l}\lambda_B T_{lifetime}\tag{15.1} \]

と求められます。

故障がレイテントとなる場合

ところが(15.1)はまだ場合分けが不足しています。先にエレメントAに起きた故障がレイテントになる場合は、一般的には時刻$t=\tau$において、安全機構の検出漏れとなる場合ですが、さらに安全機構の検出が間に合わない場合、言い換えれば検出までにエレメントAに故障が起きる場合も加える必要があります。なぜなら、安全機構は検出周期$\tau$で検出しますが、$\tau$までにエレメントAに発生した故障は$\tau$までは検出されないため、その間はレイテントとなる可能性が若干でも存在するからです。

この点について次稿で掘り下げて行きたいと思います。


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DPF(2)

posted by sakurai on July 9, 2016

DPFの定義

ISO26262でいうDPFは、前述のように、まずエレメントAの故障がおき、かつレイテント状態(故障分類(1)で解説)になっていて、それに関連するエレメントBの故障が引き続いて起きた場合が対象となります。ここで関連するとは、エレメントAが主機能の場合はエレメントBは安全機構、エレメントAが安全機構の場合はエレメントBは主機能という意味です。主機能とそれとは別の主機能の故障はDPFとは考えず、一点故障が2回起きたと考えます。

さて、DPFの確率計算を行う場合、単純に主機能故障の起きる確率$PoF_{M,T_{lifetime}}=\Pr\{X_M\lt T_{lifetime}\}$と安全機構の故障の起きる確率$PoF_{SM,T_{lifetime}}=\Pr\{X_{SM}\lt T_{lifetime}\}$の乗算とはなりません。一般に安全機構が故障するとレイテントになる可能性が大であり、主機能は冗長構成を取らない限り、故障してレイテントになることはありません。従って、主機能故障がレイテントになる確率と安全機構がレイテントになる確率は異なるため、主機能と安全機構のどちらが先に故障したかで場合を分けて計算を行います。

A⇒BのDPFの確率計算

エレメントAが故障してレイテント状態になっている場合にエレメントBが故障する確率の導出を行います。まず、時刻$t$において、エレメントAが故障してレイテントとなっている場合の確率は、時刻$t$におけるエレメントAの不信頼度に他ならないため、(14.1)となります。 \[ \Pr\{\text{A is a latent state at }t\}=\Pr\{X_A\leq t\}=F_A(t)\tag{14.1} \]

次に、時刻$t$までエレメントBは故障しておらず、時刻$t+\Delta t$までの微小区間$(t, t+\Delta t]$にBが故障する微小確率$\Pr\{\text{B receives a fault in}(t, t+\Delta t]\}$は、(14.2)となります。 \[ \Pr\{\text{B receives a fault in}(t, t+\Delta t]\}=\Pr\{t\lt X_B\leq t+\Delta t\}=F_B(t+\Delta t)-F_B(t)\\ =f_B(t)\Delta t=\lambda_B R_B(t)\Delta t\tag{14.2} \]

従って、$(t, t+\Delta t]$の微小DPF確率は両者の積となるため、(14.3)となります。

式49(14.3)

$\Delta t\rightarrow 0$とした極限を$dt$で表し、0から$t$まで積分すると、時刻$t$までのDPF確率が(14.4)として求められます。

式77(14.4)

ここでexponential関数のマクローリン展開は(14.5)です。 \[ e^x=1+x+\frac{x^2}{2}+\cdots\tag{14.5} \]

(14.5)の2次の項までとり(14.3)に代入すれば、(14.6)のようにA⇒BのDPFの確率の近似式が求められます。

A⇒BのDPFの確率の式:

式79(14.6)

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