Posts Tagged with "ISO26262"

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故障分類(2)

posted by sakurai on June 9, 2016

SPF/RF

SPF(Single Point Failure; 一点故障)、RF(Residual Failure; 残余故障) はほぼ同義で、単一の故障により安全目標侵害する可能性のある故障です。前項の故障分類チャートに拠ればSPFは安全機構が存在しない故障であり、また、RFは安全機構が存在するが診断カバレージ(DC)から漏れる部分の故障です。これをPart10 8.1.8「フォールトの分類及びフォールトクラス寄与度計算のフローチャート」でのDCの定義$K_{FMC,RF}$を用いれば、 \[ \lambda_{RF}=(1-K_{FMC,RF})\lambda_{M,PVSG}\tag{12.1} \]

となります。後で説明するように、SPF/RFを単純化記法でSPFまたはRFと記述することがあるのでご注意ください。(12.1)の場合はRFと表記していますが、SPF/RFの意味です。

さて、SPFに対するPMHFは(10.2)、(10.3)、及び(12.1)を用いれば、 \[ M_{PMHF,SPF}=\frac{1}{T_{lifetime}}PoF_{SPF, T_{lifetime}}\\ \]\[ =\frac{1}{T_{lifetime}}F_{SPF}(T_{lifetime})\approx\lambda_{RF}=(1-K_{FMC,RF})\lambda_{M,PVSG},~\mbox{s.t.}~\lambda_{RF}T_{lifetime}\ll 1\tag{12.2} \]

と求められます。

ここで、一般的に用語SPFの使用法には狭義(SPFとRFを分ける)と広義(RFを含む)の2種が有り、(12.2)左辺では広義の単一故障の意味で用いています(図12/1上段)。一方、SPF/RFという記法もあり、このほうが紛れがありませんが長くなるためあまり用いられません(図12.1中段)。また(12.2)右辺のように、単一故障をRFと表記する場合もあり、これは単一故障のほとんどがRFであるためです(図12.1下段)。式を読む場合には、字面にとらわれることなく、紛らわしい用語の使用法については意味を考えて読む必要があります。

式a91
図12.1 SPF及びRFの使い分け

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故障分類(1)

posted by sakurai on May 31, 2016

故障分類フローチャート

前回説明したPMHFは「アイテムの車両寿命間の平均的な故障率」でしたが、この故障の中身を見ていきます。ISO26262では3重故障以上の故障については安全側故障としています。これはその確率が非常に小さいので省略可能なためです。SPFとDPFの事象は排他であるため、PMHFは(10.2)を用いてSPFのPMHFとDPFのPMHFの和となります(11.1)。ここでSPF(Single Point Failure; 1点故障)とDPF(Dual Point Failure; 2点故障)の定義を故障分類フローチャートに従って理解することが重要です。 \[ M_{PMHF}=M_{PMHF,SPF}+M_{PMHF,DPF}=\frac{1}{T_{lifetime}}\lbrack \overline{PA_{SPF}}(T_{lifetime})+\overline{PA_{DPF}}(T_{lifetime})\rbrack\tag{11.1} \]

故障分類フローチャートはISO26262Part5にも掲載されていますが、より詳細なものがPart10に掲載されています。ただ、訳が適切でなかったり、概念的に混同しやすいため、弊社ではこれをリプリントした教材を作成して販売しています(図11.1)。

図11.1
図11.1 故障分類フローチャート

その特長は、

  • 訳をわかりやすく修正
  • 確率的フローチャートであること
  • あくまで1つめの故障分類であること
  • 主機能と安全機構の切り分けの明示

等です。故障分類フローチャートで分類された故障率のうち、特にレイテント故障率は以降で大変重要になってくるため、ぜひ理解しておいていただきたいと思います。

SMの種類

ここで、2つのSMの種類に便宜上名前をつけます。規格では特にSM(Safety Mechanism)としか書かれていませんが、SMには明確にその特性の違いがあり、これはPart5またはPart10の故障分類フローチャートで定義されています。

  • 1st SM ------- 主機能が安全目標を侵害するのを防止する安全機構(Part1 1.111備考2 a))
  • 2nd SM ------ 主機能又は安全機構の故障を検出し、レイテント状態を防止する安全機構(Part1 1.111備考2 b))

規格で明確な名前の区別が無いため、現場では「レイテント状態を防止するSM」等の長い説明を毎回しなければならないためとても不便を感じています。規格で名前を定義してあればよかったのですが。

レイテント状態

規格には特に定義は掛かれていませんが、FSマイクロ株式会社では後の理解がしやすくなるため、レイテント(故障)状態を定義しています。

レイテント状態とは、エレメントA(主機能または安全機構)において、関連する1st SMにより安全目標の侵害が阻止されている状態でかつ2nd SMにより故障検出がされない状態を表します。上記故障分類チャートによれば、レイテント状態になるには以下の2つのルートが存在します。

  • 主機能が1st SMにより安全目標侵害から阻止されている場合
  • 安全機構が故障した場合

いずれのルートもオレンジの判定ボックスに到達し、そこで2nd SMにより故障検出の判定が行われます。故障のうち検出される部分はレイテント状態が解消されます。一方検出されない部分はレイテント状態のままとなります。


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PMHFの意味

posted by sakurai on May 25, 2016

PMHFの定義式

式(10.1)はISO26262 Part10に掲載されているPMHFの式です。

\[ M_{PMHF} = \lambda_{RF} + \frac 1 2 \lambda_{M,MPF}(\lambda_{SM,MPF,l}T_{lifetime}+ \lambda_{SM,MPF,d}\tau) \tag{10.1} \]

これは安全機構が故障して次に主機能が故障する場合の式で、ISO26262 Part10に結論だけ記述がありますが、説明がほとんどありません。そのためこのブログで式の導出について説明していきたいと思います。

ところで、FSマイクロ株式会社では、(10.1)が安全機構が故障して次に主機能が故障する場合というのは誤りではないかと考えます。2項目以降はそのとおりですが、$\lambda_{RF}$は主機能が故障して安全機構が安全目標侵害を防止した残余の故障率なので、安全機構は動作していなければならないはずです。そのため、$\lambda_{RF}$は主機能の故障の際には安全機構は動作している場合に現れると考えます。

さて、PMHFとは、ランダムハードウェア故障のメトリック(数値目標)で、正確に表現すれば「アイテムの車両寿命における故障確率(=アイテムの車両寿命における不稼働率$PoF(T_{lifetime})$の時間平均)」となります。以下はISO26262規格には書かれていませんが、PMHFの定義式です。

PMHFの定義式: \[ M_{PMHF} \stackrel{def}{=} \frac{1}{T_{lifetime}}PoF_{item, T_{lifetime}} =\frac{1}{T_{lifetime}} \Pr\{\text{item is down at } T_{lifetime}\} =\frac{1}{T_{lifetime}} \overline{PA_{item}}(T_{lifetime}) \tag{10.2} \]

ここで、$\overline{PA_{item}}(t)$は時刻$t$におけるitemの時点不稼働率です。 $\overline{PA_{item}}(t)$は1から時点稼働率$PA_{item}(t)$を引いたものであり、以下の式で定義されるように、ある時刻$t$における不稼働確率(アイテムが稼働していない確率)です。

\[ \overline{PA_{item}}(t) = \Pr\{\text{item is down at } t\} \tag{10.3} \]

一方で、$PA_{item}(t)$は、修理が起きる場合のitemにおいて、$t$までに一度も故障が起きない確率と、$t$までに故障が起き修理された後$t$までに故障が起きない確率に分けられるので、

\[ PA_{item}(t) = \Pr\{\text{item is up in }(0, t]\} + \displaystyle \sum_{i=1}^{n} \Pr\{\text{item is repaired at }\tau_i \cap \text{item is up in }(\tau_i, t]\} \tag{10.4} \]

PMHFの意味

ここで、故障率はかなり低いため、(10.4)のうち修理される部分を無視しPMHFの定義式(10.2)に適用しすれば、

\[ M_{PMHF} \approx \frac{1}{T_{lifetime}} \Pr\{\text{item is failed in }(0, T_{lifetime}]\} =\frac{1}{T_{lifetime}} \Pr\{X_{item}\lt T_{lifetime}\} =\frac{1}{T_{lifetime}} F_{item}(T_{lifetime}) \tag{10.5} \]

式10.5の式に対して、不信頼度$F(t)$の近似式である(7.2)を用いて \[ F_{item}(t) \approx \lambda_{item}t, ~~\mbox{s.t.}~~ \lambda_{item}t \ll 1 \tag{10.6} \]

を適用すれば、次の(10.7)が得られます。 \[ M_{PMHF} \approx \lambda_{item},~~\mbox{s.t.}~~ \lambda_{item}T_{lifetime} \ll 1 \tag{10.7} \]

これにより、PMHFは$\lambda_{item}T_{lifetime} \ll 1$の場合に「アイテムの車両寿命間の平均的な故障率」とみなすことができます。


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アイテムの故障率(2)

posted by sakurai on May 16, 2016

並列アイテム

図2
図9.1 並列アイテムのRBD

並列アイテムとは、上図のように、RBDを書いたときにアイテムを構成するエレメントが並列になっている場合のアイテムです。この場合(1 out of n)は冗長性を持っており、全てのエレメントが故障しなければ、アイテムは故障しません。

このように、信頼度から考えると冗長が良いに決まっているのですが、2冗長でもコストが倍増することになります。従って、いかに冗長のコストを抑えるかが、良い設計の鍵となります。

この場合並列アイテムの信頼度は各エレメントの信頼度の和、と単純にはなりません。その理由は、各事象の確率の和が和事象の確率になるのは、各事象が排他の場合のみであることです。一般に各事象は独立であっても排他ではありません。

例えばエレメント1とエレメント2が99%の信頼度だとすれば、信頼度を加え合わせると0.99+0.99=1.98の確率というわけのわからない数字となります。言うまでもなく、確率は0から1の間の値の値を取るはずです。これはエレメント1とエレメント2が共に動作している確率のダブルカウントが原因なので、先の確率の和である1.98から同時に動作している確率0.99*0.99を引くと並列アイテムの信頼性が求められ、1.98-0.99*0.99=0.9999、99.99%となります。

これを一般化し、並列アイテムの信頼度は包除原理から、 \[ R_{item}(t)=\coprod_{i=1}^n R_i(t)=\sum_{i=1}^n R_i(t)-\sum_{i\lt j}^n R_i(t)\cdot R_j(t)+\cdots+(-1)^{n-1}\prod_{i=1}^n R_i(t)\tag{9.1} \]

のように複雑な式となるため、アイテムの不信頼度を考えたほうが楽です。すると、並列アイテムの不信頼度は全てのエレメントの不信頼度の積となるため、

並列アイテムの不信頼度の式: \[ F_{item}(t)=F_1(t)\cdot F_2(t)\cdot\cdots\cdot F_n(t)=\prod_{i=1}^n F_i(t)\tag{9.2} \]

であり、これはFTAの計算時に使用するため重要な式となります。

以降では教科書的に信頼性を求めることにし、(9.2)を信頼度で表わせば、 \[ F_{item}(t)=1-R_{item}(t)=\prod_{i=1}^n[1-R_i(t)]\tag{9.3} \]

従って並列アイテムの信頼度は各エレメントの故障率で表すことができ、 \[ R_{item}(t)=1-\prod_{i=1}^n[1-R_i(t)]=1-\prod_{i=1}^n(1-e^{-\lambda t})\tag{9.4} \]

となります。


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アイテムの故障率(1)

posted by sakurai on May 9, 2016

直列アイテム

図1
図8.1 直列アイテムのRBD

直列アイテムとは、上図のように、RBD(信頼性ブロック図)を書いたときにアイテムを構成するエレメントが直列になっている場合のアイテムです。この場合は冗長性を持たないため、どのひとつのエレメントが故障しても、それによりアイテムが故障すると考えます。この場合のアイテムの信頼度は各エレメントの信頼度の積となります。 \[ R_{item}(t)=R_1(t)\cdot R_2(t)\cdot\cdots\cdot R_n(t)=\prod_{i=1}^n R_i(t)\tag{8.1} \]

ここで、信頼度を故障率で表す(4.2)を用いれば、(8.2)となります。 \[ R_{item}(t)=e^{-\lambda_{item}t}=e^{-\lambda_1 t}\cdot e^{-\lambda_2 t}\cdot\cdots\cdot e^{-\lambda_n t} =e^{\sum_{i=1}^n-\lambda_i t}\tag{8.2} \]

従って、アイテムの故障率は(8.3)のように各エレメントの故障率の和で求められます。 \[ \therefore\lambda_{item}=\sum_{i=1}^n \lambda_i\tag{8.3} \]

教科書には何故か信頼度の式しか出てこないようですが、後でFTAの計算を行うときに不信頼度が重要となるため、ここで掲載しておきます。(8.1)に(2.5)を代入して、以下の(8.4)が得られます。

直列アイテムの不信頼度の式: \[ F_{item}(t)=1-\prod_{i=1}^n[1-F_i(t)]\tag{8.4} \]


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故障率(7)

posted by sakurai on April 27, 2016

不信頼度$F(t)$の近似式の誤差

故障率(5)において、故障率が定数$\lambda$である場合、信頼度$R(t)$と不信頼度$F(t)$は簡単化され、それぞれ以下の式により表されることを示しました。 \[ R(t)=e^{-\lambda t} \tag{5.2} \] \[ F(t)=1-R(t)=1-e^{-\lambda t} \tag{5.3} \]

ここで、指数関数をマクローリン展開を用いて近似式を導出してみます。不信頼度$F(t)$のマクローリン展開は \[ F(t)=1-e^{-\lambda t}=\lambda t-\frac{\lambda^2 t^2}{2}+\cdots \tag{7.1} \]

ですが、ここで、$\lambda t\ll1$という条件では2次以下の項が省略可能なほど小さいため、式(7.1)は、 \[ F(t)=1-e^{-\lambda t}\approx\lambda t,~\mbox{s.t.}~\lambda t\ll1 \tag{7.2} \]

となります。実際に故障率の違いによって、不信頼度$F(t)$が正確な値と近似式でどのくらいの誤差になるかを見てみましょう。以降は車両寿命$T_{lifetime}$は一定で100,000時間(=$10^5$時間)とします。

まず、ASIL-Dの目標値である故障率$\lambda$(PMHF)=10FITとします。10FITは$10^{-8}$[1/H]です。$\lambda T_{lifetime}$は$10^{-8}*10^{5}=10^{-3}$であり、車両寿命付近の誤差は0.050%とかなり良く一致しています(図7.1)。

図10
図7.1

次に、ASIL-B/Cの目標値である故障率$\lambda$(PMHF)=100FITとします。100FITは$10^{-7}$[1/H]です。$\lambda T_{lifetime}$は$10^{-7}*10^{5}=10^{-2}$であり、車両寿命付近の誤差は0.498%と良く一致しています(図7.2)。

図11
図7.2

次に、故障率$\lambda$(PMHF)=1,000FITとします。1,000FITは$10^{-6}$[1/H]です。$\lambda T_{lifetime}$は$10^{-6}*10^{5}=0.1$であり、このあたりでは$\lambda T_{lifetime}\ll 1$とは言えなくなってくるため、誤差がだいぶ目立ってくるようになります。車両寿命付近の誤差は4.838%と無視できなくなっています(図7.3)。

図7
図7.3

次に、故障率$\lambda$(PMHF)=10,000FITとします。10,000FITは$10^{-5}$[1/H]です。$\lambda T_{lifetime}$は$10^{-5}* 10^{5}=1$であり、$\lambda T_{lifetime}\approx 1$であるため、$t$が小さい時点以外は近似式は使用できません(図7.4)。

図8
図7.4

最後に、故障率$\lambda$(PMHF)=100,000FITとします。100,000FITは$10^{-4}$[1/H]となり、よほど$t$が小さい時点以外は近似式は使用できません(図7.5)。

図9
図7.5

それでは故障率がどれくらいの時に誤差が5%に収まるでしょうか?前述のように1,000FITの場合は車両寿命まで誤差が5%未満だったので、上の10,000FIT及び100,000FITの場合を調べたのが図7.6です。横軸は誤差を表し、縦軸は時間$t$を表します。

図12
図7.6

これでみると大体$\lambda t$が0.1未満のときに、車両寿命における近似値の誤差が5%未満となると思っておけばよさそうです。この誤差のことを本稿では「Exponentialの一次近似誤差」と呼ぶことにします。

エレメント単体の故障率については大方説明してきました。次回からはシステム(アイテム)の故障率の計算方法についてとなります。


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故障率(6)

posted by sakurai on April 13, 2016

和文は英文の後に続きます。

(English text comes here.)


平均故障率と瞬間故障率

故障率(1)において、Excel表によって良品数$v(t)$のグラフを作成する方法をご紹介しました。(1.2)は、現在の良品数に一定の率(=故障率)をかけたものが故障数で、それを現在の良品数から引いた数により、次の時間の良品数を表す、という意味でした。 \[ v(t+1)-v(t)=-\hat{\lambda}(t)\cdot v(t) \tag{1.2} \] 故障率(2)で示した以下の(2.4)により、信頼度$R(t)$も同様な形となります。 \[ R(t+1)-R(t)=-\hat{\lambda}(t)\cdot R(t) \tag{2.4} \]

一方、故障率(5)において、故障率を一定とした場合に信頼度$R(t)$の式は、(5.2)となることを示しました。 \[ R(t)=e^{-\lambda t} \tag{5.2} \]

ここで、(2.4)によるグラフと、(5.2)のグラフが同じになるかを調べようと思います。前者が平均故障率$\hat{\lambda}$で後者が瞬間故障率$\lambda$のグラフです。

グラフ3
図6.1 平均故障率($\hat{\lambda}=10\%$)と瞬間故障率($\lambda=10\%$)のグラフ

図6.1において、青が平均故障率$\hat{\lambda}=10\%$による信頼度、赤が瞬間故障率$\lambda=10\%$による信頼度です。2つのグラフはこのように、時間が進むにつれ次第に食い違いを見せます。同じ10%の故障率なのに、前者は一時間後に0.9になりますが、後者は0.90484となり、差が開いていきます。

この理由は文字どおり、前者が平均故障率で後者が瞬間故障率だからの違いによるものですが、逆に、一致するのはどういう値のときでしょうか?

図6.2は、両グラフが一致するときの信頼度のグラフで、平均故障率$\hat{\lambda}=10\%$に対して瞬間故障率は$\lambda=10.536\%$となっています。

グラフ4
図6.2 平均故障率($\hat{\lambda}=10\%$)と瞬間故障率($\lambda=10.536\%$)のグラフ

実は、現在値に比例して減少するのは収入とそれに対する支出も同じなのではないでしょうか。もちろん、収入が減っても食費のように減らせないものもあるかもしれませんが、それでも高い外食をしなくなったり、収入に応じた生活をするようになると思います。

一時間の平均故障率のグラフ(青)と、瞬間故障率のグラフ(赤)を定性的に比較すると、赤のグラフのほうは、月々の貯金残高で、次の月の支出を抑える生活なのに比べて、青のグラフのほうは、一年に一度しか貯金残高を確認せずに、年初の貯金で年末まで使ってしまう生活を表しているとも見えます。当然、見直す頻度が高いほうが浪費が少ないわけで、それが青と赤のグラフの差に反映されているのではないでしょうか。

グラフ5
図6.3 平均故障率と瞬間故障率の拡大図

お金の話が出てきましたが、実は、故障率の符号を反転すると、時間が経つほど現在価値に比例してお金が増えていく、つまりは複利の概念と同一だということがわかります。複利だと預けておけば勝手にお金が増えますが、故障率はマイナス符号が付いているので、時間が経つと減っていきます。幸いなのは減ってくると減る絶対値も減少してくることです。


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故障率(5)

posted by sakurai on April 5, 2016

和文は英文の後に続きます。

(English text comes here.)


故障率は定数

故障率は一般には定数として扱うことが多いです。その理由は以下のグラフのように、初期故障は製造試験により取り除かれ、一方摩耗故障については運用時間を限ることで、故障率が一定とみなせるためです。

図5.1
図1.1 バスタブカーブ

このグラフは浴槽の断面のような形をしていることからバスタブカーブと呼ばれます。

このように故障率$\lambda(t)$を一定値として扱うことが可能である場合、故障率$\lambda(t)$に関する積分は(5.1)のように簡単化されます。

\[ -\int_0^t\lambda dx=-\lambda\int_0^t dx=-\lambda t \tag{5.1} \]

これを用いて、信頼度$R(t)$を表す(2.11)と不信頼度$F(t)$を表す(2.12)はそれぞれ、(5.2)及び(5.3)のように表せます。 \[ R(t)=e^{-\lambda t} \tag{5.2} \] \[ F(t)=1-R(t)=1-e^{-\lambda t} \tag{5.3} \]

さらに故障密度関数(PDF)である$f(t)$の定義式(4.1)は、(4.4)を用いて(5.4)のように表せます。

\[ f(t)=R(t)\lambda(t)=\lambda e^{-\lambda t} \tag{5.4} \]

故障率が定数である分布は指数分布と呼ばれます。信頼性工学では他にもワイブル分布などがありますが、ISO26262では上記バスタブカーブの底の部分に限って議論すれば十分であるため、指数分布のみを対象とします。


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故障率(4)

posted by sakurai on March 31, 2016

和文は英文の後に続きます。

(English text comes here.)


CDFとPDFの関係

故障確率関数(Cumulative Distribution Function, CDF)$F(t)$が$t$で微分可能であるとき、故障密度関数(Probability Density Function, PDF)である$f(t)$は$F(t)$の導関数として(4.1)で定義されます。

故障密度関数の定義式: \[ f(t)\stackrel{def}{=}\frac{dF(t)}{dt} \tag{4.1} \]

従って、故障確率関数$F(t)$は故障密度関数$f(t)$を0からtまで積分して(4.2)のように表されます。 \[ \int_0^t f(x)dx=\Pr\{0\lt X_{item}\leq t\}=F(t)-F(0)=F(t) \tag{4.2} \]

故障率$\lambda(t)$と故障密度関数$f(t)$の関係を求めます。(2.5)の両辺を$t$で微分すれば、(4.3)となります。 \[ \frac{dF(t)}{dt}=-\frac{dR(t)}{dt} \tag{4.3} \]

(2.8)に対して、(4.3)及び(4.1)を代入すれば、故障率$\lambda(t)$と故障密度関数$f(t)$の関係が(4.4)のように求められます。 \[ \lambda(t)=\frac{f(t)}{R(t)} \tag{4.4} \]


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故障率(3)

posted by sakurai on March 22, 2016

和文は英文の後に続きます。

(English text comes here.)


故障率と確率

本来、信頼度や不信頼度は確率なので、今回は確率の式を用いて信頼度や不信頼度を導出します。 $X_{item}$をitemの無故障運転時間を表す確率変数とするとき、信頼度$R(t)$は時刻$t$において、アイテムがまだ故障していない確率なので、(3.1)で定義されます。

\[ R(t)\stackrel{def}{=}\Pr\{t\lt X_{item}\} \tag{3.1} \]

一方不信頼度$F(t)$は時刻$t$において、アイテムが既に故障している確率なので、(3.2)で定義されます。

\[ F(t)\stackrel{def}{=}\Pr\{X_{item}\leq t\} \tag{3.2} \]

区間$(t, t+\Delta t]$における平均故障率$\hat{\lambda}(t)$は、時刻$t$において故障していない条件下での区間$(t, t+\Delta t]$における故障確率を単位時間あたりに直したものですから、(3.3)と表されます。

\[ \hat{\lambda}(t)=\frac{1}{\Delta t} \cdot \Pr\{X_{item} \leq t+\Delta t~|~ t\lt X_{item}\} \tag{3.3} \]

ここで、ベイズの条件付き確率の公式は(3.4)です。

\[ \Pr\{A~|B\}=\frac{\Pr\{A \cap B\}}{\Pr\{B\}}, \quad \Pr\{B\}\gt 0 \tag{3.4} \]

また確率の和の公式(3.5)を次のように(3.6)と変形します。

\[ \Pr\{A \cup B\} = \Pr\{A\} + \Pr\{B\} - \Pr\{A \cap B\} \tag{3.5} \] \[ \Leftrightarrow \Pr\{A \cap B\} = \Pr\{A\} + \Pr\{B\} - \Pr\{A \cup B\} \tag{3.6} \]

(3.3)に(3.4)と(3.6)を適用すれば、平均故障率の(3.3)は(3.7)となります。

\[ \hat{\lambda}(t)=\frac{1}{\Delta t}\cdot \frac{\Pr\{t\lt X_{item}\cap X_{item}\leq t+\Delta t\}}{\Pr\{t\lt X_{item}\}} \]\[ =\frac{1}{\Delta t}\cdot \frac{\Pr\{t\lt X_{item}\}+\Pr\{X_{item}\leq t+\Delta t\}-\Pr\{t\lt X_{item}\cup X_{item}\leq t+\Delta t\}}{\Pr\{t\lt X_{item}\}} \]\[ =\frac{1}{\Delta t}\cdot \frac{R(t)+F(t+\Delta t)-1}{R(t)}=\frac{1}{\Delta t}\cdot \frac{R(t)-R(t+\Delta t)}{R(t)}\tag{3.7} \]

この平均故障率(3.7)に対して$\Delta t\rightarrow 0$の極限をとれば、平均故障率は瞬間故障率となり、(3.8)が得られます。 \[ -\lambda(t)=\frac{1}{R(t)} \frac{dR(t)}{dt}=\frac{d}{dt}\ln R(t) \tag{3.8} \]

以上から故障率(1)の(2.8)と同じ、故障率と信頼度の微分方程式(3.8)が求められました。従って故障率(1)の(2.9)から(2.12)と同様の論理展開により、信頼度$R(t)$と不信頼度$F(t)$が求められます。


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